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2010/6/6 14:56 《現在地》
峠の切り通しの直下に、軌道跡と思われる路盤とセットで、ほとんど埋没しかかった坑口が発見された!
おそらく隧道を探すという目的で訪れていなければ、この現場を見てもただの小規模な崩落地としか思わなかっただろうから、近付いて確かめる事もまずしなかったろう。
実際に近付いてみて初めて、僅かながらも開口部の存在する事が確認され、既に埋没が確定している西口に対し、この東口の輝ける実績となったのであった。それだけに、
「いざ、入洞!!」
……と、いきたいのは山々だが、ちょっと見て欲しいんだぜ…。
↓↓↓
おえっ…
さすがにこれは、気持ち悪すぎる……。
隧道という人造の構造物には、申し訳ないが全く見えない。普通に獣の巣穴のようだ。
この時点で完全にミリンダ細田氏はケツを捲っちまってる。彼は、土の穴が大嫌いなのだ。
もちろん、私や他のメンバーだって土の穴が好きな連中なんていないとは思うが。
土の穴=生き埋め
そういうイメージが強いからだが、多分イメージだけじゃないんだよなぁ…。リアルに崩れそう…。
とりあえず、このままでは開口部が狭すぎて立ち入れないので、
生ける人間戦車の元●衛官“ちぃ”さんの出動だ!!
ここにはいない某女流オブローダーが「馬車馬」扱いしているともいわれる
ちぃ氏のメンバー切っての膂力は、かつて某栗●隧道を1日だけ再貫通させた力であり、
この程度の土砂の山を退かすくらいは朝飯前なのである!
彼に隧道の開口作業は任せ、私はちょっと離れたところから、重大な検証を行いたい。
私がこの隧道の「東口」を発見した瞬間から、強く感じていた違和感がある。
それは、既に発見した西口の位置に対して、この東口の位置、特に高度がおかしいのではないか?…という内容だ。
これまでの探索の流れを振り返りつつ整理してみよう。
先に見た、我々が西口跡と考えている窪地は、明らかに軌道跡の終点に存在していた。ゆえにあそこが西口跡であることは、ほぼ疑いないと言える。
だが、完全に閉塞していたので洞内に入る事は出来ず、やむなく我々は隧道の手前で分岐したもう1本のルートを辿り、軌道跡らしからぬ急坂の先にあったのが、峠の切り通しである。
そして峠を越えてすぐさまに今回の「東口」が、峠の直下に見つかった。
文章だけでは分かりづらいと思うので、地図上にも再現してみよう。
西口と東口の位置関係は、概ね右の地図の通りであると思われる。
そして、この二つの坑口が1本の隧道で結ばれているとすると、隧道内部に相当の急勾配を想定せざるを得ないということが起こる。
具体的には、推定される隧道の長さは200m程度だが、西口が標高420mで東口が440m付近にあるようだから高低差は20m。これを200mで克服すると、単純に10%の勾配となるわけだ。
自動車用のトンネルでも10%勾配というのは滅多に存在せず、ましてや100‰(パーミル=千分率)の軌道用隧道などというものがあるとは、俄に信じがたいのである。
私の測定には色々と誤差が有るだろうとしても、両坑口間に圧倒的な高低差が存在することだけは、実際に歩いて上を乗り越えた者として、絶対に勘違いでは無い自信があった。
いったい、これはどういう事なのだろう?
まさか、二つの坑口が別々の隧道のものだとか?!
そ、そんな…
そんな夢のような話しがあろうはず、ない!
……謎は深まるばかりだが、このあと隧道内部の探索が出来れば、大きな手掛かりが得られるはず。
入口からもの凄い勢いで下って行くようならば、既に見た西口に通じていたと考えて良いだろう。
もちろん、貫通していたりなんかしたら、大変なことになるわけだ(笑)。
なんてことで頭をグルグルさせているうちに、
ちぃさんの作業が、完了した模様!!
↓↓
う、
うん、ありがとう…。
た、確かにちょっと広くなった…。
入洞準備は整った(?!)が、本坑口の第一発見者(入洞義務者)であるミリンダ氏が頑なに入洞を拒否するので、
やむを得ず、探索発案者である私が先頭になって、この獣穴のような穴に入ることになった。
…では、いきま〜すよ。
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開口部の天井と崩土の隙間は、人が四つん這いの姿勢でぎりぎり通過出来るくらいの高さしかない。
私は足を下に滑り台を滑る時の姿勢で斜面に深く腰を下ろし、そのまま身体を揺らしながら、
体重を利用して、ズルズルと砂地の滑り下って行った。はっきり言って、生きた心地がしない。
この過程では基本的におろし金のような天井が目の前にあるだけで、息苦しいことこの上ないが、
上手く身を捩って進行方向を撮影したのが、上の写真である。
奥が洞床方向であるが、まだ底が見えないという状況が半端なく気持ち悪い。
しかも帰りは、このアリジゴクみたいな斜面をよじ登らねばならないのである…。
もう結構入り込んでいるが、まだ底に着かない。
入口から心配そうに覗き込んでくる仲間の姿が、嬉しかった。
万が一生き埋めになったら、すぐ助けてくれよな!!
ど、ど、洞床が見えてきた!! 正直、とてもホッとしている。
このまま土の斜面を滑りながら、いつまでも底に付かずないような底知れぬ恐怖があった。
なお、この時点で地底の冷気はビンビン感じられるが、風が吹いているように思われなかった。
代わりに籠もった土臭が濃厚だ…。やはり、隧道内は閉塞の可能性が濃厚なのか……。
15:04
「こちら、洞床に到着しましたんで、奥へ向かうス。」
心細さに外を振り返ると、自分が滑り降りてきた狭すぎる隙間が見せつけられて、
むしろ余計に息が詰まる気分がする。もうよくは見えないが、声は届く高間たちに声をかけ、
遂に洞奥方向へ身体を向ける。
さあ、今こそ洞内を暴くのだ!!
この動画は、入洞して最初に洞床に立った地点から5mほど前進した位置で撮影したものである。
皆さまはこれを見て、どう感じたであろうか。
私としては、色々と言いたいことがある。…ありすぎる!!
というか、この洞内には一つとして「予想通り」と言えるようなことはなかった。
何もかもが、入洞前に立てていた当初の予想と食い違っていた。
以下に、入洞前の予想と違っていた点を列挙する。
なんだこの隧道…、
いや、そもそもこれは本当に隧道なのか?
何かとんでもなく想定外のものを掘り当ててしまっているということは、無いだろうか。
坑口(東口)から20mほど進むと、入洞直後から見えていた“砂の山”が近付いてきた。見たところ天井に窪みがあるので、自然崩落が起きた現場なのだろう。
洞内を進んだ距離と進行方向を地上の地形に重ね合わせて推測すると、大体このあたりが峠の切り通しの直下だと思われる。
つまり、隧道はもう半分来ていてもおかしくないのだが、前方に出口が現れる様子は、今のところない。
また、土被りはかなり浅いはずで、天井を15mも真上に掘り進めば地表に貫通すると思われる。
この断面の小ささからして、せいぜい人道用の隧道だと思うのだが、これしか峠の高さを節減出来ないのは、もはや何のためにあるのか意味不明である。
――存在自体が意味不明の隧道。
私にそんなことを言わせた存在は、いつ以来だろうか。久しく忘れていたかも知れない、この感覚を。
そして、遂に現れる。
本隧道最大の特異点。
穴?!
洞床の砂山上にある天井の窪みの奥に、さらに別の坑道が伸びている?!
しかも、上下の坑道が同じ方向へ並走しているように見える。
ちくしょう! “天井の穴”には、足場が無くては届かない!!
だが、この上下の2本の小坑道が並行するという特異過ぎる状況に、
隧道の素性に繋がるであろう、ある重大な気付きを私は得ていた!
もしも私の推測が正しければ、隧道の正体は――!!
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