小湊鉄道線旧線 上総久保〜高滝 前編

公開日 2011.2.27
探索日 2008.3.15
所在地 千葉県市原市


【周辺図(マピオン)】

小湊鉄道が営業する小湊鉄道線は、千葉県市原市の五井駅から夷隅郡大多喜町の上総中野駅までを結ぶ、全長39.1km全線単線非電化の鉄道だ。
関東近郊の代表的なローカル線として有名な存在だが、上総久保駅と高滝駅の間に短い旧線が存在することは、あまり知られていない。

この線路変更については、なぜか『鉄道廃線跡を歩く8』巻末の「全国線路変更区間一覧」にも記載が無く、そのために線路変更の時期や事由など不明点も多いのだが、北から南に向かって現地の旧線跡を紹介していこう。

この探索は、情報提供者である「湯島のとも」氏および「R28」氏が同行案内してくださいました。ありがとうございました。





資料にない旧線を探索する



2008/3/15 15:07 《現在地》

市原市久保にある上総久保駅を南に出た線路は、小高い丘の裾を左カーブで回り込み、田んぼの中の長い直線に入る。
そして直線の先は細長い丘があり、これを右カーブの浅い堀割で抜けてゆく。
現在地である「久保4号踏切」(五井起点22K918M地点)は、この堀割の上総久保側にある。

R28氏曰く、旧線との分岐地点はこの踏切のすぐ先で、旧線は赤線のように進んでいたというのだが…。

…そこには、どう見ても山があるぞ?





あ、 あの…

いいんですか……?




隧道ある
みたいなんですけど…。


正直、こういうの期待してなかったんですケド、
隧道あるんですケド、いいんですか?

あの小湊鉄道に廃隧道とか…
これ、結構なお宝 じゃないんですか?!


行っちゃいますよ、廃隧道!




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線路端を歩いて近付いていく。

旧線は隧道のところだけ形を留めているようで、手前は埋め立てのうえで田んぼになっていた。
だから、ポツンと隧道だけあるように見える。

また、旧線が現在線よりも少しだけ低いことが分かる。
旧線がほぼ水平で、現在線がやや登り坂になっている感じである。

ちなみに、上総久保駅における一日の列車の運行本数は、上り下り10本ずつの計20本。
日中はだいたい90分に1本列車が来る感じで、上り下りあわせても45分に1本という、なかなかの閑散ぶりだ。
え? 秋田じゃ普通だって?  存じてますとも、もちろん!(笑)




15:08 《現在地》

特に障害物もないので、あっという間に坑口前に到着した。

この左の薄暗いところに、隧道は口を開けているのである。


…薄暗いね。

……窪地だからね…。


大丈夫だよね?


………。





す…水没っすか…。

そうっすか…。


つらいです…。


と、とりあえず気を取り直して、触れるほど近くはないが、容易に目の届く坑門を観察。

………観察………。

………

普通。

コンクリートの、これと言った装飾もない、至って普通の、坑門。
扁額もなければ、工事銘板のようなものも見あたらないな。




しかしまあ、この水没はやむを得ない感じがする。

だって、こんな立地だもん。

隧道に続く堀割が締め切られてしまい、さらにその締め切ったところが田んぼになっているというのでは、そりゃ水も入り込むし、排水も悪かろうよ。
少なくとも、この上総久保側の坑口には全く排水能力がない。
かといって、どこかの廃隧道のように、溜め池に使っているというわけでもないようだ。





改めて隧道内を覗き込んでみるが、冬場だというのに竹が青々と視界を遮っていて、なかなか見通せない。
それでも微妙に角度を変えながらやっていると、反対側の光が通じていることを確認出来た。

洞内を満たす水だが、坑口付近であっても深さ1mできかなそう。
泥がだいぶ溜まっていそうなので、もしかしたら溺れるかもしれない。
ボートの用意もないし、出来れば入りたくない。

なので、今回は大人しく反対側の坑口へ回り込んでみることにした。
向こうも水没しているかも知れないが…。

とりあえず、行ってみよう!







15:16 《現在地》

旧線が隧道だった隣に、現在線の堀割がある。
堀割の高滝側の入口にやってきた。

堀割を越える跨線道路橋があるが、この道はそのまま隧道の上も通り過ぎているようだ。
肝心の隧道は、ここから少しだけ右に歩いたところにあると思うのだが…。

ん?




どこだろう?

山際の藪が思いのほか深く、坑門が見えない。
(写真中央やや右寄りに何かアーチ形の影が見える気がするかも知れないが、実はそれはただの撓った竹で、坑門じゃなかった…笑)

それに、隧道に続く路盤はこちらでも埋め戻されたようで、やはり見あたらなかった。

この旧線には、隧道以外は何も残っていないのだろうか。
もしそうならば、相当に早く廃止されたのか?




しかしまあ、気楽である。

この藪のどこかに、隧道は間違いなく開口しているはずなのだから。
探すべき範囲も、決して広いとは言えないし。
すぐに出会えるだろう。



ほら。

もう何か出て来たみたいだ。





針山のような笹藪の向こうに

黒いものが、はっきりと!


やはり排水されている形跡はなく、
隧道に辿り着けたとしても、水没していて入れない予感がしたが…。

でも…

少なくとも今度は、坑門を触れそうだ!



ガサガサガサ



!!




ずいぶん ボロッボロだな…。


本当にこれがさっきと同じ隧道かと思ったが、それは間違いないようだ…。

一応は、コンクリートだしな……。