ただ塞ぐだけでは不親切だと考えたのか、わざわざ交差点にこんな標識が取り付けられている。
←1.7km先通行止
通り抜けできません
なぜ“通り抜けできないのはまだ先”であるにもかかわらず封鎖してあるのか分からないが(←屁理屈)、とりあえず県道不通区間がここから始まるのだ。
バリケードはロープなどでガードレールに固定され、先の栃木県内における県道28号の不通区間よりも強固に塞がれている。
一度は車道として開通したはずの道だ。何をそこまでして塞ぎたいのか、堅牢にバリアされればされるほど余計に気になるものだ。
右の写真は、交差点から日輪寺を遠望したもの。亭々と杉の巨木が茂る中に、僧坊と思しき青い屋根が見えていた。
あそこへ通じる車道としては、今辿ってきた道より他にない。
故に、ここまでの道は県道248の唯一、“意味のある”開通区間となっている。
県道は、バリケードの10mほど先で180度進路を反転させ、それから、直前に走った本線と逆方向に少し併走してから、一気に“腐沢”という近づきたくない名前の谷へと降りてゆく。
道は分岐地点で塞がれてはいるのだが、この写真の左に写っているのはバリケード手前の本線であるからして…、少し車高のある車ならば容…モガモガ
封鎖区間に入ったが、今のところ何ら道に異常なところはない。
ガードレールも標識も、舗装も白線もいたって普通の、近代的な山岳道路のそれである。
ただひとつ変わっているところといえば、全く車通りが無いと言うことだけだ。
右手に腐沢の谷筋を見下ろしながら、どんどんと下って行く。
平均して5%は下らない急勾配が、二つ三つと小刻みなカーブを加えながら、ひとときも途切れずに続いている。
…それ以外に、特にコメントは思い浮かばない。
つまらないわけではなく、例によってダウンヒルの快感がね…笑。
えー。
下っていきます。
はい。
桜の木の生命力に感動を覚えた。
ガードレールの外に並木よろしく植えられた桜の根元に、ゴムタイヤがぎっちりはまっている。
誰かの悪戯としか考えられないが、相当に年月を経ているのだろう。(とても現在の舗装路と同じ年齢とは思えない)
いまではその直径以上に幹が生長しており、タイヤの方がはち切れんばかりに変形している。
しかし、これからどうなるのかは不明…。
いくら桜の木が生長しようとしても、タイヤを引きちぎるほどの力があるかどうか。
ゴムが劣化して千切れるとの、桜の寿命のどちらが先か。 といった感じだ。
あなどれねーな!
八溝山!
これは、かの塩那道路をも彷彿とさせる、アグレッシブな立体的線形!
地形図で確認すると、確かにこの辺りから先の2.5kmほどは歪な形の九十九折りが連続していて、咬んでいる等高線の数は実に30本!
3km足らずで300mを下るということは、黙っていても平均勾配10%以上と言うことで、そこが「モ〜レツ」な坂であることは明らか。
そして、今目前に現れた光景が、それを証明していた。
登りで使った県道28号とは、大きく印象の異なる下りの道。
それもそのはず、八溝山の南面には腐沢他数本の谷が、山体奥深くまで穿入しており、それぞれ活発な浸食を見せている。
その山容の条件は、那須平野に面してなだらかであった西側とは全く異なっているのだ。
急傾斜に楔を打ち込むような連続小カーブと、それらを紡ぎ合わせる狂濤のような九十九折り。
それが、県道248号中盤の姿である。
そして、まだそれは始まったばかり。
お。
遂に崩壊が現れた。
だが、これ自体が通行止めの原因ではなく、長期間の落石が溜まったもののようだ。
特段、法面やその上の斜面に崩壊は見られない。
とりあえず、放置されたがゆえの廃道化の第一歩と言える現象だろう。
うげー。
この辺りは本当に強烈な勾配で、今回は下りだったから「万が一引き返しになったら嫌すぎるな」と思ったぐらいで済んだものの、逆だったら魂が軽く抜けていたかも知れない。
それこそ、鼻血くらいでは済まなかっただろう。
…と、私がそんな感想を持ったこの坂を、冬場にバイクで登った“猛者”がいた。
しかも、知り合いに……。
『そうだ、遠くに逝こう』の作者、あずさ2号氏である…。
彼の、凍結したこのヘアピンとの壮絶なる格闘は、オブローダーとして心に刻むべき語り種であろう!
おお!
ハンドルレバーを握るのに忙しくて、すっかり「1.7km先」の事を忘れていたが、そういえばまだ厳密なる「通行不能区間」には入っていなかったのだった。
←200m先通行止
通り抜けできません
それはおそらく、次のカーブ先あたりか…。
この、急坂溢れる窯の底で、
私をどんな不通劇が
待ち受けているのだろうか!!