2007/4/22 12:40 【周辺図(マピオン)】
洞穴で足を冷やした後は、先ほどから気になっていた木橋である。
橋の路面は水気を含んで湿気っており、
やや腐り始めている木がたいへん滑りやすくなっている。
道幅もトラックがぎりぎり通れる幅しかなく、欄干も無い。
さらに、中央部分が微妙に上流側へ傾き始めている。
今すぐに崩れ落ちそうには見えないが、こうして実際に渡ってみると、
突然底が抜けるのではないかという不安はぬぐえない。
対岸に近い辺りは最も腐朽が進んでおり、路面の板が崩れ始めている。
船乗りのことばで昔から、「板子一枚下は地獄」というのがあるが、この橋などもその類である。
作りがもの凄く簡易なので、自分が今踏んでいる“板子一枚”の下は、そのまま丸太の骨組みであり、運が悪ければ引っ掛かることなくストレートで墜落出来る。
その事が“隙間”を通して分かるだけに、怖かった。
自動車も通る橋だっただけあって丸太も板材も太さ厚さはそれなりにあるのだが、いずれも防腐措置などない自然材であるせいか、腐朽具合は予想以上であった。
橋を渡った先には広場があり、さらに造林地を縦横とするブル道へと続いていたが、そこまでは行かなかった。
橋を一往復して県道に戻った私は、川べりの藪を掻き分け橋の構造を観察できるスポットをゲット。
余命幾ばくもないかも知れない“平成の木橋”を惜しんだ。
しかし、これは悲しむようなことではないのである。
かつて林業が今より華やかなりし時代には、全国各地の山林に当たり前に建造されていた木橋。
丸太を使って荒々しく組み上げたこのような「方杖橋」は、集落などに見られる生活のための木橋とはまた違う。
この種の橋は一時的に架けられるもので、林鉄と木橋の組み合わせといえば王道である。
永久橋とは違い、役目を終えれば容易く自然に還ってしまう木橋は、森にも優しい構造物だ。
だが、製材された角材ではなく伐り出したままの丸太で構造物を作るためには、鎹(かすがい)などの特殊な道具と、巧みなバランス感覚(技術)を要する。
往時を十分に彷彿とさせるこんな立派な木橋を架ける技術が、平成の今もひっそりと息づいている。
それを知れたことが、この橋の最大の“発見”であった。