道路レポート 北千葉道路の未成ランプウェイ 前編

所在地 千葉県船橋市
探索日 2015.01.05
公開日 2019.02.08


国内で“壮大な道路風景”が見たいというのならば、とりあえず「 北千葉道路 」に行けば間違いない。

この道、全国的にはさほどの知名度を持っていないが、その道路風景は本当に壮大なところがある。

例えば次の写真のシーン――



これは、USAのハイウェイ(見たことないけど)ではない。

ニッポン(印西市内)の北千葉道路だ。

幅200m近い敷地に8車線の道路が並走し、上下線中央に複々線以上の線路用地がサンドイッチされている。

このような道路風景が、約10kmにわたって続いている。



これも印西市内にある、多々羅田インターチェンジ(IC)。

外周1.5km、約12万平方メートルもの広大な敷地に悠々と広がる、国内では珍しい(変則)対向ループ型ジャンクションだ。

背景のビルと地平線以外の見えるものが、全て道路用地という贅沢がここにある。





北千葉道路の壮大さ、感じていただけただろうか。

この道路は、その名の通り、千葉県の北部を東西に横断する。
計画全長約45km。市川市と成田市を結び、外環道(東京外環自動車道)と東関東道(東関東自動車道)を連絡する、完成8車線の準高速道路的な道路として計画されている。中間地点には国内有数の規模を誇る千葉ニュータウンがあり、そのメインストリートになっている。上に掲載した2枚の写真は、いずれもニュータウン内の風景である。
また、一般国道464号の一部であり、地域高規格道路の候補路線でもある。

昭和42(1967)年に大部分の都市計画が決定されてから既に半世紀を経ているが、現在も未完成で、千葉県や国による事業が継続している。車線数の少ない暫定的な供用も含めれば、全長の7割ほど(右図の実線部)に何らかの現道が出来上がっているが、事業全体から見ればまだまだ道半ばという、壮大な未完成道路である。


首都圏の放射道路に位置づけられている北千葉道路と、環状道路である国道16号が交差する重要地が船橋市小室町で、そこに小室IC(仮称)がある。
今回のレポートで紹介するのは、そこにある未成ランプウェイとみられる構造物だ。

探索のきっかけは、平成25(2013)年5月によしだ氏からいただいた、次のような情報提供メールによる。

いつも楽しく読んでます。
千葉県船橋市小室の国道16号と464号のインターチェンジに、全く使われていないスロープがあります。
Google Map でも線が書かれておりますが、使用中のスロープ隣りに作られており建設した意味がわかりません。
調査していただけたら嬉しいです。
尚千葉ニュータウンは作りかけの道路が多く、住宅公団の迷走具合が垣間見れる跡が結構存在してます。
情報提供者 よしだ氏のメールより

ふむふむ。なるほど……。
どうやら未成のランプウェイがあるようですな。
未成ランプウェイといえば、私のアパートの近くにもあって、以前紹介している。(→八王子バイパスの未供用ランプの謎
この手のネタは大好物だ。


右図は、スーパーマップルデジタルに見る小室IC周辺の拡大図だ。
青丸で囲った辺りに、インターチェンジらしいランプウェイを張り巡らせた構造が見える。
先ほど写真を紹介した多々羅田ICと違って、ここには地図に載るような特定のIC名はないようだが、本編では「小室IC」と称することとしよう。

ここから少しの間、やや説明がややこしくなるので、ゆっくり図を確認しながら読み進めて欲しい。

まずここでは、中央分離帯によって区切られた片側2車線計4車線の国道16号「東京環状」(この路線は環状線なので、「上り・下り」ではなく「内回り・外回り」で表現する)と、広大な鉄道用地によって区切られた片側2車線計4車線の国道464号「北千葉道路」とが、交差している。

小室ICは、いわゆるフルアクセスのICではなく、ハーフICでもない、変則的なICになっている。
ランプウェイの配置を追っかけてみれば分かるとおり…
国道16号の内回りと外回りからは、それぞれ北千葉道路の下り線にのみランプウェイから流入可で、上り線へは約300m南にある小室交差点を介してアクセスする。
国道464号の上り線からはICを利用できず、小室交差点を介して国道16号にアクセスする。
国道464号の下り線からは、国道16号の外回りにのみランプウェイから流入可で、内回りへは複雑な動線を余儀なくされる(いくつか考えられるルートがあるが複雑だ)。(なお、これは欠陥ではなく、1.5kmほど手前の白井地区に便利なアクセスルートがあって、標識でも利用が案内されている)
以上のように、想定しうる8通りの動線のうち、ランプウェイを使えるのは3通りだけで、あとは小室交差点を介した平面的なアクセスを余儀なくされる。


さて、肝心の未成(といわれている)ランプウェイだが、この地図上には描かれていない。
どこにあるのかは、本編で紹介する。
それは、現状でいろいろと足りていないランプウェイを補完するものなのか、はたまた全くの別件なのか。
情報提供メールには【気になること】「建設した意味がわかりません」が書かれていたが…… 

いざ、探索開始!




空っ風のインターチェンジ


2015/1/5 12:38 《現在地》

この日の私は朝から千葉ニュータウンへ潜入した。
北千葉道路に沿って東西に細長く17kmほど続くニュータウンだが、東京から遠い東側から徐々に侵攻を進めた私は、正午を過ぎたあたりで7割ほどを終えて、小室地区に入った。

この日の天気は関東の正月らしい雲一つない快晴であったが、風は強かった。北総台地を吹き抜ける空っ風と、真っ正面から取っ組み合いをするような自転車探索になっていた。

写真は、国道16号が国道464号北千葉道路を跨ぐ小室橋だ。北行きの内回り線に隣接する歩道上で、進行方向である北を向いて撮影している。
この橋を渡り切ったところが、未成ランプウェイがあると教えられた小室IC(面倒なので以下「仮称」を省く)であるが、とりあえず、怪しいものはまだ見えない。




小室橋から撮影した北千葉道路の風景。奥が東京方向だ。

相変わらずもの凄い幅だ。まるで川のよう。
現在はこの広大な用地に、北千葉道路の上下線(各2車線)と、北総鉄道北総線の複線が敷かれているが、なおも大量の土地を持て余していて、ススキの野原と化している。
緑と共生するニュータウンみたいな雰囲気が素敵だが、これも情報提供者が「千葉ニュータウンにたくさんある」と書かれていた「作りかけ」の一つである。

まず、現在は複線が敷かれている中央の鉄道用地だが、元々は複々線の計画だった。本編から脱線するので深くは触れないが、かつてニュータウンの需要を当て込んで、千葉県営鉄道北千葉線という鉄道も北総線の隣に複線で計画されていた。チェンジ後の画像で赤く塗ったところが、その用地である。

しかし、鉄道用地がいまの倍になったとしても、北千葉道路上下線と線路の間には広い空き地が残る(黄色い部分)。
それがなんのためにあるのかは、今日これまでの探索の経験から容易に推察できた。
レポートの冒頭で紹介した1枚目の写真と、この景色を見較べて欲しい。ここに足りないものがあると分かるだろう。

北千葉道路に想定されている最終的な完成形は、2+2+2+2の合計8車線なのだと思う。
上下線が2本ずつあるが、外側の2車線は沿道へのアクセスが制限されない車線(道路行政用語で「一般部」と呼ばれる道)で、内側の2車線はICだけで出入り出来る車線(いわゆる「専用部」)だ。
いわば高速道路と一般道路を同じ敷地に並べて置いたような構造で、道路の効用としては極めて効率的にはなるだろうが、土地が潤沢でなければ許されないような贅沢な使い方をしている。

さすがは北千葉道路だ! と思ったね。



結局、内回りの歩道から、未成ランプウェイは見えなかった。

今度は国道16号を横断して反対側へ行きたいが、正月だというのに相変わらず交通量が多く、中央分離帯もあるため、自転車で横断できる場所は限られている。
しかもICの周辺ではありがちなことだが、歩道が立体的かつ複雑に入り組んでいて、土地鑑のない私は少しばかり迷った。

数分後、ようやく国道を横断できる地下道を見つけ出した。
写真奥に見えるのがそれで、右の九十九折りスロープでアクセスする。相手が天下の「東京環状」とはいえ、交通弱者の弱者たるを思い知った。
まあ、「お母さんの笑顔は世界一」らしいので、その微笑みに免じて許そう。




12:44 《現在地》

複雑な動線で外回りの歩道に到達、小室ICの中ほどへやってきた。

安心して欲しい。

まだ見えていないよ。 お目当てのモノは。

内回りもそうだったが、こちら側にもランプウェイを跨ぐ立派な歩道(地図上で黒く着色した)が用意されていた。
提供された情報によると、間もなくお目当てのものを見ることができるだろう。先ほど反対車線から見えなかったのは、この歩道橋が邪魔をしたせいだと思う。

次の写真は、歩道橋のてっぺん、写真に付した「矢印」の位置から撮影した。




これは、もしや……!

歩道橋の下を潜るランプウェイ、地図上では1本しか描かれていないのだが、実際は猫又の尾になっていた。

そのうちの1本はガードレールで塞がれたうえ、分岐から20mほどの位置、

ちょうど歩道橋の下で、枯れた草地に消えていたのである。

これだけでは未成道とも廃道とも判断が付かないが、見るからに怪しい。


次の写真は、同じ位置から反対側を撮影――



12:46

ありやがった!!

でかいぞ、これは…!


↓ ズームで覗いてみた ↓



途切れた高架橋がSFチックで格好いい。

いくらでも見ていたくなる。

しかし、未成道という情報だったが、明らかに最近作られたものではない風合いが感じられる。
また、未成道にはあまりなさそうな照明灯が設置されている。(通常こういう付帯設備は開通の直前に設置する)

手前側はIC内の空き地に接しているが、橋との間に小さい段差があり、鉄パイプで簡単に封鎖もされている。
一方の奥側は、とても植樹された街路樹や公園には見えないような鬱蒼とした“森”の中に消えているようだ。
その“森”は、将来的に北千葉道路の専用部(下り線)になると私が考えている場所である。また右奥に見えるのは、北総線の小室駅だ。

この高架橋、未成道なのか、使用を中止された廃道(や休止道)なのか、まだ判断ができないが、
位置的には、北千葉道路専用部へのオンランプになるべき未成道(準備施設)のように見えた。



↑位置はここだ。

北千葉道路の下り線を越える跨道橋である。


次回、いろいろな角度から高架橋を眺める。そしてその後は……! ヌフフ