2008/7/2 10:24
県道26号の起点は、入山隧道内部の洞内分岐地点と、そこから約200m離れた奈川渡ダム交差点の、合計2箇所あることになる。
だが、そう厳密に考えなくても、起点から約200mほどで両者は合流する。前回紹介した、新入山隧道の坑口前の交差点で。
左の写真は、そこからさらに100mほど南へ進んだ地点だ。
早速、県道26号として1本目の隧道が見えている。
右に広がる広大な水面は、これでほぼ満水位の梓湖だ。
この湖面は、かつての梓川の右支流奈川を5km以上も呑み込んで、旧奈川村中心地である奈川地区付近まで続いている。
ちなみに、奈川渡ダムの建設された地点の左岸は旧安曇村、右岸は旧奈川村で(入山隧道などは全部旧奈川村)、両村ともに平成17年に松本市に合併した。
奈川渡という地名も、そこが奈川の渡河地点であったことによるのだろう。水没前のそこは険しいV字峡同士の結節点で、発電所などがあった他は、特に集落ではなかったらしい。
うむ?
…こんなんだったか?
こんなに奇麗だったか…??
ガビーーン!!!
こいつら、生まれ変わってやがるのか!
国道の方は全然進歩無かったというのに…。
いや待て!
頭上の標識…。
え、画像がでかいって?(笑)
いや、気に入ったもんだからさ、この標識が。
ともかく…
次のブナの木トンネルで
何かが 起 こ る !!
これが、新生なった宮ノ下隧道。
名前だけは変わっていないが、昔見た姿とは全くの別物である。
拡幅改良なのか、新トンネルなのか…。
見たところ、辺りに旧隧道の坑口などは見えないが…。(ちなみに右の道は入山真集への道だ)
松本側から来た場合、あの狭苦しい新入山隧道を出てすぐにこのトンネルに出会うわけで、凸凹もいいところ。
それに…
こういう坑門のレリーフって、どうしても好きになれないんだよな…。
坑門の意匠は絵画的なものではなく、あくまで実像であって欲しいなどというのは、ただの懐古主義なんだろうけど。
それに、イマドキコンクリート製の坑門に壁柱やアーチ環なんかを取り付けても、余りに無駄な虚飾に見えるだろうし、時代錯誤ととられても仕方ないだろうからなー。
こういう地域色をアピールするレリーフが好まれるのも、またやむを得ない気もする。
こういう入れ墨隧道が廃隧道化すると、きっと不気味だろうなぁ。(←不謹慎)
ちなみにモチーフは、『あゝ野麦峠』っぽい。
昔はあったはずの「隧道のナンバープレート」も無くなっていた。
その代わり最近のトンネルらしく、諸元を記した銘板が取り付けられていた。
2000年(平成12年)8月竣工、全長920m、巾6.5m(全幅9m)などである。
…920mというと、ここまで出会った中では最長である。
デザインについてグチグチ言うなら別に入って貰わなくても良いんですのよ。オホホ…。
そんな声を出しそうな女人のレリーフにお辞儀しながら、新しいわりには妙に薄暗い洞内へ。
なんか、この暗さは昔と変わってないような。
というか、イマドキこの中央一列配置の照明は無いだろって感じもする。
この辺は、直前の新入山隧道や、国道との格差に配慮したのだろうか(笑)。
それとも、この隧道ばかりが明るいというのは安全上問題ありと判断されたのだろうか?
ちなみに、長い洞内は全体的に右に弓形のカーブをしている。
このカーブについては、“今風”に緩やかだ。
出口が近づいてくると、150mおきくらいに2〜3回、「150m先」「道路せまし」と明滅する電光掲示板が現れた。
この警戒の度合いを見る限り、かなりイレギュラーな場面が期待できそうだ。
うわっ!
次のトンネルは、めっちゃ近い!!
でも、言われるほど狭い気はしないな…。
宮ノ下トンネルと次の「ブナの木トンネル」までの明かり区間は、僅か30mほどに過ぎない。
坑門を見れば明らかな通り、ブナの木トンネルも改良という魔手に侵されているようだ。
…ちぇ。
でも、嬉しいニュースもあるんだぜ。
右を見ると、そこには明らかに旧道の入口が、右後方へ続いている。
いま潜った宮ノ下トンネルには、旧隧道がありそうだ!!!
すぐにも飛び込みたい衝動に駆られはしたが、どうせあと3本のトンネルを確認したら戻ってくる予定なので、メインディッシュは後回しにしよう。
ゲッツ!
予告通りの風景!
何と中途半端な状態なのか。
坑口からわずか20mほどで、隧道の断面は急激に収縮。
これまででも最狭のサイズになってしまうのだった。
坑門ばっかり立派でも、これでは全く詐欺だぜ。
ドライバー的には、目が慣れる前にいきなり狭まるという恐怖の場面だ。
この銘板を見て欲しい。
拡幅延長24.0mというのが泣ける!
それに対して、全体延長は647.3mとかなり長い。
まさに現状は、ほんの入口だけを申し訳程度に拡幅したに過ぎないのだ。
いずれは全体をこのサイズに改める心づもりはありそうだが…。
宮ノ下隧道を新トンネルに取り替えるついでに、近接するブナの木隧道の坑門だけでも拡幅したのだろうか。
なぜかは分からないが。
どうもこの接合部分の形を見る限り、もともとの坑門はこの場所であったように思えなくもない。
新たに施工された24mは、単純に坑門の延伸部分なのではないだろうか。
それにしても、この先は悲惨な狭さだ。
銘板によれば、巾5.0m。
入山隧道をはじめとするこれまでの隧道も狭いと思ったが、あれでも一応5.5mあった。
同じダムの付け替えトンネルでも、国道用と県道用とでは規格に格差を設けていたのだ。
たかが50cmの違いとはいえ、基本的に路肩走行を拠り所とする我々チャリにとっては極めて重大な、まさに命に関わる問題なのである。
国道よりは少ないとはいえ、総じて交通量は少なくない。
後続車輌の見えないタイミングを計って、いざ「ブナの木トンネル」へ進入。
トンネル断面変化部を、洞内から振り返って撮影。
断面がほぼ2倍になっているのが分かる。
暗くて、狭くて、濡れていて…
やっぱこれだよ。これぞ隧道。
幅員50cmの違いは、路肩ゼロという形で我々にはね返ってきた。
こうなると、車に追い越されるときにはもうドライバーに命を全て委ねることになる。
頼むから、気付いてくれヨナ。
後続車が近づくたびに、そればかり願っていた。
なかなか出口なんか見えてこねーし。
入ってからずっと真っ直ぐで500mほど続いた隧道は、出口の灯りが感じられ始めると、思い出したように右へとカーブし始めた。
緩和曲線などというオシャレなものが採用される以前の設計だ。
曲がるときは曲がる 「ガッ!」
真っ直ぐは真っ直ぐ 「スラリン!」
そんなカーブが、トンネル内外問わず普通に現れてしまうのが、梓川筋スペック!
曲がるときは ガッ!
そこがたとえ出口でも、ガッ!
もう10年遅く工事されていたら、今日のダム周りの道がそうであるようにハイウェイ同然の道が出来ていただろうに。
この頃はまだ、電力会社のほうが地域社会よりも「強かった」のだ。
それに、この程度の付け替え道であっても、未舗装、谷底、落石、狭隘、雪崩、これらを全て持ち合わせた旧道から見れば、ずいぶんマシだったのだろう。
10:35 【現在地(別ウィンドウ)】
でた!
これぞ十数年前に私を迎えた隧道坑口の姿に違いない。
ここでもやはり50cmの狭さが明らかに視覚に訴えてくる。
ちょうど隧道内のカーブとこの坑門前のカーブを足し合わせると“S字カーブ”になっているので、「これではあんまりだ」と松本工事事務所も思ったのか、対向車が近づくと「対向車注意」を点灯させる電光掲示板が付け足されている。
以前はなかったはずだ。
隧道内が狭すぎて置けなかったため、坑口脇に並んで置かれている「非常電話」と「消火器」も、良い味出してる。
私の好きなコイツ(←)もあるしな。
坑門の扁額には「木無(木へんに無)の木隧道」とあるが、これで「ぶなのき」と読む。
ブナは昔は役立たない木だから、木偏に無能の無と書いたらしい。
もっとも、ブナには他にもいろいろな字がある。
余談はさておき、ここに書かれた全長634.8mに注目。
反対側の坑門にあった銘板には、全長647.3mとあった。
差が13.5mもあるが、拡幅延長24mには一致しない。
ということは、あの断面変位地点も旧来の坑門ではなかったということになる。
…というのは、今気付いたのだが。
今回はこれと言った煽りもせず、次回へつづく。