秋田と盛岡という、北東北2県庁所在地を結ぶ国道46号線の最大の難所が、列島の脊梁である奥羽山脈越えであることは言うまでも無い。
仙岩峠について取り扱った書籍やサイトは数多く、今さら私が語るのも野暮だとさえ思う。
まさに、秋田県を代表する峠の一つである。
一方、道路探索を趣味とする者にとっても、この仙岩峠にある旧国道は忘れがたい。
標高900mを越える稜線をトンネルも無しで正面突破する旧道はいまなお、幹線国道としての威容を、半年は白銀の世界に委ねながらも色濃く残し、訪れるものに感動と驚きを与えずにはおかないのだ。
勿論、この「山行が」でも紹介するだけにとどまらず、その後も事あるごとに通過している。
もちろん、私もこの道が大好きだからだ。
先ほどから旧国道の話題に終始してきたが、今回のテーマは異なる。
現道だ。
もっと言えば、現道を建設するに供された仮設道路の存在である。
現国道は、トンネルと橋梁のオンパレード。
特に秋田県側の景色は、昭和51年の開通でありながらも、いまだ近代道路建築の迫力を感じさせる。
主トンネルである仙岩トンネルを含め、仙岩道路全長16.3km区間中にトンネルが計8本総延長4939m、橋梁が21本総延長1962mにも及び、これらのトンネルと橋梁の殆どは、秋田県側の8.3km区間に集中しているのだ。
素人目にも難工事がが容易に想像できる道であるが、やはりその通りであって、昭和42年の調査開始から44年基本ルート決定、翌年に工事が着工するも、完成は昭和51年となっている。
複雑な地質の脊梁に2544mの風穴を開ける工事は勿論、先に述べたとおり、秋田県側の殆どが道路構造物に占められており、この区間の工事は困難を極めたと伝えられている。
新道の早期開通が強く要求されていたこともあり、工期短縮のため秋田側盛岡側の両方に工事用道路が施工された。
この工事用道路と、当初からあった林道を利用し、工事区間全体を同時に建設して行ったのである。
長大な山岳道路などの建設においては、このような工事用道路を施工する場合があるが、その性格上、工事が完了すれば随時放棄される場合が多い。
この仙岩道路の場合も同様であり、少なくとも現道を走る限りは、その現道とかなりの回数接触していたはずの工事用道路の痕跡に気が付くことは、まず無いだろう。
私がこの工事用道路の存在を知ったのは、当時の建設誌を閲覧したりしたためだが、それによればご覧のような路線が存在していたと言うことになる。
以下をご覧頂きたい。
見難いが、左が秋田側で、右端に仙岩トンネルが描かれている。
ほぼ直線的にトンネルと橋を繰り返す工事予定線と、谷底の林道とを結ぶ破線で描かれた道が、工事用道路である。
そして、これら工事用道路は、破棄されたにもかかわらず、やや古めの道路地図にはちゃっかりと描かれていたりもするのだ。
では、実際に、どのような道が存在していたのか。
同誌から、もう一枚拝借した。
なんだ、立派な道路じゃないか。
それが、第一印象である。
ガードレールに側溝、そして工事車両専用道路なのに、標識まで。
そして、もう一つ注目なのが、ここに写っている標識だが、なんだと、思います?
「工事中」?
きっと。ツルハシですもんね、すぐ分かった?
しかし、実は確信は無い。
だって、こんな標識、正式には存在しないはずだから。
「工事中」の標識は、もっと別のデザインで実在するのだが、こっちの”つるはし”の方が洗練されているとさえ思える。
それはさておき、こんな見たことのない標識が点在する、立派な道。
それが、仙岩道路工事用道路の姿だったようである。
そして、私がこの工事用道路を探索の対象に加えた理由が、この写真だったのだ。
探索目標は…
ぜひ、“ツルハシ”に巡りあいたい。
それでは、探索開始。
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