2010/1/14 9:52
県道から山に入ること25分、水涸れの沢は、ここで周囲の山腹に散逸した。
三方の全てが急斜面という源頭に達したのである。
いよいよ決着すべき場面である。
今回の私の決着とは、古地形図に載っていた隧道が現存しているかどうかの確認に他ならない。
ただし、状況は悪い。
大した尾根ではないので単に山を越えるだけなら、無理矢理チャリを担ぎ上げても可能だろう。
だが、今私は道を見失っていた。
これは隧道捜索という一点に関して、致命的と言える。
何のヒントもなくこの広い山腹を探し回って、明瞭とは限らない隧道の痕跡を発見できるかどうか。
そんな保証のないことに時間を使うよりは、まず周囲をよく観察し、道を探すことが大切だ。
ということで担いでいたチャリをその辺に置き、落ち着いて周囲を観察してみたところ…
道、発見!
しかも、2本分岐してる!
沢が終わって山が急斜面となったところから、道は浅い堀割を作って蛇行していたのだった。
幸いにして、私が周りを見渡した地点というのがちょうどその道の途中であり、ロスはなかった。
沢の中では水流に削られて不鮮明だった道が、沢を脱したことで姿を現すというのは、良くあることだ。
同じ地点から、少しアングルを変えて撮影。
道を見つけたのは嬉しかったが、どうも二手に分かれているようなのである。
線形的には赤いラインのほうが自然に峠を目指しているように思えるが、黄色いラインはそこから鋭角に分岐して、斜めに尾根を目指している。
上手く言葉では表現できないので、後で2本のルートは図示しよう。
ともかく、今はどちらかを選んで探索してみよう。
どうせ今はこの2本の道形しか手掛かりがないのだから、隧道が出てくるまで両方を探索することになるだろうしな。
ということであまり悩まず、まず赤ルートを選んだ。
幅1mほどの道が、尾根上を目指して蛇行している。
古地形図の隧道の記号は小さく、長さは数十メートル以下と考えられるが、もはやここまで登ってしまって、今さら隧道が必要とは思えない…。
なんか、無さそうな予感がしていた。
ガッカリの予感のなか、ちょっと嬉しい発見があった。
急な部分に刻まれた、10段ほどの階段である。
一見すると鬱蒼と木が茂っているように見える山も、実は表土は厚くなくて、その下に南伊豆に多い凝灰岩の岩盤が有ることが分かる。
これは隧道を掘るには都合の良い地質だ。
そんなことを思いながら、急な石段を登り詰めると、道は奇妙な空間に突き当たった。
今まで階段が穿たれていた岩盤が、今度はひときわ深く削り取られ、何か…
隧道の入口でも作ろうとしていたかのような形で、
放置されていた。
だが、期待に反してここに隧道は存在しなかった。
道はこの不思議な人工的地形の前でターンして、それからまた電光型にカーブして峠を目指しているのだった。(赤い矢印がそのライン)
しかし、見れば見るほど意味ありげな地形である。
斜面の一角が、幅1m奥行き3mほど切り取られ、直前までの道をそのまま延長すればここに入ってくるような感じになっている。
疑わしきは、未成の隧道跡ではないかということだ。
だが、これはそんな夢のある地形ではなくて、単に石切場を作ろうとして止めた跡かも知れない。
かつて伊豆半島の海岸沿いには数多くの石切場があり、様々な銘で全国へと販売されていた。
今日の観光地としての姿からはあまり想像できないかも知れないが、かつて石材が伊豆半島の主要な生産品の一つだったのだ。
南伊豆一帯にも、丁場と呼ばれる石切場の跡が多く残っている。
もしかしたらここも、そのような丁場の一つだったか、試掘された跡かも知れない。
まだ気にしてます。
…気にしすぎ?
これは、例の掘削地形を上から見下ろしたところ。
ちょうど電光型に折れ曲がった道が、この場所を通っている。
もしこの地形が隧道の予定地ならば、ありがちな新道(トンネル)と旧道(山越え)の位置関係になる気がするのだが…。
もっとも、こんな尾根に近いところで隧道を掘る必要があるのかという疑問は、ある。
まして、人道専用の隧道となれば、たかが10mかそこら高度を下げる意味があるのだろうか。
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9:58
隧道工事を疑わせる場所はあったものの、古地形図には明確に「既成」している隧道を発見することなく、峠に到達してしまった。
名前も分からない小さな峠には地蔵や石標といった安置物もなく、ただ道が尾根を越えるだけの場所だった。
これで隧道現存の期待は、さきほど分岐したもう一本のルートに集約されたわけだが、このドキドキをもうちょっと長く楽しんでみたいと思う。
もしあの分岐ルートも峠を越えているなら、向こうでまた合流するはず。
尾根はこの一本しかないので、それはまず堅いだろう。
そのことを暗に期待しつつ、このまま峠の先へ進んでみることにした。
もしまた合流するようなら、いよいよ隧道も期待できるのではないか? (なぜなら、一つの峠の近接した場所に、2本の明かりルートが平行することは稀だから)
そんな期待をもって尾根を越えると、林相が大きく変わって竹林となった。
また、山腹の勾配もこちらは緩やかで、峠直下だというのに堀割道は谷の真ん中を真っ直ぐ下っている。
それでも道が水っぽくないのは、水はけの良い証拠だろう。
五月蠅い倒木や笹の支障を払いながら、北東へ道なりに進むと…
ちょっ!
マジで来たぞ、右から道が来た!
いや、単なる竹林の作業道路かも知れないし、まだ分からない。
まだ分からないが…
でも、方向的にはいかにも怪しい気がするぜ!
これは、期待しちゃう展開!!
もちろん、右折!
やべぇ
こいつは絶対にやべぇ。
隧道探しでこんなにドキドキするのは久々かも。
有るか無いか事前に分からない隧道を探すのは、やっぱ楽し過ぎる。
ニョキニョキ!
・・・・。
これは、残念ながら切り通しか?
どう考えても、尾根が近すぎる気がする。
私の常識では…、
峠の隧道が、こんなに尾根に近いところに有った試しはない。
もうあと5メートルも進めば、決着しそうだ…。
これは発見しそうだ…!
なんだこの形!!!
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