ミニレポ第264回 高滝湖パーキングエリアの未成道 前編

所在地 千葉県市原市
探索日 2021.01.19
公開日 2022.06.17

SAになれなかったPA


《周辺地図(マピオン)》

東京都心から40〜60kmの位置を環状に走る高規格幹線道路である首都圏中央連絡自動車道(圏央道)のうち、千葉県内の区間は約100km(未開通区間を除く)あるが、休憩施設は市原市にある高滝湖PAしかない。

我が国においては有料である(いわゆる)高速道路には、原則的に、15〜25kmごとにPAが設置され、さらに50〜100kmごとにより規模の大きなSA(サービスエリア)が設置されているので、圏央道は全体的に見てPAもSAも数の少ない傾向があるのだが、このうち高滝湖PAについては、当初はSAにする計画で整備が進められていたらしい。

当初は「市原高滝湖SA」としてサービスエリアとしての供用を予定していた。 ウィキペディア「高滝湖パーキングエリア」より)

さて、おそらくこのこと(SA→PAへの計画縮小)と関係があるのだと思うが、この高滝湖PAに附属して、ほぼ完成しているにも拘わらず未だ利用が開始されていない道路が存在する。いわゆる未成道と言って良いと思う。

それは最新の地理院地図(右図)には既設のように平然と描かれている道だが、PAに隣接して、まるで一般道路からPAへアクセスするために作られた道のように見える。
その実際の風景は本編で紹介するが、PAであれSAであれ休憩施設(以下、SAPAと称す)へ一般道路からのアクセス路が整備されているとすれば、ハイウェイオアシス(HO)のように、高速道路と一般道路の両側から利用可能な施設を整備しようとしたか、これをより小規模化したウォークインゲートの設置が計画されていたか、あるいは最近各地で整備が進んでいるスマートインターチェンジ(SIC)の整備を考えていたかといった可能性が思慮されるところである。

つまり、高滝湖PAは単純にSAからPAに規模を縮小したというだけでなく、一般道路との接続(HOやSICなど)についても計画を中止(延期?)している様相が濃いのである。
このことが今回のミニレポのテーマとなる。
それでは、現地に残された未成道?の様子をご覧いただくとしよう。




2021/1/19 6:40 《現在地》

高滝湖は昭和63(1988)年に完成した比較的に新しい人造湖で、あまり大きなダムがない千葉県内では規模の大きなダムである。いまいるのは東岸の大和田地区の市原市道上だが、ここより少し下流の北岸には、ダム工事に伴って付け替えられた小湊鐵道の旧線もあり、以前探索したことがある。

写真に湖面は写っていないが、湖腕を横断する大和田橋が間近にあり、その向こうの小高い丘の上には、これから行こうとしている高滝湖PAを象徴する存在であるピラミッドを彷彿とさせる築山と、圏央道本線がランプウェイを渡る跨道橋などが横並びに見えている。
現在地からは40mくらいたかいところが、PAの地面であり、築山はさらに20mくらいの標高があるように見える。

それにしても、朝焼けの空を背景に望遠レンズで覗いた築山の存在感は、はっきり言って、異様である。
市原の山の中に、なんの脈絡もなく唐突に、草木一本とてないコンクリート色の四角錐の山が突っ立っているのだ。(ゼビウスの地上物みたいだ)
あの妙ちくりんに無骨な築山と、PAの計画縮小の因果関係はまだ不明であるが、とにかくこれからあの山の麓へ、高速道路を利用しない形で目指すぞ。



6:42 《現在地》

大和田橋を渡って進むことしばし、圏央道の高い橋が目の前に現われてくる。大和田第二橋という。
市道は橋を潜って続いているが、その直前に右へ分かれる道がある。
それこそが、今回の探索ターゲットだった。




これがその“未成道”とみられる道の入口だ。
とはいえ、ここから見える範囲の外観は完全に完成した道路である。
入口こそ1.5車線くらいだが、入ってすぐのところからは中央線があり、2車線道路になっているのが見えていた。

そして、入口で塞がれていた。
工事現場、工事中の道路等でよく見る収納タイプの道路ゲートが、施錠によって閉ざされていた。
にもかかわらず、傍らに立つ「市原市」が設置者である仮設ではない立派な看板には、「大型車通行不可 この先行き止まり」と、行き止まりだけど大型車でなければ入って良いと解釈できる内容が書かれていた。


塞がれた現状と、上記看板の存在は少しばかり矛盾していると思うが、それこそが未成道であることの証しなのではないかと思った。
もっとも、この道が本来どのような用途に使われるはずだったかを示す看板は、存在しない。
スマートインターチェンジ(SIC)やハイウェイオアシス(HO)の入口であれば、もっとたくさんの標識や看板に彩られたはずで、その段階までの工事が行われていないことは明らかだ。

わるにゃん。ゲートは脇が甘く、草藪から迂回して進むことが可能だった。
その際、4枚の看板がゲート脇に設置されているのを見た。
だが、「通行止」とだけ書かれた1枚を除く3枚は、すっかり内容が消えてしまっていて、何を伝えたかったのか分からない。
看板の形式的に、いわゆる工事看板の類だったのではないかと思う。
いついつまでこういう工事を行っていると告知する看板だ。

ちなみに高滝湖PAの営業開始日は、内回りが平成25年7月12日で、外回りは平成27年8月10日だった。この部分の圏央道は平成25年4月27日に開通しているので、開通より少し遅れての開業であった。
この塞がれた道の建設も同時期であるはずで、自然に文字が消えてしまうほど古い道路ではないのだから、意図的に内容が抹消されたのだろう。これを見れば、何を作ろうとしていたか分かっただろうに、惜しい消失だ。



未成道……ということにしているが、今のところ見える範囲では、道は完全に完成した姿をしている。
舗装はもちろん、白線もガードレールもあり、だいたい最後に設置される道路標識まで完備されていた。案内標識の類はないが…。
真新しい路面には、土汚れっぽい轍や足跡も少しあって、誰も入っていないわけではないようだ。

道は最初から緩やかな上り坂で、向かって左の半ば人工的な盛り土であろうとみられる斜面上にあるPAの高みへ、大きく東側からコの字型に回り込むように登っていく。
地形図に描かれているこの道の全長は入口のゲートからPAまでの約900mで、この間で40mくらいの高低差を克服するようだ。

また、入口で見た看板に「市原市」と書かれていたことから分かるが、この道路の管理者は圏央道を管理するネクスコ東日本ではなく、市原市であるようだ。市原市道なのだと思う。
通常、高速道路の敷地は高いフェンスで取り囲まれていて、うっかり立ち入ることができないようになっているし、各所にネクスコの名前のある看板も設置されている。
この道路沿いだと、向かって左側のフェンスがそれで、看板も所々設置されていた。
この道はあくまでも通行止の市道であり、高速道路を犯す大罪には触れていないぞ(苦笑)。



6:45 《現在地》

どこにでもありそうだが人通りだけがない2車線道路を、入口から150mほど進むと、地形図にも描かれている分岐があった。
分岐先の道は1車線で、やはりどこにでもありそうな道である。
地形図によれば、大和田集落内に通じているようだが……。




実際に右折して入ってみると、真新しい姿のままで冬枯れした藪に覆われつつある哀れな道で、(チェンジ後の画像)分岐から30m足らずで敢えなく、ゲートによる封鎖地点に突き当たった。
ゲートの向こう側は解放された一般道路で、やはり大和田集落へ通じているようだが、私はここで引き返した。




本線に戻り、定規を当てて作ったような直線の上り坂をテキパキ上る。もちろん今回の探索も足は自転車である。
PAがある台地は、天然の地形に多分に手を入れて造成されたものらしく、この道の周囲のススキが多く繁る斜面も、大半は一定の勾配に合わせられた人工的な斜面のように見えた。

間近に圏央道の賑やかな走行音を聞きながら、自らの活躍の日を待ちわびる、まだ出来たての匂いを漂わせた2車線道路に、早くも嫌らしい土の災いが忍び寄っていた。
法面が大雨の時にでも崩れしたらしく、まだ小破の段階ではあるものの、放置されれば大きな法面の崩壊に繋がりかねない。一応、最低限は土嚢でケアされているようだが…。




気づけば、路肩のガードレール越しに、高滝湖の湖面や房総丘陵の広がりを眺望できるだけの高度を手にしていた。
左側の地面に見える橋が、レポート冒頭の大和田橋だ。中央で湖面を渡る赤い橋は、加茂橋という。

夜明けの晴れ空に満たされた穏やかな眺めを見せる眼下に対して……




逆方向、高滝湖PAがある側には、未だ夜の闇に拘束されたような重苦しい厚い雲、ススキの山、聳え立つ怪しき築山が、現役のPAとは思えぬ灯りなきところに押し黙っていた。

このPAを利用された方で、あの築山の頂上まで登ったことがある人は、どれくらいいるのだろうか。
利用者の数を考えれば決して少なくはないと思うが、夜間や早朝にそれをした人は、あまりいないのではないかと思う。当然、今も人の気配は全くない。
ちなみに、このPAは上り線と下り線の施設が相互に行き来自由で共用しているので、どちら側からもこの山にアプローチ出来る。



6:49 《現在地》

さらに進むと、いよいよ圏央道の本線と、PAに出入りするランプウェイとが、同時に間近に現われた。
上るべき高さの大部分を消化し終えたようで、道の勾配も緩くなる。
地形図に描かれているこの道の先は、本線を潜ってその北側に入っていく。
現にボックスカルバートの入口が見え始めていたが、ここで予想に反して2度目の封鎖ゲートが私を待ち受けていた。

今度のゲートも特に封鎖の理由は掲示されていなかった。わるにゃん。




2度目のゲートの直後に、本線を潜るボックスカルバートが待ち受けていた。
向かって左側が外回り線PAへのオフランプ、右側は同じく外回り線PAからのオンランプである穴も並んで口を開けており、それらはもちろん現役で使われているのに、中央にあるこの一般道路用の穴だけが、未だ一般の用に供されていないのである。

もっとも、道の外形的には完成しているので、ランプを利用しているドライバーが見たら、使われていない道とは思わないだろう。よく見れば路外のススキが伸び放題で道を侵食し始めているが、普通そこまで見ないだろうし。

ボックスカルバートの入口には、この手の施設ではほぼ必ず見る「番号標」が取り付けられていた。内容は、「市原鶴舞8」だった。



本線を潜るところが勾配の上では最初の峠、サミットで、ここで俄に下りへ転じて、すぐ先に待ち受けている2本目のボックスへと今度は下り込んでいく。
次に潜るのも再び外回りオンランプであるが、写真の通り上りから下りに転じながらのボックス2連続は、とても見通しが悪い。もちろん直線でもないし。

この辺りは、本線とランプウェイに取り囲まれた狭く窮屈な土地を、「すいませんすいません高速様すいませんちょっと通してください(_ _)」と頭を下げながら、一般道路が通して貰うような雰囲気が強くある。実際、2車線幅の道路の外は、全て高いフェンスや壁や法面なので、道を外れてどうこうする自由度が全くないところである。
入口に、「大型車通行不可」と書かれていたのは、2車線道路としては少し不可解だったが、この辺りの線形が関係していると思う。

チェンジ後の画像は、2本目のボックスの内部だ。
下ったと思ったら今度はここがサミットで、出た先は再び上りに転じるのだから本当に忙しい。高速優先の間に入り込んだ一般道路の肩身の狭さよ。
しかも、次は全く見通しのない直角カーブである。大型車きついわなこれ。対向車来たら積みそうだ。



これは2本目のボックスから振り返った景色。なんとも窮屈な景色である。
で、このボックスの壁面に、工事銘板が取り付けられているのを見つけた。チェンジ後の画像がそれを拡大したものだ。

(チェンジ後の画像)
このようにいろいろな情報が刻まれていたものの、ここを通る道を何に使おうとしていたかが直接分かるような内容は、残念ながら含まれていなかった。
この施設を設計した時点では、高滝湖PAは仮称である市原高滝湖SAと呼ばれていて、その計画の中に一般道路とのアクセス路が含まれていたのは間違いない。
それが、どこかの段階で計画縮小となったのだろうが、すでに完成に近づいていたアクセス路は最後まで?建設されたように、ここまでを見る限りは感じている。

果たしてこの先、PAへもっと近づいても、道は完成しているのだろうか。
どんな状況になっているのか、これから直接行って確かめるぞ!




続く


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