JR上越線 旧湯檜曽駅跡 中編

公開日 2012.5.17
探索日 2007.9.26
所在地 群馬県みなかみ町

駅への最終“175段”!



2007/9/26 13:50

湯檜曽集落から「旧湯檜曽駅」へ登る道は、現在の地形図にも狭い車道として描かれている。
居並ぶ等高線をものともせずにグイグイと登る様は、この道の急さを良く表現しているが、最後の部分だけは、縮尺の都合からか、正しく描ききれなかったようだ。
地形図の道は線路の所まで続いているけれども、実際の道はそこから等高線2本分は下の位置までである。

そこが「現在地」である駅前広場(誰かがコメントで書いていた「これじゃ駅“下”広場だ」というのは上手いと思った)であって、ここから駅のホームに辿りつくまでは、決してここに描かれているような“普通の道路”ではないのである。

それでは、始めよう。

旧湯檜曽駅への登頂を!!




なんでもこの階段、

駅ホームまで全部で175段あるそうだ。

しかも、なかなか結構急な階段であるようだ。
また、真っ直ぐではなくて、途中で二度屈折している。

今はとりあえず、途中に見える扉が気になるな。
開いていれば良いけど… 閉じてたら、斜面をよじ登るよりなさそうだ。



小さな踊り場一つを挟んで登ること、おおよそ50段

2度目の踊り場の前に立ち塞がる、“扉”の前に辿りついた。

扉は鉄製で、両開きの扉の一部が通用扉として別に開閉する作りになっていた。
扉にはかんぬきが取り付けられており、ここを通り抜けることは出来ないかと思ったのだが、よく見ると肝心の鍵が取り付けられておらず、かんぬきを外すだけで通用扉を開けることが出来た。

無断で扉を開ける行為には少なくない背徳感と緊張があったものの、立入禁止などという表示も見られないので、ここは遠慮なく進ませて貰おう。

…まあ、扉をくぐった直後に背の扉を閉じ、私の侵入を外からバレにくくするあたり、堂々たる姿からはかけ離れていたが…(笑)。

何はともあれ、石垣を含むような急斜面をよじ登る羽目にならず、助かった。




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うわ、暗い!

まあ、当然と言えば当然か。

防雪のためなのだろうが、トタンの壁で周囲をすっぽりと覆われた階段通路である。

そして、 む…

むしあっちぃ!

…これもまあ、当然と言えば当然すぎる帰結…

あっちぃ………。



振り返ると、こんな感じ。

天井の異常な近さが、感じられると思う。
実際に外人だったら頭をぶちそうであるが、
とかく階段が急であるために、余計こういう風に見えるのである。



この蒸しあっちさで階段を上らされるとは、完全にオブローディングに想定しうる苦闘の度合いを超えた、蒸し風呂探索の様相を呈している。

直射日光を避けうることの涼しさなど、金属の壁に取り囲まれて風の流れが皆無の空間においては、何の意味も持ち得ないことを知る。

…肩のタオルを額に耐えず這わせながら、扉を背に登ること20段ほどで、3度目の踊り場出現となった。(ここまで合計70段くらい?)

この踊り場で通路は屈折しており、外壁には明り取り用の窓があった。

…窓…じゃねーなこれは。開ければ良かったのに…。




3度目の踊り場で進路は180度近く転換し、次なる階段へバトンタッチする。

そしてその先を見上げると、一気に30段くらい上った先で、再び屈折しているのが分かる。
なんか、今まで階段も急になっている気がするが、…気のせいか?

暗さには既に目も慣れ、特に灯りを必要と感じることは無かったが、ただただ猛烈な熱さに脳の火照りを感じながら、前身に汗して歩く事になる。

……あぅ…。

…次のカーブの場所は、外から見た時にテラスのように見えていた所なんだろうな。 →【ここね】
残りはあと半分くらいかな…。




2度目の屈折地点に辿りつく。

これまでの総段数は、100段くらいかな。

ここで通路は90度折れ、まさに線路と直交する方向に向き直るわけだが…。

平坦…だ。


壁面の変化(金属→コンクリ)にも注目。




そして、こんなにも暗い…。


…奥には、また階段が見えるけど……。

気付けば壁の材質も変化しており、

既にここは「地下通路」だということが分かる。

急に涼しく感じられていることが、その何よりの証拠であった。


…進もう。





ちょ。



マジで暗い。


よもやここで使うことになるとは思わなかったが、
急遽腰の秘密ポシェットからライトを取り出して、
普段は誤動作防止のために抜いている電池を手探りではめ込んで、

点灯!



これは、どこのダンジョンですか?

地中に掘り抜かれた階段通路は、先ほどまでと同じような急さで上に向かって続いていた。

その途中にも小さな踊り場があったけれど、暗いことに気を取られて、もう段数を数えるのは忘れていた。




見上げた先に、壁が立ちはだかっているのが見えた。
まさか、封鎖?? それとも、直前でどちらかに折れているのか?

左右には一応手摺りがあるけれど、急な階段のトンネル通路は幅も高さも小さく、
なるほど、この駅が「大荷物の取り扱いが出来なかった」というのも肯ける。
そして、急増するスキー客たちのために大穴という仮駅を設けなければならなかったのも、また理解出来る。
この通路をスキーのような大荷物を持って歩くのは、危険極まりなかっただろうから。


蝉の喧噪も、日光の熱射も届かない通路を進むこと、少し。

果して正面に見えていた壁の所で、道は左へ直角に屈曲して、なお続いていたのであった。



3度目の屈曲を過ぎると、

眩い光を漏らす扉が現われた。

ついに、出口だと思われる。


最後まで急な階段は続いており、
しかも扉の直前まで来て、突然通路の幅が半分になってしまった。

おいおい、こんな作りありかよと思ったが、おそらくこれは、
駅が廃止された後の改造によるものだと思う(後述)。




最後の階段を登っていくと、1段につき0.5℃くらい気温が上がっている感じがした。
そして、いよいよ扉に手をかけようという時には、もう外気温と同じアツアツになっていた。

最後の最後で扉が見えた時点で、正直言って私は観念していた。

JRがそう易々と廃駅へ立たせてくれると思わなかったからだ。

しかし、実際には全く反対に…

「カギはかけるな」

という注意書きとともに、未施錠の扉が私を地上へ誘ってくれたのだった。

…たすかった。




ドアを前に振り返れば、

まるで地の底へ続くかのような、真っ暗な急階段だった。


次回そは、待ちに待った廃駅を満喫しよう!