国道410号 松丘迷走区 前編

公開日 2009. 3.29
探索日 2008. 4. 3


松丘 迷走 国道





 なんぞそれ?






 それは、

 おそらく 関東一理不尽な国道の線形。



 まずは次の地図を見て欲しい。





【所在地(外部リンク)】


ご、ごめん…  もったいぶって…

でも、“めくる”前に…  ちょっとだけ想像してみて欲しい。

房総半島の内陸にあるこの「一般国道410号」に、どんな異常線形があるのかを。


上から来た道が左へ曲がっていく。

隠された部分には、そんな線形が潜んでいる。




それでは、めくってみよう。









なんじゃこりゃ。



いままで数多くの道路線形を見てきた私だが、こんなに変態的なのは、初めてだ。

まるで、 の “なり損ね” のような線形と言えばいいだろうか。


しかも、この“変態線形”は一時的なものではなく、
国道410号が昭和57年に誕生して以来、ずっとここにある。




一体現地では、どのような「案内」がされているのだろうか?

まさか千葉方向から館山方向へ向かうドライバーは、こんな変態行為に延々付き合わされるのだろうか?

そして、なにゆえにこの線形は生まれたのか?



私はその全てを確かめるべく、房総丘陵へと潜入した!




国道410号変態線形を確かめろ! 君津市広岡より出発


2008/4/3

これから、左図の通りに国道410号をトレースする予定である。

現在地は、君津市広岡。
昭和29年までは君津郡松丘村の中心部であった広岡集落の北口付近だ。

ここをスタート地点にした理由は、このすぐ先に、今後を占う分岐と“青看”があるからだ。




まずは青看(←)と、付属する案内標識(→)。

直進は国道410号だが、右折の行き先も国道410号である。
これはありそうで、あんまり無いパターン。

そして、国道410号の最終的なゴールである「館山」(国道410号は木更津〜館山間の105kmの国道)は右折と案内されているから、早速にして国道410号の忠実なトレースは非効率だと宣言された形である。

そのうえで、頼りの右折でさえ大型車は通り抜けできないと来た。
大型車が館山に行くには、諦めて忠実トレースに賭けるより無いというのか。(←実は既にドツボ…)




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青看に予告された交差点は一応信号機が設置されており、初心者泣かせの踏切と絡んだものとなっている。
まあ、関東有数のローカル線である久留里線の末端に近いところであるから、踏切はさほど騒がしいものではない。

直進が国道410号、右折は君津市道である。
見たところ国道のほうが格上の道で、右折は大型車では確かに不安な1.5車線である。

迷わず直進する。




直進した国道は、隣を走る線路と同じ緩やかなカーブを描きながら、小さな広岡の盆地を抜けていく。
房総丘陵に相応しい、のどかな集落風景である。




だが、行く手への不安感はさりげなく演出されている。
大型車は右折できないと言われた矢先に、今度はこの直進の道でさえ、
「この先高さ制限柱(3.6m)あり 通行にご注意下さい」というのである。
いくら注意しても、4mもある車高の大型積載車は通行不能である。
今さらどうしろというのか。




お馴染みの国道標識。
俗に “おにぎり” というやつである。
そこには確かに国道410号の文字。
疑いはない。




高さ制限柱をくぐると間もなく盆地が終わり、小さな山脚が忍び寄ってきた。
道は臆せず突っ込んでいき、どう見ても窮屈そうな隧道に繋がっている。

地図を見ると、この先には連続して4本の隧道がある。
気付けば、これまであった歩道も消えていた。
それどころか、路肩が全くない如何にもギリギリスペックの2車線だ。




妙に“おでこ”の広い坑門は、掘り割りの奥にあって壁のように立ちはだかって見える。
決して広くはないが一応は2車線幅の隧道が、妙に狭く感じられるのもその対比のせいだろうか。
ドライバーを抑圧してスピードを落とさせる心的効果は抜群だと思うが、普通の快適ドライブの風景学からすれば絶対にマイナスと思える、率直に言って気色の悪い坑門だ。
広いおでこを強調するように多数の水汚れ目立つのも、マイナスポイントだ。




もっとも、道路の“変”を何よりも愛する私にとっては、この奇妙な坑門は嬉しい遭遇。
追いかけてくる大型車を大袈裟なくらい反対車線に待避させつつ、極狭な路肩に縮こまって“おでこ”にある“ほくろ”のような扁額を撮影する。

扁額には「松丘隧道」と記されている。
丘の文字は、俗に言う「ニュータウン地名」っぽいが、この「松丘」は歴とした明治22年町村制施行時からの地名である。




曲がりなりにも国道410号は半島内陸部唯一の縦貫国道であるから、通行量は少なくない。
狭いだけでこれと言って個性のない隧道内は、一目散に駆け抜けた。

隧道リスト】におけるスペックは次の通り。

松丘隧道
全長:91m 車道幅員:5.5m 限界高:4.5m 竣工年度:昭和29年



数百メートル開けて、2本目の隧道が現れた。
しかも、その先には既に3本目も見えているという、隧道フリークならば否が応でも盛り上がる展開。

  な の だ が…

せっかくの山岳ムードをもぶち壊しかねない、奇妙な眺めが右にある。




なんだこりゃ!

そこには、単線の線路が巨大な掘り割りで山を貫いていた。

そのせいで、道路隧道は大袈裟なものに見える。

並行する線路と道路で、線路にだけトンネルがあるケースは珍しくない。
しかも、先に道路が出来て後から鉄道が開通したのならばまだ頷けるのだが、実際には逆なのだ。
昭和11年に久留里線が開通し、平行する道路の方はそれからずいぶん後の昭和31年開通であるという。

…奇妙だ。



北口の扁額はなぜか欠落している。
填め込んでいた空洞が妙に目立つ。
正しい扁額を見つけ出してセットすれば、音を立てて“どこかの”扉が開きそうな雰囲気もある。

…ゲーム脳?




やはり代わり映えのない洞内をスルーして南口へ。
今度はあるべき場所にあるべき扁額が残っていた。
こんなに大きなものが落ちるなんて、地震の影響だろうか。

「ひろおかずいどう 昭和29年3月竣功」

広岡隧道
全長:63m 車道幅員:5.5m 限界高:4.5m 竣工年度:昭和29年



道は線路と仲良く3本目の隧道へ直進する。

そして、次の隧道が潜る尾根上には白いガードレールが見えるのだが…

これこそが国道410号の行く先だと、一体誰が予想できるだろう!!




地形図上には立体交差とも思えるような描かれ方をしているが、実際には普通の隧道であった。
隧道の上を道が通っていること自体は珍しくないが、それが自分自身の先行きだというのだから、ループと言えなくもないかも知れない。

しかし、普通はこれをループとは言わない。

さて、3本目の隧道越しには、さらに次の隧道が見えているが、この3,4本目は1,2本目と異なり、妙に丸いシルエットなのが特徴だ。




扁額も健在で、大戸見隧道と分かる。

地形的に変化のないところで、隧道名を第一、第二…と手抜きしなかったのは、個人的に評価のできるところである。
だが、隧道名を大字から取ったのならば、2本目の広岡隧道も大字広岡ではなく、既に大字大戸見にあったというツッコミをしなければならないだろう。

大戸見隧道
全長:39m 車道幅員:5.5m 限界高:4.5m 竣工年度:昭和31年



相変わらず線路と並行しているが、少し道路が登っているので高低差が付き始めている。

そして現れた4本目にして最後の隧道は、これまた不思議な形をしている。
3本目と同じく正円に近い断面を持ち、ほとんど地被りがない。
しかも右側は線路に切られているせいで、坑門の一翼が宙ぶらりんになってるのは、如何にも据え付けが悪い。
大事あれば坑門ごとゴロンと線路へ転がってしまうのではないかと思えるが、大丈夫なのだろうか。





扁額に刻まれた名は、「四町作隧道」。
俄には読み難いが、これで「よまちさく」と読むらしい。おそらく農地に由来する名前だと思うが、分からない。

四町作隧道
全長:18m 車道幅員:5.5m 限界高:4.5m 竣工年度:昭和31年

91→63→39m→18m
次第に短くなってきた隧道群は、国道としては稀に見る短い隧道を最後に完結する。




なんだこりゃ!(笑)

たった18mしか無いはずの全長のうち、中央部の10mほどが素堀吹きつけ(&白ペンキ…笑)である。
このくらい、全部巻き立ててしまってもいいのに…。

しかも、見れば見るほど真ん丸だ。
コンクリートの巻き立て部分が丸いのは、分かるよ。
この隧道はほとんど洞門のような位置にあって偏圧がキツいから、より物理的に安定した近円形を選択したのだと思う。

でも、 …ウフフフフ…
素堀吹きつけの部分までこんなに真ん丸に… 
…初めて見るぞ。




4本の隧道を抜けると、緩やかな右カーブが現れた。
それとともに、激しく蛇行する小櫃川の川崖が一気に接近してきた。
この先の道は、並行する線路とともに、階段状に成形された狭いところを走る。

しばらく信号のない道が続いているので、相変わらずクルマの流れは速い。




突然、465がコンニチワ。

気付いたときにはもう遅かった。

いつの間にか、国道465号へと連れ込まれていた。


  え? ヤラセだろうって??


  (笑)





気付かぬうちにすり替わっていた国道。

410号を正しくトレースすべく、引き返すことに。











100mほど戻ると…



?!







分かりにくいなーオイ!

しかも、オマケ→←付き…








次回から、迷走開始?!