現在地は県道278号から900mの地点、封鎖地点から数えると500mの所である。
「秩父湖一周ハイキングコース」は、いよいよ険悪な地形に入り込んでゆく。
それに伴い、廃道の様態は急激に悪化。
愛車が待つゴールまで、残りは1600m。
踏破か、敗退か、はたまた死か。
全ての可能性が存在する核心戦が、いま始まる!
秩父湖の下がりまくった水位のために、この日のハイキングコースはとかく絶壁道の印象を濃くするものであった。
廃道でなかったとしても、現代の「ハイキング」のイメージよりは危険を強いられる道であったと思われる。
しかし個人的に好ましいと思ったのは、コースのアップダウンが少なく、道幅も1.5m程度はあって、それがまるで森林鉄道跡のように見えるという点だった。
歩道と言うよりは、軽車道のような味わいがあったのだ。
今のところ確たる情報は得られていないが、このハイキングコース誕生の経緯のどこかに、荷車道としての設計が含まれていたのではないか。
そんなごきげんな想像をする事も出来た。
シャキシャキと進んでいくと、このゴツゴツした景観にはいかにも
不釣り合いな都市型のガードフェンスが再び見えてきた。
林鉄の景観に重ねて歩くには、この手摺りはとても邪魔なもの。
そんな事も思ったが、ありのままを受け入れることが必要だった。
…煩悩を持っていたせいか、私はこのあと「 罰 」を…。
案の定、ガードフェンスの正体は、
2本目の橋だった。
先ほどの橋と作りや規模は変わらない。
高さは幾分控えめで、手摺りがある分だけ、
橋の前後よりも寧ろ安全な場所かも知れない。
そう思った。
これまた案の定、
床版がなかった
が、何するものぞ。
念のため安全策を取って、高度の少ない左の桁を選んでスタスタと進入する。
手摺りはあるが、それを頼る必要さえなかった。
うわーーっ!!
10:31 重大ヒヤリ・ハット事例発生!!
この“ねこかぶり”2号橋で何が起きたのかは、下の動画をご覧下さい。
↓↓↓
「その瞬間」を誰も撮影していないので、私の言ってることが分かりにくいと思うが、説明しよう。
私は谷の上流側の桁に両足を乗せ、左手を軽く手摺りにそえて渡っていた。
あと1mほどで渡り終えるという所で、ちょうどツタが上半身の高さに有ったので、これを身を屈めてやり過ごした。
直後起ち上がろうとした際、私は何の気なく、左手で手摺りを引っ張るようにしてしまった。
だが、実は手摺りの付け根は朽ちていて切断されており、手摺りが私の体重に引っ張られて内側へ覆い被さってきたのである。
「ハッ」とした私が手摺りを引くのを即座に止め、そのまま遮二無二起ちあがったおかげで、倒れてくる手摺りをはね返し得た。
そして事なきを得たのであったが、
もし、
手摺りがもう少し重ければ、私は起ちあがることが出来ずそのまま手摺りに押し潰されるようにして橋下へ転落させられたかもしれない。
また、押し潰されないまでもバランスを崩し、転落していたかも知れない。
動画の中でも言っているように、万一転落しても即座に大怪我に繋がる場面ではなかったと思うが、頭から落ちれば1mでも死ぬことがあると言うし、捻挫一つでもここからの自力脱出は危険度が高いと言える。
まさに、事故の入口にある「ヒヤリ・ハット」事例であったのは間違いない。
その反省としては、手摺りの強度を確かめずに手をかけた不注意である。
まだハァハァ言ってるが、先へ進む。
しかし私の中には、小さな恐怖の灯火が確かに点っている状態だ。
その状態で現れたこの光景に、軽く悲鳴を上げたい気持ちになった。
幅1〜1.5m程度の道に、それと同じくらいの大きさの石が墜落していた。
この場所は元より危険地帯と認識されていたのか、今までは見られなかった手摺りが設置されていたが、それがあるために落石が路盤上に踏みとどまっている感じである。
この大岩を乗り越えて先へ進む。
こんな展開がしばらく続くのだろうか…。
嫌なカンジだ…。
片洞門だ。
見た目は恐ろしげだが、こういう場所は比較的気が休まる。
岩盤に寄っていれば頭上防護に気を遣う必要はないし
(ちなみに今回は念のためヘルメット装備)、
その安全度を証明するように、路盤の状態も良かった。
片洞門は見た目が好きなだけでなく、本当に色々助かる…。
私の嫌いな(つうか好きな人なんてトリさんくらいだろう)“撫で肩”の路盤。
でも大丈夫。 まだ、行ける。
一つ一つの場面を経験に則って、慎重に検討しながら進む。
慎重すぎても良いはずだ。なにせここで読み違えたら、リカバリ出来ない。
湖面まで30mの断崖で、遠慮なくDEAD・ENDが突きつけられることだろう。
私が心中「 ヒーヒー 」言ってるのをよそに、
対岸には明るい皆様の暮しがあった。
この温度差が、明暗が、憎らしかった!!
私の進路は前進か後退か、それしかない。
近くに見える対岸は、あまりにも遠かったのである。
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10:40 《現在地》
3本目の橋が現れた。
だが、この橋は駄目だ。
ヤラレちまっている。
現在残っているのは両岸のコンクリート製の橋台と、支承に噛み付いたまま無惨な“流しソーメン”状態となった主桁材が1本…。
過去に何が起きたのだろう。
そして、いつこの状態なったのか。
何も分からない。
分からないなりに出来る事は、ここをいかに突破するかの検討だ。
地形的にここを乗り越えるルートは一つしかなく、それは正面突破の斜面よじ登りだった。
行けるは行けるが、正直ここを安全に下りるのは、結構難しいかもな…。
もし、この先で引き返す羽目になったら、ここは大難所に化けるかも知れない。
あーいやだ。考えたくもないよ……。
あ…ああ… あぅ。
…ハイキングって、怖いもんだったんだな。
ガチじゃねーか。完全に。
なんか都心にあるのと同じガードフェンスが、凄く浮いた存在に見える。
そして私だけではなく、この山の意志も同じことを思ったのだろう。
手強い排斥運動が現在進行中で行なわれている形跡がある。
対岸から見てもそこが険しい斜面であることは予想できていたが、実際に入り込んで見ると、やっぱり…怖い。
また来たぞ。
何度目かの、ガチ斜面が。
そして、今度のは今までのよりも、やばそうだ。
なぜそう思ったかと言えば、明るいんだよー(泣)。
際立つ難所は、明るいことが多い。
もちろんそれは、対岸集落の朗らかな明るさとは異種のもの。
私に選択を迫る、脅迫の光に他ならない。
刑事ドラマの定番アイテムである取調室のスタンドライトと同種のものだ。
……
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