道路レポート 和歌山県道228号高瀬古座停車場線 月野瀬不通区 前編

公開日 2015.03.02
探索日 2014.03.27
所在地 和歌山県古座川町


【周辺図(マピオン)】

和歌山県道228号高瀬古座停車場線は、紀伊半島の南端に近い和歌山県古座川町と串本町を結……ぼうとしている、推定全長約6kmの短い一般県道である。

路線の概要は右図を見て頂きたいが、古座川町の月野瀬にある起点から串本町のJR紀勢本線古座駅前の終点まで、全線が古座川に沿っている。
起点も終点も県道38号すさみ古座線との交差点になっており、同県道とは古座川を挟んで鏡の関係にあるかのようだ。

しかし悲しいかなこの県道、交通量が比較的多い東半分では、自分より路線番号が若い県道との重用区間が長くて、単独区間は僅かである。
そして、ようやくまとまった単独区間になるはずだった西半分には、開通区間よりも長い未開通区間が存在しており、通り抜け不可能である。
推定全長約6kmの内訳は、開通済みの単独区間1.5km、開通済みの重用区間1.7km、不通区間2.8kmとなる。こんなんで真っ当な存在感をアピールしろというのは無理な話であり、いわゆる“不遇路線”というやつだろう。



これが地理院地図に見る不通区間の全貌である。
地理院地図では古座川町高瀬から串本町古田付近に至る不通区間に、道は一切描かれていない。
しかも、川岸の地形はかなり険しそうに見える。
さすがに不通区間内に道が存在しないならばどうにもならないが、描かれていないだけで、実は道があるという可能性に期待したい。

というわけで、県道228号の起点から探索をスタートしよう。




不通県道の西側 「起点〜高瀬橋〜×」


2014/3/27 14:45 《現在地》

やって参りました、起点です。

古座川沿いの「古座街道」こと県道38号は、古座川流域の交通量を集めて海沿いの都市部へと往来させる重要路線である。
だが、そこから分かれる県道228号に対しては、本当に最低限度の案内しかされていなかった。
ツタに絡まれてよく見えない分岐用のミニヘキサが、本当に控えめに置かれているだけ。

早速右折して探索を開始する。
探索の足は、もちろんいつも通りの自転車だ。




不通区間で分断されている県道228号の起点側には、わずか300mしか道が描かれていない。
そしてこの300mの半分を担当するのが、昭和56(1981)年竣工という高瀬橋だ。
古い地形図や「角川日本地名辞典」によると、先代の高瀬橋は昭和34(1959)年に現在地の少し上流に架けられていたらしい。
現在の橋は、たぶん県道228号の整備がもたらした恵みなのだろう。1.5車線ではあるが、立派な橋だ。

この写真は高瀬橋を少し下流側から撮影したものだが、高瀬集落の地面に対する桁の高さが目を引いた。
そしてこの高さが決して伊達ではないことは、橋脚にマーキングされた増水量の表示が物語っている。
下から4m辺りに「注意」、4.5m辺りまで来ると「避難」となり、6mを越えると「危険」だという。



高瀬橋を渡ると、道はそのまま高瀬集落の地面へ下っていく。
山を背にした谷川の扇状地に広がる、箱庭のような美しい集落である。

市販の地図の多くは、県道228号の路線指定が集落の中ほどで唐突に終わるように描いているが、最も正確な表示と思われる最新の地理院地図だけは、集落へ入らず、橋の袂から左折する堤防道路を県道としている。
どちらが正確かは不明だが、ここでは後者の説を取ることにした。




ここから150mほど続く堤防道路が県道228号らしいが、実際に走ってみても県道らしいものは何もない、ただの砂利道であった。

そして前方に見える緑の山肌が、不通区間の在処となる。
古座川の流れが山裾を激しく洗っており、切り立っているのが、ここからでも良く分かる。



14:49 《現在地》

県道は、地図の上からも、実際の地上からも、忽然と姿を消してしまった。
堤防道路が敢えなく消滅した後も、なんとか適当な道を辿って、県道の進行方向である下流へ進んで来たが、ご覧の空き地を最後に一切の道が消滅。
前方の杉の植林地の中にも、林内作業用の歩道程度はあるだろうが、県道とはいえないだろう。
まあ、道が途切れているのは、未開通区間なのだから当然だった。

このまま闇雲に森を歩いて下流へ向かっても、道路を探索するという目的からははずれてしまうので、高瀬側の県道探索は大人しくこれで終わる。

結論。

県道228号の起点側は、本当に高瀬橋だけの区間だ。
それ以上整備する気は、今のところ全くないようだ。



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不通県道の東側 「宇津木橋〜古田〜×」


14:57 《現在地》

一旦起点へ引き返し、今度は古座川左岸の県道38号を下流へ向かう。
不通区間の先へと回りこみ、逆から攻めるためだ。

この迂回に使った県道38号も川縁を通っており、至る所から対岸を観察出来た。
その都度、対岸に道がないか探したが、始めて成果を得たのは、不通区間中間地点の月野瀬温泉付近だった。

そこには山水画を思わせるような巨大な岩峰がそそり立っていたのだが(この辺は古座峡と呼ばれる景勝地の一部だ)、その付け根辺りに、明らかに人工的と思われる“ライン”が見えた。
道なのか、用水路なのか、それ以外の何かか?

地図には歩道を示す破線さえ描かれていないが、改めて地図を見ると、その先には水田があり、やはりあれは道なんだと考えるに至った。
あとはそこが県道である証しを得られるかどうかだが、それは現地へ行っての宿題だ。 まずは行こう!

うっふん!ワクワクしてきた!


15:03 《現在地》

これで不通区間の迂回が完了。
3kmぶりとなる、県道228号との再会である。
県道38号との位置関係は、この“H”な青看をご覧頂きたい。

青看の“右下”の道が、破線になっている。
これは不通区間であることをアピールする、青看設置者なりの親切心なのだろうか。
行き先表示が無いだけでも、だいたい怪しい…。




“H”な青看は、1枚だけではなかった。
今度は県道228号の側に立っている青看である。

こちらはさらに怪しい内容になっている。
なんというか…、付け足し臭がひどい。
県道228号の不通区間は付け足し。県道38号のヘキサも全て付け足し。しかも3つあるヘキサの大きさが全部違うという、だらしなさ。
このヘキサの大きさのせいで、どうでもいい不通区間が妙に目立っているのもまた愛嬌だ。




これもほぼ同じ場所にあった青看。
青看は青看でもあまり見ない形式で、「規制予告」というタイプだろうか。
駅の表現方法が、普段の青看のルールとかけ離れていて面白い。
うねうねした川がお茶目。



“H”の中棒にあたる所に架かっている宇津木橋
県道38号と県道228号が重用している。
そして、古座川町と串本町の町境である。
橋上から下流を眺めると、2.5kmほど離れた海まで見通す事が出来た。

旧地形図や「角川日本地名辞典」によると、この橋は昭和56(1981)年に、「県道のバイパス」として初めて架設されたらしい。
高瀬橋の翌年に完成しているのは、偶然だろうか。
偶然でないとしたら、県道228号の整備が当時盛んであったことの証しなのかも知れない。



15:04 《現在地》

宇津木橋を爽快に渡りきり、“H”の右岸側にある交差点にやって来た。
するとここにも立派な青看が設置されていた。

県道228号が、とても不憫な描かれ方になっている。
でも、これが身の丈にあった表現なのだから、仕方ない。




県道228号の東側区間へ入ると、即座にヘキサが出迎えてくれた。
この県道で初めて目にする単独のヘキサである。
ここが県道であることを証明してくれているが、果たしてこの元気は、いつまで続くのか…。

とりあえず、今のところは2車線&片側歩道の完成された県道である。
しかし、絶対に行き止まりだと分かっているからこその虚しさがあった。
薄れて消えてしまったままのセンターラインなどは、そんな虚しさの上乗せだった。



15:06 《現在地》

宇津木橋から300mほど来たところで、呆気なく道はしょぼくれて、ひびだらけの1車線道路に変わった。
そして、ちょうどこの辺りが古座川町と串本町の町境である。
宇津木橋を渡って古座川町から串本町に入ったのだが、また戻る。
しかし町境を示す標識が無いうえに、地形的にも境を感じさせるようなものは何もない場所だ。

ちなみに、平成17(2005)年の市町村合併まで、串本町ではなく古座町といっていた。
それまでは、古座川町と古座町という1文字違いの町が隣り合っていたのである。
しかも二つの町の役場は2kmと離れていなかった。
送付物の宛名などで混乱があったものと思う。




宇津木橋から600mほどで、突然大きな施設が現れた。

この建物と敷地はかなり巨大で、地形図上では「道が途切れた地点」から、川沿いに200m以上続いている。

いま重要な事をサラッと書いた。

地図の上では、ここで道が途切れているのである。

「県道が描かれていない」のではなく、「道そのものが描かれていない」。

だが、「地図にない道」が、今のところは山際に沿って続いている。

なんか、怪しいが。




更に進むと… なんということでしょう!

道に屋根がかかっています。

道に屋根がかかっているんですよ!

県道だったと思うんだが、いつの間にか施設に同化してしまっている?
でも、ここ以外には先へ進めそうな余地はないし…。

和歌山県の「道路台帳」で、本当にこの屋根の下が県道に認定されているのかを調べてみたいものだ。

ちなみに読者さまからの情報によると、以前ここにあったのは製材所だったそうだ。その頃から、こんなだったのか?



なお、現在地は上記の通りである。


この余りにも「公道らしさ」とかけ離れた「屋根下の道」が、

まさか本当に県道に続いていたとはな……。


いまもって、驚きである。



潜り終えた「屋根下の道」を振り返る。

一応は車道だが、軽トラより大きな車は、入口左の柱に接触して通れないと思う。
こうした直角カーブが、ここと、このすぐ先と、シケインのように2回連続していて、
そこまで抜けるとようやく――



平穏な? 川沿いの道になった。

忘れられないのは、ここですかさず出迎えてくれた1枚の看板だった。



 これより先、才ノ谷までの道路については、水道管埋設のため、地主のご協力を頂き出来たものであります。
 県道敷としては、幅一・五メートルで、それ以外は私有地となっております。
                    和 歌 山 県
                    古座川水道企業団

やっぱりここは、
県道だった!