旧口野隧道  第6回

所在地 静岡県沼津市〜伊豆の国市
探索日 2008.2.26
公開日 2008.4.13

 新たなる地平

 風を探って


2008/2/26 9:35

 水深最大5m(推定)、水没延長10m。

生涯初の、ライフジャケット着用による洞内水泳を実行し、これを渡る。

幸い、対岸側は上陸しやすい緩斜面で、元の洞床の高さに達していた。
足が確かな水底に着いたときの安堵が引き金になって、脳内に幸福物質が大量放出!
勢いよく水から上がりながら、顎がガクガクするほどの興奮に私は酔った。




 ライフジャケットを中心に全身から音をたてて水が落ち、乾いた洞床をあっという間に水浸しにした。
数秒して通常の感覚が戻ってくると同時に、激しい寒さを覚えた。
当たり前だ。
ライジャケの下には綿の長袖シャツを着ているのみ、下半身もズボンもパンツもぐっしょりだ。
これからは、このスタイルで探索を続けなければならないことも、覚悟の上。
今になって考えれば、ビニール袋に着替えを入れて一緒に泳げば良かったんだけど、そこまで頭が回らなかった。

 まあいい。
ずっとクルマの中で休遊装備になっていたライジャケの真価が確かめられたし、今後の探索の幅も一つ大きくなった。
もう、この奥に何の成果もなくなって、取りあえず今日は満足できそうだ。




 見たか! コウモリどもー!!
人類を甘く見るなよ! 文明の利器をにゃめるなよ!

…っつうか、白い壁にポツポツと発疹みたいに取り付いたコウモリ軍団、ちょっち気持ち悪い…。
何でそこにそんなに密生してるのさ?! そこキモチイイの?


 なお、ほとんど全ての装備品を対岸に置いてきている。
現在持っているものは、着衣の他に『Digital現場監督DW-5G』(デジカメ)だけ。
最近はほとんどお休みばかりの現場監督も、今日ばかりは本領発揮でサイコーーだね!!!



 ってなるはずだったのに……

 どうも私の現場監督は“近視”を患ってしまったのか、暗いところで焦点がてんで合わないのである。
明るいところではちゃんと像を結ぶので、おそらくオートフォーカス測光が壊れているのだろうが、治す銭もないんだよね…。

 しゃーない。
しばらくピンぼけ画像だけど、雰囲気だと思って我慢してね!





 それではこれより、 第一洞

  水没エリア奥の探索を
   開始するッ!!







 おうっ!

  いきどまり?!







  セーフ セーフ…。


 その直前、右に分岐する、登りの狭いスロープがあった…。


 そういえば、足元に電線のような配線が…。




 奥へ繋がる坑道の進路は一定せず、右に左に直角曲がりを繰り返す。
しかし、さほど奥行きのある分岐もないので、テンポ良く一筋のラインを見出していく。


 そして、ここまで来てようやく確信する。

 間違いなくこの穴には風が吹いている。
やはり、どこかへと通じている!




 風は、この先から吹いてきている。

そして、また例の配線が足元に…。

 なお、水泳以前の洞内写真に較べて、どの写真もとても明るく写っているが、これも現場監督のパワーである。
とにかくフラッシュの光量が凄まじく、普通のトンネル程度の広さならば昼間のように明るく撮影できる。
蜘蛛の巣のそばなんかで気がつかず焚いてしまうと、糸が爆発するように燃えて消し飛んでしまうくらいだ。(いやマジで、びっくりするから)
明るいフラッシュは現場カメラとして必要な機能なのだろうが、"情感”も少しは欲しい廃道・廃隧道での撮影には…ちょっと向かないかな…笑。






 来たっ!!

 出口!!!




スポンサード リンク
ちょっとだけ!ヨッキれんの宣伝。
遂に「山さ行がねが」が書籍化します!過去の名作が完全リライトで甦る!まだ誰も読んだことの無い新ネタもあるぜ! 道路の制度や仕組みを知れば、山行がはもっと楽しい。私が書いた「道路の解説本」を、山行がのお供にどうぞ。 ヨッキれんやトリさんの廃道探索シーンを一流のスタッフが命がけで撮影した、日活の廃道ドキュメンタリーシリーズ第1弾


 どこかに出たぞ ここはどこ? 


9:39

 またも出口は崩れていて、這い出すようにしなければならない。

まるで土から誕生するように、岩の亀裂から、曇天の元へ。・


 私が地上へ戻った穴。(→)

洞内の歩いた距離や方向なんかを考えれば、ほぼ間違いなく山の裏側、伊豆の国市側へと来ているはず。
これは前に「第二洞」で達成していることだが、「第一洞」の貫通は覚悟したものが遙かに大きく、嬉しさも段違い。

 それだけに、今のが「実は旧口野隧道でした〜」なんて言えたらどんなにスッキリするかと思うのだが。
…坑口の「山田」の刻銘や、洞内にきちんと安置された竣工記念碑など、そう考える材料は豊富…

 しかし、第一洞は生粋の丁場に間違いないだろう。
その全長は、碑文に刻まれた『十間』(約18m)からかけ離れている。
(最短で洞内を歩き泳いだ場合、行程長は100〜150mほどだったろうか)




 出たところはまたしてもジャングルだった。
石切場の古い露頭が周囲を取り囲んでいる。
そして、やはり麓の音が微かに聞こえる。

 いったいここはどこなのだ。

 全身びしょ濡れ、ライフベスト着用のまま、深い緑を掻き分け歩き出す。






 ん! 何かある。

 10mほどで、意外に呆気なく藪が晴れ、そこには青い屋根の建物と、緩やかな草の道が現れた。
第三洞から出た先で見た「煙を吐く工場」とは違うと思う。




 改めて、ここはどこなんだ?


地図を見る。




 どうやら、第二洞で通り抜けた鞍部とは隣同士の別の鞍部を貫通し、“煙の工場”の隣の谷戸に出て来たようだ。

 出会った道を右に行けば“青屋根”の前を通って国道へ降りられるに違いない。
 左に行けばどうだろう。もしかして、そこに口野隧道があったり…?




 まずは行動しよう。
仮にも2月の26日、しかも日射しナシ。
寒くて立ち止まってらんない。
じっくり地図を眺めて思索を巡らせる状況じゃない。

 左の登っていく方向へと歩き始める。
それは、幅1.5mほどの馬車道的な(深い意味はなく)土道である。クルマは入ってない。




 だだっ広い所に出た。
ポンカンか何かのとても枝振りの良いのが、数え切れないほど黄色い大きな実をつけていた。
ミカンだったら盗んで喰っちまったかもな。



 今の地形図だと、点線の道がここから多比へ峠を越えて描かれているが、それは右図の上下を比較しても分かるとおり、旧口野隧道由来のルートではないはずだ。
鞍部を一つ取り違えるような大胆な誤描が起きていない限りは…。


 それよりむしろ…

真に怪しきは先ほどの第一洞の辺りだったのでは?






戻ってみよう。



 幸い人目に付かなかったが、もし今の姿を人に見られたら、なんて思われるんだろうな…?

 もし貴方が、自分の家の裏山で、ライフジャケットヲチャクヨウシゼンシンビショヌレノオトコを目撃したとしても、決して通報しないであげてください。
それは、古道を愛するただのオブローダーです。
決して不審者や、妖怪の類ではありません。

そういやついこの間も同じ静岡県の大崩海岸の小浜で、白昼「海河童」が出たらしいな。公民館の辺りの道に点々と濡れた足跡が付いてたって…。 

 ともかく、第一洞へ戻ってきた。
戻ってきたついでに、また泳ぎに帰るか。いい加減寒すぎてやばい。




 第一洞坑口付近から、鞍部を見上げたもの。

残念ながら、そこに隧道らしいものは無い。
ただ、屏風のような険しい岩場と、その上に育つ高い木々が見渡せるのみである。


 …!

!!

!!





 ほ、掘割り?!


あそこに見える深いスリットは、掘り割りじゃないのか?!

隧道では無さそうだが、掘り割りと隧道はニアーな存在。 TOTTEMO! NEAR! 

にゃー!



 今すぐ行ってみよう!!









開削された旧口野隧道と思われる

異常に深い掘割りに遭遇。


地点は、隧道擬定地に百パーセント符合。

本当に出て来ちゃったよ…  キター