東京都にはおおよそ340路線の都道が存在しているが、このうち島嶼部に存在するものを除いた本数は約300本。
この中には、地方出身者である私の目から見ても、とても都内とは信じがたいような未整備の道が、何本か存在している。
そういった路線は、「東京都道」という言葉とのイメージギャップの大きさが受けるのか、或いは渋滞に日夜苦しめられる都民生活からの誤ったユートピア感に支えられているのか、他県の俗に“険道”と呼ばれるような路線以上に、特定のファンが多い。
一部ではファンの間では、そのような都道を指して「兎小屋程度の道」「兎がようやく通れるような道」という意味合いからか「兎道」と俗称されることもある。
今回は、そのような侘びしい都道の一つ、「東京都道165号伊奈福生線」の一部を紹介しよう。
都道伊奈福生線は、東京都福生(ふっさ)市の国道16号(東京環状)を起点に、同都西多摩郡日の出町の南縁部を経て、同都あきる野市伊奈(いな)地区に至る、全長9265mの一般都道である。
本路線の西半分は都市計画道路「秋多3.4.6」線に指定されており、既に関係自治体による都市計画決定を受けている。
このことからも分かるとおり、この路線は地域にとって重要な幹線道路たる位置に有るわけだが、現状では未改良1車線の区間が所々に残っている。
特に、首都圏中央連絡自動車道(圏央道・国道468号)日の出ICの西側から、路線終点までの区間には、非常に狭い部分が断続的に存在する。
今回はこの通称「伊奈狭区」の東側区間を紹介したい。
あきる野市の中心地である秋川駅周辺では、ここを南北に走る国道411号および東西に縦貫する本路線が再開発の中心的な存在となっており、いま路線改良(新道への付け替えや拡幅)の真っ最中である。
よって、数年後にはこの辺りに残っている狭隘区間は解消するものと思われる。
写真は、秋川地区に新しく出来た本路線である。
これと並行するようにして、旧来の都道が1車線で残っているが、そのレポートは別の機会に譲る。
とりあえず今回は、この素晴らしい道を西へ向けて進むことにする。
秋川の市街地を区切るものとして、巨大な掘り割りとして開通した圏央道がある。
このそばに日の出ICが存在する。
写真は圏央道を跨ぐ南三吉野橋。
ご覧の通り、この道の通行量は少なくない。
橋を渡ると沿道の景色は、都内では珍しい郊外的なものとなる。
だが、拡幅改良を終えたばかりの本路線を中心として、その両側には次々と新しい建物が造られつつある。
郊外型の大規模ショッピングセンターや医療機関、エレクトロニクス関連の工場などだ。
道は若い並木に区画されるようにして、見渡す限り真っ直ぐ西へと向かう。
交通量はそこそこ有るが、道はそれを感じさせないくらい広い。
いや、広い割に2車線しか取られていないので、だだっ広いと言う印象だ。
将来的にはこれと直行する幾つもの街路が造られる予定なので、やがて右左折帯などとなってこの広い道幅は活用されるのであろう。
そして、唐突に現れた 「この先路幅狭し通行注意」 の真新しい標識。
狭くなる?
何の予備知識もなければ、そんなことを言われても信じられないだろう。
なにせ、この景色である。
別に狭くなるような理由があるようにも思えない。前方山並みはまだ遙かに遠い。
笑
やっぱり狭くなるみたいッスね。
かなりしつこいし。
最初の予告が出てから、200m、100m、50mというような感じで、連続的に同じ文面(サイズ違い)の標識が出現。
しかし、そこまで周知徹底させないとならないほどの狭さって…。
なんか、楽しい予感が……。
ついにお馴染みの標識まで出てきちゃったぞ…。
相変わらず、バカみたいに広い二車線道路が続いているのだが。
…いや、
何かガードレールが遠くに見えてきた。
ムムム!
何か前方で車が詰まってる!!
車列の背後では、路肩から無理矢理中央線際に車を寄せようと、まずは道路標示の矢印、次いで実力行使のガードレールが路肩に現れる。
この車達の向こうには、一体何が?!
セマ━━━━━(゚∀゚)━━━━━イ !!!!!
すまん、ちょっとわざとらしく取り乱しました(笑)
でも、狭いな。
路幅が車道幅で5対1、全幅だと7対1くらいに狭まっている。
この、小さな交差点一つで…。
ちょっと無理あるだろ。 これは。
はっきり言って、このレポはこの場所が命。
この交差点を見せたくて書いたようなレポ。
私が山チャリ(つうかここは街だが)をしていて、どうにも笑いがこみ上げてくる場面ってある訳よ。
ここもそんな場所。 だって、ありえねーからこの狭まり方。
よく考えてみれって。
ここまで来たドライバーは皆、目ん玉ひん剥いてるって!!
都道、はっきり言って相手されてねーから。
みんな、右から来たら右折して奥へ。
奥から来たら左折して右へ。
誰も、こっから見て左の、
都道伊奈福生線には入っていかない。
え?
なんか、お前が立ってる手前の道も、なんかおかしくねーか って?
あはは、おかしいなこれ。
この道も、どうにかしてるだろこれ。
ただのあきる野市道だろうけど、無理ありすぎるだろ。
この舗装の狭さは。
絶対4輪車ははみ出るって。
「道路幅員狭し通行注意」って…いまさら。
「上まれ」 って何だよ!!
交差点の角にチャリを停め、ひとしきり交差点を眺め、車の動きを観察し、そして虚しく独りツッコミの数々を見舞う。
だが、我が山チャリに終わりはない! (←ここで言う台詞か?)
やがて私は、誰一人立ち入ろうとはしないその都道へと、勇気ある一歩を踏み出したのである。
たとえそれが、蛮勇と罵られようともだ!! (←いや、大したことじゃないだろ?)
うむ。
これは正統派の狭さだな。
畑によって道が区画され、その幅が決まっている。
土地本来の由緒正しい狭さというわけだ。
あれ、なんか来る。
なんだ。 車走ってるんじゃん。
しかし、一方通行の表示は特になかったぞ。
離合はどうするんだ… (ヒント:上の画像)
先ほどの交差点から始まる一連の極狭区間(幅員2m)は、約750mの長さがある。
その前半は畑の中をほぼ真っ直ぐ貫く道で、後半はチラホラと家並みのある中を走る。
ドライバーが緊張するのは当然後者であり、相変わらず所々に未舗装のものを取り混ぜて待避所があるが、その一部は利用者が勝手に空き地にタイヤを乗り上げて待避所代わりにしているような感じだ。(この写真の待避スペースとか)
左手の民家の裏手にはコンクリートの架線柱が立ち並んでいる。
そして、都内には珍しい平屋の駅舎やホームが見えてくる。
JR五日市線の武蔵増戸駅だが、こちらは駅裏側で、都道であるにもかかわらず、本路線からアクセスする術がない。
一連の区間の終わり。
ただし、本路線の終点までは次の交差点を突っ切って更に1200mほどある。
もちろん(?)そこも筋金入りの狭隘区間だが、今回私が紹介したいのはここまでだ。
…しかし、この交差点も酷い交差点だ。
これで一方通行でないのだから恐れ入る。
私は知っている。
ここが朝晩、結構な通行量のあることを…。
そして、日中であってもこの有様。(今来た道を振り返って撮影)
信号待ちの車が歩行者の余地もないほどぎっちり詰まっており、左折車はおろか、対向車さえ交差点に入れない。
下手に入れば、もうパニック?!
死んでるぜ、この交差点! この都道!
私はここに、 [都道伊奈福生線改良期成同盟一人会] を起ち上げたのである。(なお、翌日解散)