変なサブタイトルを付けてみたこのレポートだが、きっかけは右の地形図だ。
伊豆半島の西海岸に沿って走る国道136号は、ほとんど全区間に旧道が存在するという、旧道ファンにとっては天国のような道である。
地形図はその途中にある西伊豆町宇久須(うぐす)地区だが、ここに旧道の表記が途切れている箇所がある。
それは図の中央、現道の松ヶ坂トンネルに対応する短い区間である。
なお、松ヶ坂トンネルは昭和55年の開通なので、そんなに古いものではない。
旧道化してから比較的短い期間で地形図から消えた道に、何があったのか。或いは何があるのか。
それがこのミニレポートのテーマである。
それでは、問題の“消失地点”の500mほど手前の地点から、レポを始めよう。
旧国道上にある宇久須バス停からスタート。
すぐ目の前には、短い橋が架かっている。
親柱にはめ込まれた銘板によれば、橋の名前は「淀橋(よどばし)」、竣工年は昭和39年だという。
形としては平凡なコンクリート橋としか言いようがないが、
スゲー色してる。
欄干全体に深海のような濃い青色の塗装が、凝ったグラデーション付きで施されている。
綺麗といえば綺麗だが、なんの説明もないために、奇妙という印象はぬぐえない。
なぜこの色なのか。
まあいい、先へ進もう。
淀橋を渡ると信号のない丁字路があり、右折すれば現国道に出られる。
旧道を通る路線バスも、みな右折する。
しかし、旧道は明らかに直進だと思ったので、私も真っ直ぐ進んだ。
するとたちまち集落を外れた感じになり、道の両側はほとんど空き地ばかりになった。
そして更に進むと、「いたわりゾーン」なるものが「ここまで」だという標識とともに、淀橋よりもかなり長い橋が見えてきた。
見たことのない巨大な構造物を背負って。
なんだなんだ、あれ。
地形図には描かれてなかったぞ。
うっお!
す、すっげぇ…。
スペースシャトルの発射台?!(←私の中のイメージ)
手前に見えているコンクリートの壁は海岸の防波堤なので、間違いなくあの巨大な構造物は海上はるか沖まで突出している!
…旧道は、一体どうなっちまってるんだ…。
2008/2/3 12:55 《現在地》
とりあえず、視線を陸に戻そう。目の前の道を見よう。
現れた橋は先の淀橋より一回り狭く、そして“普通の色”をしていた。
親柱もなぜか2本しか残っていなかったが、橋名が「宇久須橋」で、竣工年が昭和7年だと言う事が分かった。
同じ旧道上の近接した橋ながら、こちらはだいぶ古い。
「永久橋」という触れ込みでコンクリートの橋が地方の集落にも普及を始めた、そういう時期の橋である。
3径間の宇久須橋で宇久須川を渡ると、いよいよ旧道は先ほど私の視線を奪った“巨大SF構造物”へ近付くわけだが、その結末は予想通り…。
鉄壁で「立入禁止」。
流石に、これを無視して立ち入ったら、警告なしで射殺されても文句は言えない雰囲気(オイオイ…)なので、ここは大人しく引き下がる。
とはいえもちろん私腹を肥やし……じゃなく、雌伏を期して、立ち去るのである。
地形図に旧道から削除された理由は、そこが道路以外の用途に転用されたからだろうと判明したが、まだその全貌が明らかになったわけではない。
今度は国道を経由して、反対側へ回り込んでみよう。
宇久須川の堤防上にある道から、現国道にアプローチ。
新宇久須橋(昭和54年竣功)と松ヶ坂トンネル(昭和55年竣功)がセットで見えてきた。
松ヶ坂トンネルは全長235mで、町中のトンネルらしく、歩道を完備していた。
特に興味深い出来事もなく、深田地区へ出る。
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13:03 《現在地》
松ヶ坂によって宇久須と画された深田地区。
大字は変わらず宇久須だが、深田沢という別の小河川の河口に開けた、地形的には別個の“浜”である。
そしてこのさほど広くはなく、国道はあっという間に通りすぎてしまう深田浜には、宇久須温泉や宇久須キャンプ場といった観光地が用意されている。
今日は2月の冷たい雨(これが数時間後に大雪となり、伊豆半島内陸部に交通大パニックを引き起こしたことを覚えている人もいるかも知れない)なので、お外をブラブラしているのは私だけのようだったが…。
地形図から消えた旧道を求めて浜の方へと向かうと、良く整備されたキャンプ場の向こうに、凄まじい絶壁にへばり付くように付けられた舗装路が見えてきた。
廃道おいしいです!
思わず目にハートが点灯する風景だった。
バナナカーブを描くキャンプサイトが、実は伊豆西海岸の動脈として活躍した国道跡とは、なかなかオブローダー冥利に尽きる立地である。
結構お洒落な感じに手入れがされているものの、キャンプ場と廃道との境目については、少々カムフラージュへの努力が足りないようで…
なかなか露骨に“柵”が露出していた。
待ちに待った(?)廃道遭遇だが、ここはちょっとだけ勿体ぶろう。
敢えて廃道へは行かず、管理者の期待に応えて、右の浜へ逃れてみる。
天気は良くないけど、波は驚くほど穏やかだ。
いかにも遠浅な弧状海岸の向こうには、伊豆市(旧土肥町)との境をなす大洞峠の稜線が直に海へ落ちる荒涼とした海岸線が見渡された。
鉢巻状に見えているラインは、そこにある旧国道である。
現国道についてはほとんどトンネルの連続だが、僅かに地上へ出ている区間が見えた。
公園のように良く整備された海岸線だが、海の方を見ている時以外は、常時廃道がチラ付きやがる。
気が散って仕方がないが、敢えてまだ我慢。
岬の先端に近付くにつれ、だんだんと海岸との比高を増していく旧道を、下から見上げる作戦を続行した。
そしてその行き着く先は…!
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