細田邸の庭先に敷設された、全長11.1m、軌間5インチ(127mm)の手回しハンドルを動力とする自走鉄道が、細田手漕軌道である。
2013年6月2日に、細田邸の庭先における第2番目の鉄道として開業して以来(前回のレポート)、庭先における貴重な移動手段として活躍を続けてきたのであるが、私が先日の秋田帰省の折に久々に彼の家を訪れてみると、この手漕軌道に予想外の変化が起きていた。
早速今回撮影した写真をご覧頂こう。
2015/6/14 12:41
あれ?
手漕軌道のレールが敷かれてないよ?!
え?
え?
ま、まさか……
まさかこれって…?
あ〜…
まずいな、これは…。
現れたミリンダ細田氏の衣装(特に帽子)とポーズと表情を見た私は、一瞬で察してしまった。
だって、これは明らかに、あの「鉄道廃線跡を歩く」シリーズの巻頭グラビアに度々登場された、晩年の頃の宮脇俊三先生をイメージしてるじゃないか。
嗚呼、なんということだろう…。
あんなに楽しかった手漕軌道が、まさかこんなにも短命で終わっていたなんて……。
大人も子供も夢中になって跨がっていた客車が、起点の細田家南奥停車場に残されていた。
良く見れば、車両の下には軌条(正式には軌框(ききょう))が敷かれたままになっている。
もちろんバラストも敷かれたまま。
侘びしさを感じる眺めだが、客車は雨ざらしにはされておらず、オーナーである細田氏の愛情がこもった波板により秋田の厳しい環境から守られていた。
また、機関車である「てトロ127黄色2012年式」も、物置の中で綺麗に保存されているという。
手漕軌道のせんろ跡全景。
かつて細田家南奥停車場を出発した手トロ牽引列車は、約8mの直線区間を力走して、奥の駐車場に隣接して存在した細田家南表停車場へ達していた。
だが既に南表停車場や駅間の軌条は撤去され、路盤跡も判然としなくなっている。
せんろ跡の踏破で難しい部分はないものの、本物のワルニャンがときおり現れて糞をしていくのがオーナーの悩みの種だという。
オブローダーならゴミを捨てないのは当然のマナーだが…。
撤去された軌框が山積みになっているのを見つけた。
特殊な材質なので雨ざらしでも錆びることはなく、その気になれば数分で再敷設も可能であるというが、
現在は諸般の事情により、運行を取りやめているそうだ。
しかしあくまでも休止であり、廃止したわけではないそうなので、将来の復活へ向けた模索を続けていきたいという、細田オーナーの力強いお言葉を戴いている。
以下は、細田手漕軌道の運転休止届けである。
休止理由: 沿線住民による、 用地転用を目的とした、 細田手漕軌道廃止運動が本格化し、 話し合いの結果、 廃止扱ではなく、 休止扱となった。 休止時期: 平成26年11月30日〜 再開予定: 軌筐である為、 ゲリラ的に再開する事は可能であるものの、 現状は、 用地を転用した行事が時折開催されている。
なお、細田邸最初の鉄道である細田手押軌道については、2010年の開業以来5年目を迎え、現在も健在であった。
並行路線である両者を比較すると、手押軌道にはゴミ出しの際のゴミ輸送という需要(大義名分)があるのに対し、後発で貨物輸送力も乏しい手漕軌道は旅客(遊覧)鉄道であったため、沿線住民(最大株主)には不要不急と見なされたのかも知れない。
いずれにせよ、私としては早期の復活を期待したいところではあるが、非常にデリケートな問題を孕んでいる畏れもあるので、軽率な発言は慎みたい。
完結