かつて当サイトが紹介した細田手押軌道の反響はもの凄く、その後は秋田県の地方紙である「秋田魁新報」にカラー写真付きで採り上げられたほか、秋田地方局のテレビ番組の突撃レポートを受け、その際には美人レポーターを乗車させるという快挙も果している。
あれから丸2年が経過した今年6月に、この手押軌道のオーナーであるミリンダ細田氏の家を探索に誘うべく訪れた私は、そこで新たな鉄路に出会う事となった。
まずは衝撃の遭遇シーンを、前回同様に動画でご覧頂こう。
2013/6/5 10:25
ミリンダ細田氏の自宅に、従来の軌間381mmナローゲージを上回る細さの
スーパーナローゲージが、敷設されている!しかも、今度は何と
そして今回もまた、“朝のゴミ出し輸送”を行っている…。
実用軌道であることをわざとらしく世間に訴えかける姿は、相も変わらず白々しく輝いて見えた。
6月に入って敷設なったばかりという、まだまだ真新しい軌条。
軌間は5インチ…すなわち127mmとのこと。
人間が乗車出来る軌間のギリギリに近いらしいが、従来あった「手押軌道」同様のバラスト軌道となっている。
なお、この軌条は枕木と一体化した構造を持つ、いわゆる軌框(ききょう)と呼ばれるタイプで、材質はステンレス鋼材であるそうだ。
したがって経年と共に錆び付く心配もなく、ほとんどメンテナンスフリーとのこと。
バラストを軌条の下に充填して、レベルを保つ保線作業中の細田氏。
人物やショベルと一緒に写ることで、スーパーナローの細さが際立って見えるだろう。
なお、本軌道は常設されている手押軌道とは異なり、比較的手軽に撤去や再敷設が出来るそうだ。
そのため、線路敷を共有する“他の事業者”から「おかたづけ」を要請される場合があるのが、新たな悩みの種だという。
写真は本軌道の終点である細田家南裏停車場の全景である。
単線でホームは無く、終端の先にはコンクリートの壁面と溝があるので、これ以上の延伸は困難と見られる。
なお、写真奥には今回全線にわたって並行路線となった「手押軌道」の細田家“北”裏停車場が見えている。
同駅は従来まで細田家裏停車場と称していたが、このたびの手漕軌道開業に合せて駅名を一部変更したそうだ。
続いては本軌道の起点、細田家南表停車場だ。
こちらも単線でホームは無いが、設置されている車止めはコンクリートブロック製の頑丈なもので、車止標識も完備している。
これは当駅をオーバーランすると、即座に未成線区間へ脱線してしまう事態を避けるためである。
現在のところ営業線と未成線区間はレールが締結されておらず、間に小さな段差が存在している。
将来の延伸計画上では、この段差の克服が最大の土木的困難と見られている。
なお、未成線区間の先には秋田市道が存在しており、これ以上の延伸(併用軌道区間の敷設)は困難であろう。
続いて、当路線に在籍している車輌を簡単に紹介したい。
写真は細田家南裏停車場に停車中の標準編成列車である。
手前の車輌は、当路線の象徴であり路線名ともなっている「手漕ぎ」を動力とする機関車で、形式名は「てトロ127黄色2012年式」。手押軌道の車輌と同じく、せんろ商会製だ。
奥の車輌は「5人乗り緑色客車」で、某鉄道事業者から借入中のものだという。
新造車である機関車「てトロ」と、年季の入った客車の組合せが、なかなかローカル線じみていて味わい深いと思う。
てトロが前後に備える連結機構は、朝顔式の本格的なものとなっており、緩衝のバネも備えている。
てトロの光沢を放つ美しい動輪。
(手漕ぎ動力は、チェーンの内部機構によってこの車軸を回転させている)
車体重量は約15kgあるが、僅かな勾配や少し強い風の力でも動き出すほどスムースに回転する。
また、最小曲線半径1.5mの急カーブを走破することも出来るが、残念ながら全線直線である本路線でその運転性能を発揮する機会は無い。
誰もが青春の思い出を彷彿とする、愛くるしいサドル運転席。
当然、一人乗りであるが、。客車とは違いサスペンション付きで乗り心地も良く、高さも調整できる優れた運転席といえる。
まるで、サドルである。
そして、シンプル・イズ・ベストを体現した、てトロの運転装置。
本車輌の手漕ぎ機構は、自転車のペダル同様のメカニズムでこの2本の手回しハンドルを回転させることにより実現される。
しかも前進・後退だけでなく、減速(ブレーキ)機構も兼ね備えている優れものだ。
操縦方法は至って簡単。
手回しハンドルを順回転させると前進、逆回転で後進、回転に制動を与えるとそのままブレーキとなる。
注意点は、走行中その速度に合わせて手回しハンドルも回転しているので、高速になりすぎると制動時に手を打つ事がある点だろうか。
この車輌は市販されています。詳細はせんろ商会サイト内の紹介ページをご覧下さい。
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← 手漕軌道の終点から起点を望む。
営業線の全長は11.1mで、全線が単線非電化である。
→ 手押軌道に手漕軌道が加わり、ますます賑やかになった細田家の路線図。
このままだと、いずれは家を取り囲むように線路が敷かれそうである。
また、本人もさらなる延伸計画という名の妄想を常に抱いているそうだ。
さて、それでは細田運転士の準備が整ったとのことですので…
引き続き、細田手漕軌道の運転風景をお楽しみ下さい。
………。
なりきってるなぁ…。
楽しんでいる人をとやかく言うのも気が引けるので…
なぜタブレットを扱う必要があるのか
とか、そういう無粋な事は言わないでおこっと。
続いて、私が運転士になってみたのが、次の動画。
はっきり言って…
めちゃくちゃ楽しい!
これは、想定外の楽しさだった。
普段の道路上での(車や自転車の)運転体験とは全く異なる、
レール上ならではの羽根を引くような低抵抗走行の気持ちよさは、
まったく筆舌に付くし難いものがある!
ここには多くの男子(そして女子も)が心のどこかで希求しつつ、
実現不可能であると諦めてきた、「鉄道を操縦する」という楽しさが確かにあるのだ。
ご子息が取り憑かれたように一日中往復運転を繰り返しているというのも、頷けるのだ。
馬鹿にしてごめん。 大人でもすっごい楽しいわ!
こんな絵面でも、楽しいんだから、仕方がない。
……仕方がない……。
今回も、細田氏からいただいた「せんろデータ」をご覧頂こう。
相変わらず楽しんでるなぁ、細田さん…。
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