この橋の素性は知らない。名前も知らない。
ただ、私が子供のころからずっと架かっていたし、しばしば“山チャリ”の通り道にあったから、特に意味もなく何度も渡ってきた“寄り道”橋である。
もうかれこれ20年以上はその姿を見てきたが、それはいつまでも変わらずあり続けるものだと、なんとなく思っていた。
もちろん何の根拠も無くね。
橋は最新の地理院地図にも記載されている。
現場は秋田市の東部郊外、旧河辺町内の三内川沿いで、旧河北林道から変わった秋田県道308号に面している。
2014/11/1 7:02
別の探索へ向かう車での移動中、いつもの橋が目に留まったが、車内にいた3人全員が、「今日の橋はいつもの違う」と気付いた。
それで予定外ではあったが、県道に車を止めて、吊り橋へ立ち寄ることになった。
左端に見えるガードレールは県道のものだ。
私個人としては、おそらく2年ぶりに目にした、無名の吊り橋。
前に立ち寄った時よりも踏み板が朽ちている感じがしたが、それでも「通行止め」にはっているわけではなく、柵もロープも何もなかった。
そして対岸には、昔と変化の無い1軒の家屋。
民家ではなく畜産関係の建物だと思っているが、実際に確かめたことはなかったりする。
いずれあそこへ出入りするためには、どうしてもこの橋を通らなければならないし、反対に、あの建物の他に橋を渡って行ける場所も無い。(以前は水田もあったが、今は耕されていない)
吊り橋が渡っている三内川の様子(下流側)。
この日はやや水量が多く、川幅いっぱいに透き通った水が流れていた。
川の音に水底の石が動くゴロゴロという音も微かに混るほどだ。
見ての通り綺麗な、色々な魚も捕れる、恵みの川である。
そしてこれが、我々の足を止めさせた
いつもと違う眺め(遠景)。→→
なんか、壊れてる。
そして、壊れたところに板が渡されているようだ(!)。
さっそく橋の上へと躍り出た3人。
いわゆるヨッキ、いわゆるミリンダ、いわゆるシバニャン(柴犬)である。
この3人は、欄干もない濡れた板敷きの橋へ躊躇いなく立ち入るが、もちろん踏むべき場所は弁えている。
本橋には踏み板の下に3本の主桁があり、その上だけを踏むことを心得ているのである。
既に踏み板だけでは体重を支えきれない畏れが高いほど老朽化していた。
水面との高低差は小さいので、万が一橋から転落するようなことがあっても、命まで奪われはしない。
それが分かっていても、落ちるような無様な真似は絶対に避けたい。
朽ちた木材の表面は、雨水を受けてかなりの滑り気を見せており、あくまでも歩幅を小さく慎重に歩みを進める。
橋の幅的に、かつては猫車や自転車、さらに郵便バイクくらいは通ったかと思うが、今はもう歩いて通るのが限度である。
橋の長さは、おおよそ30m。
その最後の5mほどが、おそらくは自然に朽ちて、落ちていた。
だが、この橋は死んではいないのだ。 修理されていたから。
でもこの修理って…
明らかに ヤバイんじゃ?!
絶対これ、左右に揺れるでしょ?
俺には分かるぞ、揺れるでしょ? これ、揺れまくりだよね?
しかも、真ん中にあるので、完全な平均台だし。手を触れるべき場所が無い!w
ま、まあ、
万が一失敗して落ちても、水に浸かった葦原にぬかるむだけである。
きっと、トラウマになるだろうけどな。橋から落ちたという経験が。
私が先頭になって、ひとりずつ、 行く。
すた すた すたすた。
最初は橋が狭いというだけで、大きな揺れはなかった。
だが
案の定である。
この構造が揺れないはずがない。横揺れだ。激しい横揺れ!!!
ぐぐぐ… ぐぐ…
耐える。 黙って耐える。
耐えていると、すぐに振幅が小さくなり、やがて止まってくれた。
風が全くない無風状態であったことに救われた!
その状態になってから、意を決して“後半”の踏み板へ足を進める。
細い…。
嫌がらせかと思うほど、細かった。
だが、この細さでは立ち止まっている方が危険。
速やかに歩む。この補修を行った人は、かなりこういうのに慣れた人らしい。
無事渡りきった。
そして振り返ると、なんとも手作り感満載である補修の全容が見て取れた。
荒縄で補修用の板を固定し、さらに横揺れ防止を企図してのことだろうが、
荒縄は落下してしまった桁の一部とも結ばれていた。
(しかし、それにさほどの意味があるとは思えない)
結局後続の2人は。横揺れが気持ち悪いという言葉を残して、
渡りきることなく引き返していった。
細田氏は踏み板に対して横歩き(カニ歩き)をしていたが、
明らかに横揺れに対しては不利な渡り方であった。
渡りきった所で、私にとっての何もないことは知っている。
だからすぐに引き返した。しかし、橋が補修されていた事実は、
今もこの土地に往来する人が居ることを教えていた。
果たして、この橋の将来は……。
最後に、この橋を一往復してみる動画を撮ったので、お暇ならどうぞ〜。↑
完