読者の皆さまへ |
「山さ行がねが」は、アマゾンアソシエイトなどのアフィリエイト収益によって運営されています。多くの読者様が日常的にAmazonなどのオンラインショッピングを利用されていると思いますが、その際に当サイトに設置された 【リンク】 を経由して頂くことで、リンク先での任意の商品の購入代金のうち数%が収益化されます。当サイトを継続してご利用される読者様には、ぜひ御協力いただけるよう、お願い申し上げます。 |
2022/4/8 16:35 《現在地》
“白い崖”をくぐり、それから“黒い崖”をすり抜けた。
そんな思わず名付けたくなるような印象的な大岩壁を2つやり過ごした先に待ち受けていたのは、決して空を映すことのない滝壺へ落ちる地底ホールのような滝と、その滝を見下ろす岩壁を取り巻く“低い石垣”を持つ道だった。
とても低い石垣だ。
高いというなら分かるが、低い石垣に、そんな強調するような価値があると思うか。
普通はないのだが、この低い石垣の積まれている場所が尋常と思えない崖の縁だから、やはり特筆したい場面である。
チェンジ後の画像に赤くハイライトした部分に、低い石垣が積まれている。
その石垣の下はオーバーハング気味に滝壺へ直落する突兀とした崖で、おそらく人の手が加わったことはない。
一方で、石垣に守られた路盤より上の崖は、この道を通すために人の手である程度削られたものだろう。
この道は、トロ道(軌道運材)となる前に、木馬道だった時期があるとされるが、そのような利用方法の変化に伴って、例えば道幅を広げるとか、より大重量に耐えるように改良するといった目的で、低い石垣が後補として整備されたのかもしれない……と、想像した。
そしてこれが、その低い石垣の上にある道だ。
意外と言ったら、この道への「信頼度なさ過ぎ」がバレてしまって恐縮だが、これが非常に綺麗な状態で残っていた。
おかげで、恐い思いをすることを、
ほんの少しだけ先延ばしに出来た。(白目)
君子危うきに近寄らずを忘れ(I'm not KUNSI)、路肩の低い石垣の縁に近づいて眼下の神之谷川……私が地底の大ホールのようだと表現した……を覗き込んでみたのがこの写真。
高いことは高いのだが(軽く足がブルッちまった)、何よりその薄暗いことに怖さを駆り立てられた。
まだ間違いなく谷の外では日が照りつけている時間なのだが、私のいる高さで既に“日没後”の暗さであって、見通せない谷底附近は“夜”であった。
これは本当に洞窟になっている部分があっても驚かないぞ。
誰かこの谷の底がどうなっているか確かめた人はいるのだろうか。(運材中の事故で墜落した人はいるかも……)
脚下で滝を乗り越すと、直ちに先を見通せない右カーブとなっていた。
もともと見通しが悪かったと思うが、大きな落石のせいで余計に悪くなっているだけでなく、それを避けて先へ進むために谷側へ身体を寄せなければならないのが、地味に恐そうだと思った……。
やっぱり怖かった。
堅く締まった土斜面の横断で、かすかにケモノ道的な凹凸はあるが、うっかり滑ったら助からなそう。
足元で暗闇が、おいでおい〜でしてる〜〜♪ で〜かけ〜〜……たくない!!!
つうか本当にマジで暗いんだけど、谷底どうなってんの?! (←そればっかり言う)
……で、カーブ回って次のシーンは、動画で……(↓)。
進路を東へ転じるも、引続き洞窟のようなゴルジュ帯を見下ろす石垣道が続いていた。
特に、水面より起ち上がる対岸の崖の高さ、険しさは、本日最大記録を大幅に更新するものであった。
まさか、ここまで険しいとは思わなかったぞ、神之谷。
派手な名前は、伊達ではなかったか。
前の“白い崖”のように、頑張れば1枚の写真に収まる規模の景色については、永冨氏のレポートの予習効果が大きく働いていたと思うのだが、このように完全に私を取り囲んでしまう規模の景観となると、実際に身を置くことでやっと凄さを実感できた感じがする。
しかもここは常に見通しの利かない谷であるために、先の風景を遠景時点である程度把握するという予習も出来ない。
カーブを曲がるたび、万客の舞台の上でスポットライトを浴びる感じ。心を準備させてくれない! こんなの、楽しすぎだろ!
16:41 《現在地》
起点“カラッタニ”から約1.3km地点にある上述の“見通しの利かないカーブ”で、道の進行方向が従来の北向きから東向きへ90°変わった。
この写真はそのカーブと、動画を回しながら歩いた十数メートルを、振り返って撮影した。
進行方向が変わるのは道だけでなく、神之谷川も一緒だ。というか、谷が曲がっているから道も曲がっているというのが正しかろう。
ここまでくれば、地図上の軌道跡が現役の林道とぶつかる“ゴール目標地点”まで残りおおよそ600mとなり、既に全体の3分の2を終えた計算になる。
が、この残りの区間をシンプルな前進だけで終わらせることはできないらしいことも、永冨氏から予習している。
確か……、彼は最終的に神之谷川を渡って、その対岸をよじ登ることで、林道へ脱出していたのだけれど……。
いやいやいやいや無理だろ対岸とか!!!
こんなの登っていけるのはスパイダー●ンくらいだと思う。
まず、川まで降りてもいけないし。
とりあえず、まだその時でないということだけははっきり分かるな。
いずれ今いる道が進めなくなるときが来るのだと思う。それまではこの道だ。
それにしても、あの対岸の崖の白く見える部分って、鍾乳石だよね?
石灰岩から溶け出した炭酸カルシウムの堆積物でしょあれ。
洞窟内と違って雨で頻繁に洗い流されるから、つららみたいに成長したりはしていないと思うけど、あの白さは完全に鍾乳石だと思う……。すっごい…。
これも対岸の崖を撮影した。
鍾乳石により白化した部分が、滝や雨垂れのように上下に連なっているのが分かる。
人工物至上主義者の私にしては珍しく、人為的なものが全く含まれていない自然物に心底惹きつけられていた。
これは私がもともと廃道にハマる前、洞窟や鍾乳洞が大好きだったせいもあるが…。
しかし、そこからそのまま視線を上へ運んでいった先を撮したこの写真(↑)には、
思いがけないものが写り込んでいた(矢印の位置)。 というか、肉眼でもそれが見えた!
どでした!(方言)
2枚の写真を上下に繋げて1枚にした。
谷底から50m以上はあると思うが、矢印の位置に見えた。(見えている)
これ、道だよね?
平場らしきラインの上に、明らかにコンクリートの壁っぽいものが見える。
気づいたのが突然だったので驚いたが、ここから道が見えること自体は不思議ではないのかもしれない。
地図を確かめると、確かに現在地より見て対岸の高い所を林道が横断している。
林道はこれから急速に下ってきて、遠からず軌道跡と神之谷川を挟んで並走する形となる。
まるで探索のゴールの方から出迎えに来てくれた感じだが、ただし実際の地形は地形図の印象以上に険しかった。
16:44
対岸の険しさは引続きとんでもないことになっているが、軌道跡があるこちら岸は少し緩んだ。
馴染みのスギ林が再開し、とても長い石垣が、うねうねと陽光の注ぐところまで続いていた。
先行きに文字通り光を見て、ちょっとどころか、だいぶホッとした。
この石垣の下にも高い滝が落ちていた。
流れの乏しいゴルジュとゴルジュの間にある滝だ。
チェンジ後の画像は滝壺を真上から見下ろして。
この川に生き物がいるのかは知らないが、龍でも棲んでいそうな淵だった。
とりあえず軌道跡はしばらく無事な様子なので、こうなると俄然気になるのは、対岸絶壁上に見えた林道の行方である。
ちゃんと近づいてきているかな?
キテルキテル!!
あんな所に石垣が!!
つうか、見え方やばくね?
改めて引きのアングルで、両岸の道の位置を分かりやすくハイライトしてみた。
対岸の道が、凄まじい勢いで下ってきていることが分かると思う。
そして、見えているこの対岸の道は、明らかに地形図にある林道ではなかった。(さきほど【林道だと思った】のは誤り)
対岸の酷く険しい斜面上部の林道より低い位置に、地形図に描かれていない別の道が存在している。
先ほどから対岸に見えた道は全部、この“謎の道”の一部である。
この写真も対岸を見上げて撮影したものだ。
やはり高い位置に長い石垣を伴う道形がはっきり見える。
なお、画像上に示した「A」や「B」という表示は、先ほどの画像上に同じように示した「B」や「C」との接続関係を示している。
どの位置を見上げて撮ったのかを、この表示で判断してほしい。
下流側(標高的にはより高い位置)から上流側(急速に下ってきている)へ向かって「A」→「B」→「C」の順序である。
上の写真の中央付近を、望遠で撮影したのがこの写真だ。
物凄い崖の縁を左上から右下へ斜めに下って行っている。
石垣と急勾配。
この2つの要素で圧倒的に特徴付けられる道だと思う。
明らかに今いるトロ道とは勾配の次元が違っているが、石垣が多いことは共通している。
16:49
対岸の石垣、突然死ぬ。
(うそだろ…… 永冨さん、あそこを登ったってよ……)