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2023/6/7 9:16 《現在地》
入口から約2.1km地点に、「シュウトナイ線 第7号橋」の銘板を掲げた橋があった。
外観は第5号橋とそっくりで、銘板から分かる昭和39年5月という竣功当時の姿を留めているようだった。
第4号以来のシュウトナイ川を渡る橋で、資料によると、昭和39年竣功、全長10.8m、幅6mである。
この橋の4本の親柱には銘板が全て残っており、その組み合わせは、竣功年を記したものが2枚と、「シュウトナイ線 第7号橋」「シュウトナイせん だいななごうはし」であった。
また、橋の袂に白い工事標柱があり、平成18(2006)年から翌年にかけて何らかの工事(おそらく修繕や補強)が行われたことが分かる。
平成23(2011)年頃にこの区間を走行した方から、「当時、道東道の工事が行われており、ダンプが多数、道道665号から白音林道経由で工事現場に向かっていました。私もダンプの列の後ろに付かせて頂いた形で665号を走りました。その際に補強等が行われたかどうかは、残念ながら分かりません
」とのコメントをいただいたほか、平成24(2012)年6月に道道入口の地点で撮影されたストリートビューの画像を見ると、ガードマンが立っていることが分かった。
こうした証言や白音林道に関する情報を総合すると、この道道は道東自動車建設工事現場へのアプローチルートとして、2010年代の数年間、大々的に利用されていたことが分かった。
かつて炭鉱の閉鎖によって役割の大部分を終えてしまった道に、二度目の大きな活躍の機会があったのだ。長生きはしてみるものだと、道道自身も思ったかも知れない。
なお、問題の白音林道の入口までは、あと3kmほどある。
2.5km地点にも橋があり、順当に第8号橋を名乗っていた。
シュウトナイ川を渡るもので、昭和39年竣功、全長10.4m、幅6mというスペックだ。
そろそろ橋の出現に新たなコメントが思いつかなくなってきたが、現場においては数分と空けずに現われるのでテンポが良く退屈を感じる暇はない。
それなりに上流へ進んでいるが、相変わらずシュウトナイ川の流れは穏やかで、蛇行をちょくちょくショートカットしながら並走する道道でさえほとんど上り坂を感じないくらいゆったりしている。
こういう地形の緩やかさも、炭田地帯にありがちだと思う。(炭田はその成因が低平な湿地や沼沢地であったはずで、その後の地殻変動があったとしても劇的に険しい山岳地帯へと変化する可能性は低く、またそうなると炭田としての商業的成立に結びつかないのだろう)
続いては2.8km地点の第9号橋。
シュウトナイ川に架かる橋で、昭和39年竣功、全長10.4m、幅6mという、最早コピペで足りそうなスペックだったが、ちょっとした“発見”があった。
この橋の袂に立って下流側を眺めると……
旧橋の橋台らしき石造構造物が!
明確な旧橋の遺構を見るのは、第1号橋以来の久々だった。
間違いなく、旧橋の遺構だった。
発見した丸石練積みの石造橋台の対岸にも明確な築堤の痕跡があり、これらが対をなしていた。
桁や橋脚は全く残っていないが、橋台の形状から、ほぼほぼ木桁の橋だったことが分かる。
さらに、旧橋の前後にはそれぞれ30mくらいで現道と接続する旧道の痕跡があったが、その道幅は3m足らずであり、6mほどある現道と比べるといかにも古かった。
なお、この位置に旧橋があることは、意外であった。
というのも、昭和48年版の地形図には既に現在の道が描かれているのだが、その1つ前の版である昭和42年版だと、その旧道にあたる道は途中で終わっていて、ここまでは通じていないことになっていたのだ。
しかし現地の状況は、この地図の情報を覆し、旧道もこの位置まで来ていたことを物語っていた。
入口から約3km進んだ地点には、4kmポストがやはり反対向きに設置されていた。
5kmポストは見当らなかったので、6kmポスト以来の再会であった。
引続き、道の状態に悪化はなく、すこぶる順調である。
9:29 《現在地》
入口から3.3km地点にて、遂に数字にが大台に乗った第10号橋と遭遇。
日本中で橋の名前を見てきた私だが、道路橋において、この手のナンバリングの橋名が“大台”に達するのはすごく珍しいことである。(鉄道橋なら珍しくもないが)
やはり銘板によって橋名が利用者に開示されることが多く、そうでなくても利用者が直接手を触れる身近な存在である道路橋の場合、ナンバリングという味気ない名前を選ぶよりは、いろいろ凝った名前を探して付ける傾向が強いのだと思う。
そんななか、綺麗さっぱり第1号から第10号に至るまで、機械的なナンバリングに終始したこの道は、やはり特異だ。
そもそも地名が乏しい山中に整備された道であったことや、産業道路という効率優先の出自が、こんなネーミングに結びついたかと思う。
この先、ナンバリングがどこまで伸びるのかも、地味に楽しみになってきた。(日本一がいくつかは分からないが、もしかしたら目指せるかも?)
そして、この第10号橋にも、明瞭な旧橋の痕跡があった。
今度は、河中に突っ立つコンクリートの低い橋脚である。
また、両岸にも築堤の痕跡が残っていた。
配置的に、橋脚がこれ1本だけとは考えにくいが、流されてしまったのだろう。
チェンジ後の画像は、現道と旧道の分岐地点で撮影した。
左が現道であるが、その右側に平行する低い築堤が見えると思う。旧道の遺構であった。
基本的に旧道と現道は重なっており、橋があるところだけ別ルートだったようだ。
9:31
入口から3.7km、第10号橋から約300m、もう何度目か分からないシュウトナイ川の横断地点へ。
そして、現地には当然のように現われる、次なる橋の姿。
遠目に見ても、明らかに今までの橋と同じ形の親柱や高欄がある。
この橋が第11号橋という名前であることは、もはや近づいて確認するまでもなく明らかだった。
裏をかかれるヨッキれん!
「第2ボックス橋 Dai 2 Box Bridge」
それが案内標識によって開示された、意外なる本橋の名であった。
なお、「ボックス橋」というのは、おそらくボックスカルバートのことを指していると思われる。
再び裏をかかれるヨッキれん!
全然ボックスカルバートじゃない!!!
どこからどう見ても普通の桁橋であり、第2〜第5および第7〜第10号橋と同じ形状の桁だった。
なんでこれがボックス橋と命名されたのか。それに、なぜ第1ボックス橋がなく第2ボックス橋なのか。
謎が深い。
そして、謎だけでなく、闇も深い。
なぜかこの橋の四隅の親柱からは、全ての銘板が取り外されていた。
自然に脱落したとは思えなかった。
私は思った。
本当は「シュウトナイ線 第11号橋」という銘板があったのではないかと。
しかし、この橋を「第2ボックス橋」と名付け、そのような案内標識を設置してしまった現在の道路管理者が、この不一致を隠すために、親柱から銘板を取り去ったのではないかという疑惑…。
なお、資料(2018年度全国橋梁マップ)でも、この橋は確かに「第二ボックス橋」という名前で、竣功は昭和40(1965)年、延長10.5m、幅員6.2mとなっていた。
現橋の“謎”と“闇”の影に隠れるように、この橋にも旧橋の痕跡があった。
20mほど下流の川底に、多連式木製橋脚の基礎が転倒状態で残っていた。四本の柱を並べたものであったようだ。
第二ボックス橋を渡るとシュウトナイ川の蛇行が収まり、橋の連続出現も終わった。
道は依然として平穏であり、ヒグマ出没の危機感こそ常に持ってはいたものの、周囲の森の見通しも悪くはなかったので、しっかり音を鳴らしながら進むことで、恐怖心はだいぶ抑える事が出来た。
そして入口から4kmの地点で、残り3kmを知らせるキロポストと出会った。
残り3km…… ようやく距離の上でも後半戦だ。
9:37 《現在地》
入口から約4.6km、第二ボックス橋から0.9kmぶりの橋が現われた。
果たして今度の橋はなんて名前なのか。
もはや読みが通じない状態であったが、その橋の様子もこれまでとは異なっていた。
まずは違和感。 これまでは必ずあった案内標識が見当らない。
橋はボックスカルバートであり、かつ「第十二号橋」の銘板が取り付けられていた!
私は察した。
現在の道路管理者は、橋の名付けを誤っている。
ボックスカルバートである橋に対する命名を、桁橋のものとは別のナンバリングにするのであれば、この橋を「第2ボックス橋」と名付けるべきであった。
そのうえで、実際はボックスカルバートである【第6号橋】を「第一ボックス橋」と名付けるべきであった。
そうすれば、「ボックス橋」の1番目が欠番になることはなかったし、本来は【第11号橋であるべき橋】が「第2ボックス橋」と名付けられてしまうことも起らなかった。
上記した橋名の修正を採用したのが上の画像である。
こうすれば、橋の構造と命名の整合が確保される。
ただ、このような命名を行うと、第7号橋以降の橋は、銘板とは橋名が一致しなくなるという問題が生じる。
それを避けるのであれば、そもそもボックス橋のナンバリングを分ける余地はなかった。
チェンジ後の画像は、産業道路として開通した当初の橋名を再現したものである。
このまま変える必要はかったのではないかとも思う。
ともかく、このボックスカルバートは現状において、道路管理者には橋として命名も認識もされていない。
だから、資料にもこの橋の諸元は記録がない。
跨いでいるのはシュウトナイ川の無名の支流である。
おそらくは道路管理者のミスを原因とする一部の橋の不自然な命名と遭遇しつつも、前進自体には全く手こずることはなく……
9:42 《現在地》
入口から5km地点、白音林道分岐に到達。
ここからの残りは2kmは、行き止まりである「起点」までの一本道だが……
あ…