2010/4/18 18:00 《現在地》
飛龍橋に立って下流の方向を眺めると、濃い青緑の湖面を渡る“ひも”のような吊橋が見える。
あれが「夢の吊橋」だから、先ほど右岸から眺めた廃道は、左岸の岩場を下っていって最後はあそこに辿り着くのである。
「入口」は、この道のどこかにあるはずだ。
それを今から探しに行く。
以前一度通ったときには、全くその存在には気付かなかったが…。
一度は見過ごしていた入口。
しかし、最初から“探すつもり”で走っていくと、それは呆気なく発見された。
軌道跡らしく平坦に続いていく舗装路。
そしてその外側に出っ張った、待避所にしては狭く歪な空き地。
これまでの擬木の柵が、そこから金属製フェンスに変わっている。
分かって見れば、あまりに怪しい“出っ張り”だった。
つか、向こう側にも階段の手摺りが見えてるジャマイカ。
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18:06
にゅ〜!
って入ると、そこは廃道。
というか、廃遊歩道っぽい。
素性は今のところ不明だが、この立地や、手摺りの用意された階段からいって、遊歩道だった道だと思われる。
個人的に、廃登山道は興味の対象外だが、なぜか廃遊歩道…、廃観光地というのは好き。
廃登山道よりも濃密に“昔の地域のこと”が感じられるからだろうか。
あと、少々向こう見ずだったと反省するが、私はこの谷に自転車を持ち込む選択をしている。
確かに無事「夢の吊橋」に辿り着き、さらに渡ることが出来れば、そのまま自転車で下山出来て好都合だが。
錆び付いた手摺りから下を覗き込むと、まあ!
折り重なるようにして、腐った階段が並んでる。
1…2…3…4……5 全部で5段あるようだ。
その下、おおよそ高低差にして20mほど下に広い平らな場所が見える。
あそこは何だろうか。
3段目の階段通路を“走行”中。
ひどい階段だ。
狭い。
急。
チャリを通しにくいの三重苦。
というか、非常に当たり前のことなんだが、激しくチャリを持ってきたことを後悔したものの、私にはどうすることも出来なかった。
下っているというか、下らされているのだ。
クソ階段に。
もう、
チャリ付きでは
戻れない…っぽい
18:09
先ほどから見えていた広い所に出た。
全体に藪っぽくなっているが、草があまり生えていないところを見るに、全体がコンクリートで舗装されているようだ。
やはり観光のための施設と考えて間違いないだろうが、大きな建物などは見あたらない。
自転車を広場の片隅に置き、斜面に沿ってやや細長く歪な形をした広場内を捜索してみる。
朽ちたベンチ。
これをまず発見。
向こう側は大間川のいくらか近くなった渓谷だ。
対岸の崖上には、さっきまで自分がいた林道が見える。
あらためて、この渓谷を乗り越えて進もうとしていることが、怖く感じられた。
…まあ、先に“あんなもの”を見せられたのでは、当然だが。(チャリをどうするつもりだったのか)
怪しい藤棚と公衆トイレ。
こいつを次に発見。
うん。
間違いなくこれは、廃観光地だ。
せっかくなら、もうちょっと明るい時間に来てみたかったが、仕方ない。
【これ】をやった後だからね。
おお〜。
広場の西側の縁からは、木々の合間という限られた視界ではあるが、飛龍橋が眺められることを発見。
案外これが売りの展望台だったり?
…いや、流石にそれは“安い”よなぁ。
橋なんか、寸又峡温泉からここに来るまでの林道からも、いくらでも見えたんだし。
しかもここ、特別に橋が格好良く見える場所というわけでもないし…。
ん?
ひっくり返った看板発見。
よっこいせ…っと。
なになに?
飛龍橋の沿革
こヽは雄大な森林に覆われた千頭国有林地帯です。この真下を流れる川は遠く長野県境に位置する奥黒法師岳付近に源を発する大間川であります。木材の宝庫といわれる山々も開発がなければ荒れるに任せるのは自然のこと、私達の先覚者はあらゆる大自然と戦いながらこヽに木材輸送の要である吊り橋方式の「飛龍橋」を建設しました。その姿はさながら大自然の渓谷に躍りあがる龍神のごとくそびえることから、「飛龍橋」と名付けたのであります。昭和四十四年三月に森林軌道の廃止とともに道路の橋梁として架け替えられたものであります。
飛龍橋の 高さ 六十九メートル
長さ メートル
竣功年月日 昭和三十二年十月
本川根町観光協会
こいつは間違いない。
ここは飛龍橋を観賞するための展望台だったらしい。
昔はダムとか橋とか、実利的な土木構造物を観光と結びつけて、今以上に賛美していたのである。
それは、観光が修学的な要素を強く持っていた戦前の名残と思われる。
あと、観光とは無縁そうなこんなモノも落ちていた。
安全の四大基本 を守り災害を防止しましよう。
確 認 安全を確かめて作業にかかりましよう。
合 図 お互いに合図をしあって作業を行いましよう。
待 避 安全な場所に確実に待避しましよう。
復唱・自唱 復唱・自唱して行動しましよう。
安全を目で確認。 手で確認。 口で確認する習慣をつけましよう。
東京営林局
上部を通る林道(林鉄)沿いから落ちてきたのだろうか。
おそらく内容は今でも通用するものであろう。
広場には、さらに下段があった。
この階段が、やがてあの青い湖面へ近付いていくのだろうか…。
…狂おしい廃道となって。