2008/9/8 17:34
くずかごの置かれた広場から、階段でまっすぐ10mほどダム側へ下った地点。
そこに、この遊歩道の“目玉”であったろう奈川渡ダム展望の特等席がある。
この展望台からダムまでの距離は約350m。
両者の標高は、約1000mというところで一致している。
当然、ダム側からもこの展望台は見えるはずなのだが、今までその存在を意識したことはなかった。
7月の探索時にダム天端の国道から撮影した写真を見直してみよう。
確かに、写っていた。
だが、それと分かって見なければ気づかないのも無理はないだろう。
それにしても、展望台の周囲はものすごい急斜面だ。
どこか「ミステリーサークル」を彷彿とさせる展望台の様子。
丸いテーブルを中心に、詰めれば10人くらい座れそうな半円形のベンチが二つ置かれている。
いずれも、骨組みは鉄製であるが、肌に触れる部分は木製になっている。野ざらし雨ざらしの割に、腐りもせず良く残っている。
それにしても、テーブルとベンチの離れ方はどういう事だ。
これでは、ベンチに座ったままテーブルに手が届くかどうか、怪しい。
展望台は完全な袋小路であり、もと来た急な階段の他に出入り口はない。
日没が迫っている現状では、木の温もりがあるベンチもどこか寒々とした物に見えてしまい、一切腰掛けることなく、すぐに“くずかご”の有る広場に戻った。
広場に戻って辺りを見回すと、ここよりも上、すなわち痩せた岩尾根のてっぺんにも遊歩道は続いているようで、手すりばかりが嫌に目立つ階段が見えた。
この階段の入り口は、少し戻って…。
ここ。
先ほどはこの階段に上らず松林の中へ潜っていったが、山頂の展望台へは、右の急な階段を上れば行くことが出来るのだ。
…今度は何が見えるのか。
行ってみよう。
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17:35
ただでさえ土地の無い山の上に、無理くり階段を撫でつけました。
そんな感じがプンプンする山頂への道。
まるで、階段の九十九折りである。
そして、階段と階段を結ぶ踊り場の狭いスペースにまで、若い松が育ちつつある。
もう50年くらいしたら、たいそう巨大な盆栽が出来上がりそうだ。
ものの1分で山頂に到着。
しかし、山頂には変則的な形をした平場が一つあるだけで、ベンチもテーブルも、そのほかのどんな施設もない。
周囲の松が育ってしまったせいか視界は思わしくなく、さらに洋館を思わせるフェンスが全方位を取り囲んでいるため、山頂だというのに、まるで檻の中にいるような圧迫感を覚える。
いったいこの山頂の展望台では、何を見せたかったのだろう。
振り返ればダムは松の隙間にかろうじて見えるが、ダムならば先ほどの展望台の方がよく見える。
むしろ、ダムとは反対の下流側にこそ視界は開けていて欲しいが、大きな松が邪魔をしている。
フェンスの中にいたのでは、文字通り、埒があかない。
そう考えた私は少しでも良好な見晴らしを得るべく、唯一フェンスの外側に人が立てそうなスペースのある、東側フェンスを乗り越えてみた。
この岩場の突端に行けば、何か新しい眺めが得られるだろう。
た、 高けぇ…。
思わず足が竦んでしまう高さがある。
アニメか西部劇にでも出てきそうな、船の舳先のように下がオーバーハングした崖である。
ここはその突端なのだ。
ここからだと確かに見晴らしはあるが、見えるのは、国道が「大白川隧道」で貫いている急峻な山腹だけである。
これ以上は手も足も出ない、そういう眺めだ。
しかも、この最も見晴らしの良い場所がフェンスの外であった理由が、いまさらに判明。
私が乗っかっている岩はだいぶ風化が進んでいるようで、一部は巨大な亀裂が生じている。
くわばらくわばら。
結局、この遊歩道には二つの展望台があって、それぞれが行き止まりになっている。
地図に示すと右の通りである。
だが、地形図を見ると、展望台が描かれていない代わりに、ダムまで道は存在することになっている。
…展望台の直前に分岐があった事になるが、来るときには全然気がつかなかった。
…その道は本当なのか。
地形図のエラーでは?
地形図では崖の中に道があることになっているが、この崖というのは、実際にダム上から見るとこんな眺めだぞ…。(↓)
奈川渡ダム下流の右岸側には、なんだか分からないがとにかくすごい崖がある。
全体的にコンクリートで固められた絶壁に、無数の通路と階段がへばり付いている。
それは、まるでアクションゲームのステージを俯瞰したような眺めである。
これは、巨大な水圧に耐えるダムを支えるべく、徹底的に「改造」された崖である。
奈川渡ダム建設における殉職者は99人にも上るが、この壁はどれほどの血を吸ったのか。
間違いなくゼロでは無さそうなだけに、恐ろしい。
そして、地形図に描かれた道を素直に信じるならば、この崖のどこかを通り抜けてこちら側へ来る道だと言うことになる。
奈川渡ダムの駐車場がかなり奥の方まで続いていて、そこはもちろん歩くことも出来るのだが、その先、どうにもならなそうな崖が100mくらいの幅を持って続いているように見えるだろう。
しかし、なんと恐ろしいことだろうか。
廃遊歩道探索時の私は知らなかったのだ。
「展望台」とこの「改造絶壁」、そして駐車場の位置関係というものを。
私は、知らず入り込むことになる。
この崖の、どこかへ。
17:31
ここだ…。
あらゆる分岐の可能性を想定し、じっくりゆっくり観察しながら戻っていくと、怪しい場所を見つけてしまった。
写真だとそれほど怪しくないように見えるかも知れないが、実際に右を覗き込んでみると…
洋館風フェンスの最も端の50cmほどが、実は門扉になっていたのだ。
すでにさび付いていて扉を開放することは出来ないが、間違いなく遊歩道から外へ出る扉の跡である。
おそらく、一般の観光客に解放してはいなかったのだろう。
もしそうならば、扉は要らないだろうから。
扉を少し押して、隙間から外へ出る。
出てはならない、セーフティエリアの外へ…。
腐った遊歩道が出やがッた!
木製桟道とは、
ぐわぁー!!
さすがに、ヤバい臭いしかしない…。
これは私の勘だが、これは展望台が作られる以前の遊歩道と思われる。
遊歩道は人気獲得のため、途中でリニューアルをしたとしても不思議はない。
こちらのエリアは廃止されて相当の年月が経っていると思われるが、木製桟道の欄干の高さを見る限り、やはり遊歩道っぽさがある。
これは地形図にあるルートだが、
果たして辿ることは出来るだろうか?!
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