国道16号 八王子バイパスの未供用ランプの謎 後編

公開日 2012.09.10
探索日 2007.04.04
および2012.08.23
所在地 東京都八王子市

住宅地を縦貫する八王子バイパス


6:03【現在地(マピオン)】

前回の終盤に表題の未成ランプウェイは全て紹介し終えたのだが、八王子バイパスのレポートをもう少し続行したい。
未成ランプの謎を解き明かすためには、おそらくそれだけを見ていてもダメで、周辺の有り様を理解する必要があると思うのだ。
というわけで、謎解きのためのヒント集めに、もう少々お付き合い下さい。

ここは未成ランプから100mほど南下したところにある、都計道長沼片倉線との交差点である。
私はこれを横断して直進するが、そこには平行して道が2本ある。
前回書いたとおり、八王子バイパスのうち北野台と片倉台の間を通る区間は特別に道路敷きが広くなっており、全幅50mの中央に掘割の本線と、その左右それぞれに車道用と歩道用2本の側道を有している。

ここから側道へ入って750mほど道なりに行くと、片倉ICで八王子バイパスへ入ることが出来る(ただし相模原方面へしか行けない)のだが、全く案内が見られないのはやや不親切である。 (この不親切を「わざとか?」と疑い始めたのが、謎解きの入口だったかもしれない)

それと、この時点ではまだ自転車はどちらの側道を通行しても良いような状態(特に規制がない)だが、少し行くと状況が変化する。



【現在地(マピオン)】

歩道側道を一直線に250mほど進むと、再び交差点が現れた。

ここで交差する道は1車線の生活道路で、八王子バイパスを「片倉第3跨道橋」で横断して、北野台と片倉台の住宅地を結んでいる。
あまり通行量のある道ではないが、なぜかこの交差点から先の車道側道については、自転車の通行禁止という規制が掛かっている。
どうして都計道からここまでは規制が無かったのか不思議だ(これは謎解きしない…笑)。

重箱の隅をつつくようだが、表示されている内容に従うならば、ここから先の車道側道は、自転車だけが規制されていて、リアカーのような自転車以外の軽車両や、歩行者も規制されていない状態である。




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6:05 【現在地(マピオン)】

犬を散歩させている人やジョガーとすれちがいながら、歩道側道をさらに250m進むと、またも交差点が現れた。
(逆に言うと、今回紹介している道の他には一切分岐が無く、その事も住宅地の中での八王子バイパスの孤立感を深めている)

ここで交差する道は2車線で、やはり住宅地内の生活道路だが、バスも通る準幹線である。

そして、ここにはおそらく謎解きの手掛りになるものが2つあった。



そのひとつめは、ここに来て初めて、八王子バイパスの入口の案内が現れたこと。
ここから入れば、あとは一本道で片倉ICの相模原方面行きオンランプに辿り着ける。

八王子バイパスは高速道路ではない一般の有料道路に過ぎないが、それにしてももう少し手前からICの案内があっても良さそうなものだ。
具体的には、通過交通の多い長沼片倉線との交差点に案内があれば分かり易いのに、あまりICを大っぴらに案内出来ない理由があるのかと疑いたくなる不親切さである。  ……【手掛り1】

車道側道の規制内容はここでさらに増え、従来の自転車に加えてリアカーを含む、軽車両全般が進入禁止となった。
これらの車両(と歩行者)は、ここから先は問答無用で歩道を通らなければ、道路交通法違反となる。




← もうひとつの手掛りがこれ。

これには、思わずドキッとした。
私が愛するものに対する第三者の嫌悪を見てしまった、そんな居心地の悪さだ。

もしかして、この周辺に住んでいる人達は、八王子バイパスを迷惑がっている? ……【手掛り2】

ごめんなさい。無神経にも、今の今まで私はそこに全く考えが至っていなかった。
だって、私がこれまで経験してきた道の大半は山中の不便なところにあって、多くが地域に愛されていた(と思う)。
都会における私の経験値不足からくる認識の不足を、目の前の物体に無言で指摘された気分だった。

交差点の車道側道脇に設置されていた電光掲示板は、私が初めて目にするものだった。
「調整中」「大気及び騒音 状況」「二酸化炭素 ■.■■PPM」「(字が薄れて読めず) ■■ホン」
…などといった表示が見られ、これが八王子バイパスの重交通による住環境の悪化を監視すべく設置されたものであることは明白だった。



その電光掲示板の下に取り付けられていた「測定地点」と書かれた地図。

だいぶ錆が進んでいて一目で古さを感じるのだが、なんとこの地図には八王子バイパスが全く描かれていなかった。

存在する道を敢えて書かなかったのでない限り、この看板(そして電光掲示板)が設置されたのは、昭和60年以前ということになる。
だがこの場所にある以上、これはあくまで八王子バイパスを監視するという目的で、完成前の早い段階に設置されたので違いないと思う。
また、設置場所が道路用地内なので、おそらく住民の要望を受けた行政が設置したのだろう。





少し不穏な空気を感じつつ、北野台の最後の交差点を横断し、

なおも歩道側道を進んでゆく。



【現在地(マピオン)】

歩道側道を200m行くと、やや変則的な光景が現れた。

特に「こう進みなさい」という案内が無くて不親切なのだが、八王子バイパスを軽車両で進むためには、ここを右折して車止めをすり抜けて進まないといけない。
正面の道は、ここから見える法面に突き当たって行き止まりになっているのだ。
(車止めの間隔が狭く、リアカーが通れるか心配…。皆さんどうしてるんだろう?)




八王子バイパスを自転車で進むには、ここで歩道を右折して、すぐ突き当たる車道側道に沿って左折することになる。
車道側道をそのまま横断し、本線も横断して片倉台へ行くことも出来るが、この橋の名前は「片倉第1跨道橋」といい、これで第1〜第5まで全ての跨道橋を見た。

というところで、約1kmぶりに八王子バイパスの本線とご対面!




片倉IC、

ズガーン!


…と、言ってみたくなった。

(広い道が豪快に山を貫いているからズガーンなんだろう…たぶん)

ちなみに、上を跨いでいるのは“歴史の道”として有名な「絹の道」である。



本線に合流して振り返ると、なんか海底トンネルの入口のような雰囲気で格好が良かった。

が、重要なのはそこではなく、このオンランプの作りがとてもそっくりなのだ。

1km手前で見た未供用ランプ(オフランプ)と酷似してる。

目立った違いは向こうが片方しかなかったが、こちらは本線の両側に対称にあること。
だが私の予想では、向こうも本来はこういう風に建設される予定があったと思う。
さらにその証拠となる資料も見つけたが、それは次の「考察編」でお見せしよう。




右の写真は、反対車線に設置されている片倉IC出口の案内標識を拡大したもの。

北野台団地と片倉台団地という、いま通過してきた団地が案内されている。
そして、それ以外は特に行き先の案内が無い。
ここから都計道長沼片倉線へアクセスすれば、日野市方面への最短路なのだが、それは案内されない。

このことから、前の中谷戸ICに続いて、この片倉ICも団地へのアクセスを主目的とした運用がなされている事が伺える。




左図では、相模原方面への出入りのみが可能なハーフICである片倉ICのオンランプを青、オフランプを赤の矢印で示した。

このICは、本線に平行して設けた長大な一方通行の側道をランプウェイとして利用しているのが特徴で、1箇所のICでありながら実質的には1kmの範囲内に4箇所の出入口を実現している。(これら以外の街路は側道と接続されていない)

これは広い道路用地を効率的に使った上手い方法だと思うが、惜しむらくは、ハーフICでしかないということだ。

だがこれも未供用ランプを活用すれば、フル規格のICへと生まれ変わり得る。
(もちろん、建設されていない八王子方面オンランプを建設する事が条件である)

このことは、我ながらとても重要な気づきであった。
未供用ランプが、片倉ICよりも中谷戸ICに遙かに近いため、最初はこのことに気付かなかったのだが、動線的には間違いなく片倉ICの片割れなのである。
そう考えれば、あの位置というのは綺麗に納得が出来る。

1kmもの範囲にわたって続く側道を介し4つの出入口を複合させたICという上等(と思える)アイディアが、なぜ完全な形で実現出来なかったのだろう。
謎はそこに集約しつつあるように思う。
そしてその手掛りも、だいぶ集まっている…。



…ぬっふふふ… (←わるにゃん風に)



ややオマケ的に… 御殿山料金所


6:12 【現在地(マピオン)】

片倉ICから650mほど山を掘割(一部築堤)で突き進むと、そこに御殿山料金所がある。

ここは八王子バイパスの唯一の料金所である、本線料金所だ。
したがって、双方向の全ての車がここで減速(ETC)か停止をし、料金の支払いを行わねばならない。
自転車も例外ではなく、歩行者だけが無料で通行できるのだ。

八王子方面から来ると中谷戸ICを通過した時点で、相模原側からだと起点の相原ICに乗った時点で、料金所の通過が決定する構造になっている。
これは、それぞれの途中にある片倉ICや鑓水ICが料金所方向への乗り降りしか出来ないハーフICとして整備されているからだが、私は料金徴収の最大化が、これらのICがハーフICとして整備された理由だとは思っていない
そういう設計思想で作るならば、片倉ICに未供用のランプがあることが既におかしいのだ。
別のもっと大きな理由があると私は思う。

(基本的に公益性を最も重視する一般有料道路事業の場合、利用者の利便性を大きく犠牲にしてまで料金徴収の効率を優先することはない[片倉ICがフルICだった場合の利便性は、無視できるほど小さくはないだろう]。もっとも、安易に料金所を迂回できるような抜け道の存在を許してしまうと、そこで新たな渋滞などの交通問題が発生する可能性があるので、それを避けるために出入りを制限したというのは、なお可能性があると思う。)



料金所のブースは内回り・外回りとも(国道16号は環状線なので上り下りは使えない)4レーンずつあり、その半分がETC専用レーンである。
ETCが普及するまではどうだったか知らないが、現在はやや持て余し気味な印象がある。
ラッシュ時も渋滞しないと思う。

で、これらのブースはすべて自動車専用である。
車道を通れない軽車両は、どこでどのように料金を支払えばよいのだろうか。
最初来たときは少し悩んだのだが、その問題は、このまま進めば自ずと解決した。




料金箱による無人徴収!

たかが30円という安い料金で、しかも私の他に自転車で通行する人を見たことがない(もちろんいるだろうが)という状況では、とても有人徴収と言うわけにはいかないのだろう。

その気になれば、払った素振りだけで余裕に通過出来るだろうが、愛する道路を裏切るワケにはいかない。
他のことの30円ならちょろまかしても、神聖な通行料金だけは絶対に支払いたいのである。(偉そうに言うようなことか?)



料金徴収箱の近くにある案内板は、平成19年の時点は「日本道路公団」のままになっていた(日本道路公団の廃止は平成17年)。
一部に熱狂的なファンがいる「高速道路フォント」を用いており、他の場所には無さそうなこの案内板には、マニアックな価値がありそうだ。

自転車・軽車両の料金(30円ま■■■■■)は、この先の料金収受箱へ投入してください。
領収書の必要な方(回数■■■■く)は係員へお申し出下さい。
            日 本 道 路 公 団

平成19年と今回とで、文字の隠され方に変化があり(故意と風化のダブルの変化が見られる)、おかげで以前は分からなかった2箇所の隠された部分に何が書いてあったか、予想できるようになった。つまり、最初の伏せ字は「または回数券)」、第2のそれは「(回数券はのぞく)」である。
どうやら以前まで軽車両用の回数券というのがあったらしい。

それはそうと、今は領収書の発行はしてくれないのかなぁ。



はい、30円ね。      ちゃりん…

下の方には回数券が9月1日から使えなくなった。払い戻しをするので事務所へ来いという内容が書かれているが、撮影日は平成19年7月なので、平成18年9月まで回数券が通用していたと言うことで良いのだろうか。
妙に掲示物がボロボロなので、もっと古いかも。

で、平成23年の探索時には、ボロボロで美観を損なっていた掲示物は全て取っ払われていたが、今度は金額が咄嗟に分かりにくい状態に。
前述の伏せ字だらけの掲示物を見逃すと、料金が不明と言うことに…。

…お金の回収は、ちゃんと毎日行われてるのかなぁ?




料金所を通過すると、初めて道は下り坂になった。
打越の入口から料金所の辺りまで、緩やかながら本線はずっと上り坂だった。
並行する国道16号の御殿峠越えピークに対応する位置に、料金所は置かれている。

そして、僅かな距離で鑓水ICがある。
例によって歩行者や軽車両は、ここでも強制的に降ろされる。




6:19 【現在地(マピオン)】

今回のレポートは、この鑓水ICまでにしようと思う。
有料区間はあと1kmばかり相原ICまで続くが、
表題からはいよいよ離れてくるし、そもそもまだ探索していない。

実はこの鑓水ICにもフルIC化への準備施設、
少なくとも用地が準備されている気配があるが、
このことも含めて、改めて探索・報告したいと思う。





これは鑓水ICの八王子方面オンランプの入口にある料金案内板。
打越ICにもこれと同じものがある。

これまで何度か料金が改定されたのか「大型」や「特大」の数字だけは綺麗だが、それ以外はボッロボロ。
廃道じゃないんだから、もう少し何とかならないのか。

読者さまによると、「打越出口は時間帯により渋滞が発生しています」という案内板は、打越ICの先で京王線との交差が立体化されておらず、八王子バイパスと平面交差していた時代の名残だとのこと。 そんな時代があったことに驚きだが、そりゃ渋滞もするよなという感じだ。
2012.9.11 読者さま情報提供により追記

といったところで、現地レポートは終り。






“未成”の片倉ICについて、

次回の「考察編」で私の知る全てを明らかにする。
(管理者さんにも鋭意お問い合わせ中!)