地図上に特異な存在感を醸し出す国道410号の松丘“迷走”区。
皆さんが一番気になっているのは、なぜこんなルートが国道に指定されたのかという事だと思うが、私なりの種明かしは最後にして、まずはルートの紹介だ。
「中編」である今回は、国道410号の“折り返し地点”とでも言うべき無名の交差点からスタートする。
地図上に特異な存在感を醸し出す国道410号の松丘“迷走”区。
皆さんが一番気になっているのは、なぜこんなルートが国道に指定されたのかという事だと思うが、私なりの種明かしは最後にして、まずはルートの紹介だ。
「中編」である今回は、国道410号の“折り返し地点”とでも言うべき無名の交差点からスタートする。
2008/4/3
信号はおろか青看の1枚も無いこの場所を境にして、国道の路線が切り替わっている。
写真では、今まさに1台の大型トラックが国道410号から国道465号に移ろうとしている瞬間だ。
当サイトを訪れているような人(笑)は別として、大半のドライバーはその事を特に意識せず通り過ぎているし、また行政側も敢えてそれを狙っている様に思われる。
この交差点は見れば見るほど面白いし、珍しい。
今日、どんなに辺鄙な田舎であっても、国道同士の交差点には標識の1枚くらいはある。
それがないだけでも特異なのに、それだけではない。
2車線の国道2本が合わさって出来た道が、たった1車線しかない。
つまり、2+2=1 になっている。
今まで数多くの交差点を見てきたが、国道同士でこのパターンはありそうで、無かった。
見ての通り、この交差点は非常に鋭角で、通常の丁字路として設計されていないことは明らかだ。
狭い道と広い道の鋭角分岐は、新道と旧道のそれに似ている。
これだけ鋭角なので、クルマで千葉側から来て左折しようとすれば、一時停止や最大限の減速が当然発生すると思われるが、危険である。
多くの大型車はこの交差点へ減速せず突っ込んでくるうえ、カーブの先で見通しも悪いので追突されるかもしれない。
実際、しばらくこの交差点を観察していたものの、左折して入っていったのは郵便配達のミニバイク1台だけだった。
なお、大型車の通り抜け不能も告知されているが、特に規制はされていないようだ。
1.5車線で始まった道だが、50mほど進んで掘り割りが現れると2車線に戻った。
しかし、センターラインがほとんど消えていたり、このすぐ先では路肩に土が積もっていたりと、実質的には1.5車線路として使われてしまっている。
また、この掘り割りには以前、短い隧道があった。
名前はおそらく「四町作第2隧道」である。
この名前を選んだ理由は後述する。
“酷道”ファンを喜ばせる“おにぎり“が待っていた。
前述の通り、ここは国道410号と465号の重複区間であり、この先君津市大岩までの約9kmにわたってそれは続くのであるが、465号については大岩交差点まで全く姿を見せない。
もともとは国道410号の単独区間であったところに、平成5年になって追加指定された465号が重なってきたのであり、案内上での両者の扱いが平等ではないのも無理はない。
キタキタ来た…。
幅員減少の標識を合図にして急速に狭まる道は、何の“溜め”も無くスルッと地下へ入り込んでいる。
すなわち隧道。
隧道が珍しくも何ともない房総らしいさりげなさだが、これはそんな房総の中でも珍しい逸品である。
出た!
素堀だよー。
誤解の無いように書いておくと、房総で素堀(コンクリート吹きつけ含む)の隧道は全く珍しくない。
それどころか、ちゃんとした坑門を有する隧道の方が珍しいくらいであって、前回の「四町作隧道」のように内部だけ素堀が残っているものも合わせれば、房総の隧道の9割以上は素堀だと思う。
だがそんな房総であっても、現役の国道隧道という事だけで見れば、坑門すら持たない「マジ素堀り」は流石にレアだ。
しかも、この隧道は幅員が1.5車線未満という、普通車同士でも離合不可能な狭さであり、林道ならば全く珍しくないが国道としては重ねてレアである。
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空っ風が吹き抜ける細長い隧道。
この隧道の名前を現地で(人に聞いたりせずに)知る術はない。
坑門がないので扁額も当然無いし、国道のくせにトンネル名の標識もない。
照明も一切無く、防災設備など消化器1つ見あたらない。
無いものづくしの隧道は、名前さえないのではないかと思われるくらいストイックに「道路の一部」になっている。
そんなわけで、本当の名前を知っている人はおそらく少ないだろう。
頼みの綱の「隧道リスト」にも記載はないようだ。
だが、「道路施設現況調査」(平成16年版)を見ると、国道410号のトンネルとして確かに記載がある。
注目の名前は、「四町作第一隧道」という。
四町作第一隧道
全長:52m 車道幅員:4.2m 限界高:4.0m
竣工年度:昭和35年
しつこいが、言わせてもらう。
何度見ても変態な線形であると。
せっかくトンネルを4本もくぐって山越えしたのに、突然引き返してさっきのトンネルのすぐ上に掘られた一回りも長い(そして細い)トンネルへ入るのだ。
合理的な説明が出来るような尋常の線形ではない。
ちなみに、資料には昭和35年竣功とある四町作第一(第二)隧道だが、古地図を見る限りはそれ以前から存在していたようだ。
もしかしたら(房総ではこれも珍しくも何ともない)明治隧道なのかも知れない。
四町作第一隧道はこの「迷走区間」内で唯一の隧道であり、ハイライトといっても過言ではない。
「なんだ、もうハイライトなのか」 と思われるかも知れないが、クライマックスはこの先である。
隧道を出ると一瞬だけ離合できる道幅があるが、またすぐにこの狭さとなる。
右山左谷のかなり窮屈で見通しの悪いところをウネリウネリと進んでいくのだが、ここで初めて対向車と出会った。
隧道からこの辺りにかけては、全く深山というわけではないにもかかわらず、関東有数の酷道っぽいところである。
そして、個人的には隧道よりも楽しみだった場所が近づいてきた。
ここへ来る前、そこはどんな景色なのかを地図を見て色々想像して楽しんでいたのだが、今遂にその実景が明かされようとしている。
非常に個人的なアレで申し訳ないが、とてもワクワクしている。
すなわち、この次の左カーブの先は“変態”線形の要である立体交差だ。
さっき走った道の上を跨ぐ、変形ループの部分である。
クライマックスを目前に、道は再び2車線弱に広がったが、先はまた狭そうだ…。
うーおー!
よく分からないが、イイ! …ような気がする。
地味だが、会心と思える道路風景だ。
期待に勝る個性的景色である。
この区間の入口に立つ標識はシュールだが、ここはこんなイラストのダンプみたいな車でなくても、どんな四輪車でも必ず路肩を通らざるを得ない道。
なにせ、道は尾根の上にあってこの狭さだ。
路肩以外にタイヤを乗せて走る術がない(笑)!
そうか…、【ここは】、こんな風になっていたのか。
こんなに狭く…、ヒョロヒョロと…。
狭い道に立って左右を見下ろすと、国道と線路が仲良く並んで足元を貫いている。
まるで橋の上からの眺めだが、紛れもない自然地形である小さな尾根を築堤道路のように使っているのが面白い。
ところで、下を貫く国道の隧道を「大戸見隧道」といったが、長さを覚えているだろうか。
答えは、たった39m。
この“擬似築堤道路”の断面は、下辺39m 上辺3m 高さ20mほどの、ほとんど三角形に近いような台形を想定すると分かりやすい。
拡幅のためには、いっそのことすべてを取り払って長い橋にしてしまえば良いように思うが、それはかなり規模の大きな工事になる。
下を通っているのは、房総半島の背骨と形容される幹線国道と、ローカル線ながら大切な通勤の足でもあるJR久留里線である。
周辺には迂回路といえるものが乏しいだけに、通行止め運休になるような工事は出来ないだろう。
そもそも、鉄道と道路は管理者が違うため、両者に影響する工事は調整の難しいというのが通説である。
変態な線形だけに、沿道風景も平凡というわけには行かなかった。
そこには国道にあるまじき素堀の隧道や、驚くような狭隘区間が潜んでいたのである。
地味に楽しいクライマックスも終わり…
次回の最終回では、“変態”線形出生の秘密が明かされる!?
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