2018年11月中旬、当サイトの読者である井之川氏より、とても興味深い情報提供メールを頂いた。
その内容は、以下の通りである。
場所は新潟県十日町市東田尻という所で、十日町市と合併する前は、新潟県中魚沼郡中里村東田尻という場所になります。
そこから旧国道353号線が、清津川に沿って廃道として1キロくらい残っています。今から35年ほど前に新しい清津峡トンネルが出来て353号線がそちらに移ってから、何年かは遊歩道として残ってたのですが、管理に費用がかかるのか、いつのまにか廃道となってしまいました。
新潟県十日町市の清津川沿いを通る国道353号清津峡トンネルに、旧道が存在すること。そしてその旧道に1本の旧隧道が存在することは、以前から私も地図上で把握していたが、未探索だった。(平成18年修正版の2.5万分の1地形図には旧道と隧道がともに描かれているが、最新版の地理院地図では、旧道は描かれているものの、そこにある隧道の表記は削除されている)
地図上では1本のように描かれている清津峡トンネルだが、「平成16年度道路施設現況調査」によると、清津峡第1トンネル(全長180m)と第2トンネル(全長646m)という2本のトンネルからなっているらしく、いずれも竣工年は昭和57(1982)年である。トンネルが沢と交差している箇所があるので、そこで2本に分かれているのだろう。
清津峡トンネルが開通する以前に使われていたのが、旧道の瀬戸口隧道で、「道路トンネル大鑑」によると、全長134m、車道幅員3m、限界高3.7m、竣功昭和29(1954)年という年代物である。
このように地図と資料によって概要が判明していたこともあり、探索の優先度がなかなか上がらず今までスルーしていたが、今回はこのトンネルについて情報提供を頂いた。
なんでも、旧国道になってから数年の間は遊歩道として使われていたが、現在は廃道になっているという。
確かに、地図上の表記が徒歩道を示す破線になっていたり、最新の地理院地図では隧道の表記が削除されていたりと、廃道化の気配は濃厚だ。
ふむ。これを機にそろそろ探索しても良いかな……と思ったくらいにして、まだ幾分ゆったりと構えていたのだが、読み進めると、このメールにはまだ続きがあって、その内容に大いに昂ぶらされたのだ! 情報提供メールの続きは、以下の通り。
グーグルで十日町市東田尻で検索すれば旧清津峡トンネルの入り口は見ることができます。約150メートルくらいの片洞門を行くと、旧清津峡トンネルの入り口にたどり着けるのですが、実はこの片洞門の間にもトンネルが存在しているのです。今となってはこの事はごく一部の地元の人しか知らない、また、確認したわけではないのですが、「中里村」の歴史の本を探しても多分載っていない事実だと思います。
今から45年ほど前、私が3歳くらいの時、祖母におんぶされながら通った事が、私の中の忘れられない記憶として残ってます。
勿論、車両などが通る事は出来ないトンネルです。私が生まれる前だと思いますが、旧353号線が清津川沿いに出来て、車一台がなんとか通れるようになって、観光客が清津峡に行くのが可能となったのですが、それまでは本当に僻地で、そのトンネルを徒歩で行かないと、清津峡には辿り着く事は出来なかったんだと思います。
この東田尻という部落から、角間という部落までの約1キロの区間が旧353号線の最も危険な場所なのですが、冬の雪崩や道路からの転落などで、何人もの命が失われた場所でもあります。遊歩道であった時も地元の人はまず、通る事はなかったと思います。また、時代も移り変わって、旧道が通れる頃に、実際に通った事がある人でさえ少なくなってきました。
色々書きましたが、是非ともヨッキれんさんによるこの旧道のレポートを読んでみたくて、情報を提供してみました。是非ともよろしくお願いします。
このメールの内容から私は、右図に「 } 」で示した範囲内に、地図には描かれていない隧道が存在する と解釈した。
情報提供者(古老というほど年配ではない)の幼少の記憶に残る、「車両などが通る事は出来ないトンネル
」。
当時既に、昭和29年完成の瀬戸口隧道(=旧清津峡トンネル)があったはずだが、その手前(東田尻側)の“片洞門”になっている場所に、そのような隧道があったという。
単純に考えれば、その小さな隧道が後に開削されて、現在ある“片洞門”となったのではないかと思うところだが、メールの内容を読む限り、そうではないのだろう。
メールには、グーグルマップでこの片洞門や瀬戸口隧道の入口を見ることが出来ると書かれていたので、実際に見てみると…(↓)
ん? 旧道は描かれてはいないっぽいけれど…。
もしやと思い、ストリートビューに切り替えてみると――
(→)
心沸き立つ立派な片洞門が見える! その奥には、いかにもな感じの素掘りの坑口を見せる瀬戸口隧道の姿も!
これは確かに探索したくなる景色だ!
しかし、情報提供者が教えてくれた隧道は、どこにあるんだろう?
この片洞門区間に、隧道があるという話だったと思うが。
(↑)このビューは、上のビューの立ち位置である橋の上から、その北側の袂へ移動したところだ。
ここは旧国道の入口で、いかにも廃道らしい「通行止」の看板が掲示されていてワクワクするが……、
その塞がれた入口の数メートル左、草が茂っている辺りの日陰に目を向けてみると―
坑口らしき“暗がり”が見える!
これか! これが、情報提供者が伝えたかった隧道か?!
この貴重な情報提供をきっかけに行った現地探索では、情報にない、さらにとんでもないものを見つけることになった。
ほんとうに、それは、とんでもない………。