直近の探索である北陸遠征では、事前の計画になかった探索をいくつか行った。
いまは日の短い時期だけに、車中泊の夜がとても長い。そのため、時間潰しに、普段見ないほどじっくり地図を眺めて過ごすことが少なくない。そうしていると、“変な道”が見つかることがあるのだ。
今回紹介するのも、そんな探索の一つだ。
富山県道72号 坪野小矢部線。
この道の秘めたる変態的要素は、まだ道路マニアにはあまり知られていないようだが、現地で目にした風景に、私は何度も笑顔を零すことになるのだった。
富山県道72号坪野小矢部線は、砺波(となみ)市と小矢部(おやべ)市を結ぶ、全長約18.3kmの主要地方道である。
主要地方道の指定を受けたのは平成5(1993)年のことだが、一般県道としての認定は古く、昭和35年、すなわち現行道路法下における富山県の一般県道認定第1弾に入っていた。ただ、当初の路線名は今とは異なり、坪野石動(いするぎ)線といったようだ。この名称変更は、北国街道の宿場町として名を知られた石動町が、昭和37年に小矢部市の一部になったことによるのだろう。
このように、県道としての長い歴史を有する坪野小矢部線の位置は、右図の通りである。
終点である小矢部市中央町の周辺は、いわゆる旧石動町の中心部であろ、越中と加賀の国境に位置する交通の要衝として栄えただけあって、現代の地図で見ても放射状に発達した道路網を見ることが出来る。そのうちの1本がこの県道で、石動を出た路線は間もなく小矢部川を横断すると、砺波平野を東南東へひた走り、砺波市の東端に位置する坪野地区で国道359号に合流する、そこが起点である。
全体としては、散居村風景で有名な砺波平野の雄大な景観に抱かれた、爽快な県道だと言える。
だがこの県道には、闇……がある。
これは、終点である小矢部市中心部(石動地区)を拡大した地図だ。
この狭い範囲にも沢山の県道や国道がひしめいているが、我らが県道72号は、少々不可解な動きを見せている。
地図中で一番存在感のある南西から北東へ抜ける太い道(国道471号および県道42号)は、平成5(1993)年までは国道8号であった。
この年、国道8号は全線が開通した小矢部バイパスへ移動し、旧道となった石動地区の路線はこれらの国道や県道へ移管されたのである。
我らが県道72号は、終点を出発して小矢部橋を渡ると、この少し前までは北陸地方の大動脈であった県道42号を横断して、南東へ舵を切る。
この小矢部橋から旧国道を横断するまでの短い区間は、このくらいの大縮尺の地図で見ると、おかしい線形を描いている。
もっと拡大してみよう!
(ニヤニヤ)
もう多くは語るまい。
あとは、現地を、見てみよう。