2018/11/13 11:26 《現在地》
小矢部川の堤防に突き当たったので左折すると、すぐ先に橋が見えた。
これからこの県道が渡る橋で、小矢部橋という。
察しの良い人なら、この橋名だけで道の来歴を多少想像しうるだろう。
平凡な桁橋に見えるが、私が今回の探索を思い立つきっかけとなった変態的な道路線形が、この橋の対岸に待ち受けている!
…いよいよ、核心部へ肉薄しつつあるというわけだ。
なお、道路標識によると、この橋は大型貨物、大型特殊、特定中型といった車両の通行は出来ない。
しかしそれは、橋自体の強度が問題になっているのでは、おそらくない。
この先が……(ウフフのフ)。
橋の袂へは向こう側からも道が来ていて、丁字路になっていた。
この向いから来る道は一般県道で、県道324号谷坪野芹川線という。
我らが主要地方道である県道72号坪野小矢部線とここで合流し、一緒に(=重複区間として)小矢部橋を渡る。
その状況を、数枚の“卒塔婆”標識も案内してくれていた。
なお、県道324号の起点である「谷坪野」は小矢部市の地名で、県道72号の起点である「坪野」は砺波市の地名である。この図の通り、両者は全く関係ない地名なのだが、重複する県道の路線名に「坪野」の2文字が重なるため、少し紛らわしい。
小矢部橋左岸橋頭より、対岸を望む。
橋長は約130m。橋の幅には余裕がなく、いわゆる1.5車線だ。歩道もない。
親柱の1本にくくりつけられるようにして、少し前でも見た「幅員減少通行注意」の看板が設置されていた。
前回は、この標識の後に最高速度20km/hの規制区間という珍しいものが見られたが、果たして今回は何が待ち受けているのだろうか。
橋の顔である親柱は、シンプルながら年代を感じさせる造りだった。コンクリートの基礎に、白御影っぽいタイル状の石を切り接ぎしているようだ。いまは汚れが目立つが、いい造りだ。
これら親柱は、橋の前後の4本ともに健在だったが、おそらく竣工年が刻まれている銘板は、前述した「幅員減少」の看板に隠されていて、確認できない状況になっている。
他の3本の銘板には、「おやべばし」「小矢部川」「小矢部橋」の文字が、それぞれ刻まれていた。
このように現地では確認できなかった橋の竣工年は、帰宅後の調べで、昭和36(1961)年だと判明している。やはり、なかなかの壮年橋であった。
橋上からの眺めは、地方都市に架かる橋のお手本のような、きっと多くの日本人の郷愁を誘うものだった。
これは上流側を撮影しているので、奥に見えるのは旧国道8号である県道42号の石動大橋、
その向こうには、旧北陸本線(あいの風とやま鉄道)の小矢部川橋梁や北陸新幹線の高架橋も見える。
遠くにぴょこんと突き出した塔は、砺波平野を一望する小矢部のシンボル、クロスランドタワーだ。
う〜〜〜ん、癒されるニャン。
癒されたあとはー
直角カーブ。
小矢部橋は、橋の両口とも直角の右左折を強いられる線形になっていた。
ドライバーには喜ばれない線形だが、このくらいで驚く人もいないだろう。
このくらいならな…
辿り着いた小矢部川右岸は、左岸よりも民家がすぐ近くまで迫っている印象だ。
橋詰めは直角カーブになっているが、カーブ外は切り立った擁壁で、すぐ下まで住宅地になっていた。
11:28
ここで、地図に描かれているやべぇ線形と、
目の前の景色を、見較べてみよう。
(なお、“破線”の部分は、地図では道として描かれているが、実際は堤防で、道ではない)
県道72号は、橋を渡ると“逆コの字型”のカーブを描いて、丁字路に。
そこで何を思ったか、県道は右折して、こちらへツッコんでくる!
だから…
くっそ(笑)
笑わせないでよ(笑)。
小矢部と砺波の間を移動する目的で、ここを県道のルート通りに車で通った人、どれくらいるんだろ?(笑)
Post from RICOH THETA. - Spherical Image - RICOH THETA
↑ 全天球画像もどうぞ。
県道72号は、私の周りをぐーるぐると270度回転してから、目的地へと離れていく。
ループ(360度)でもターン(180度)でもない、奇妙な線形。
しかも、カクカクしていて、全然スマートじゃない(笑)。
下にある県道路面との間には、5mも落差はないのに、この迂遠ぶりだもの。
1本の県道としての連続感の薄さが、半端ないのである!
それでは、いま見下ろした“やべぇ道”へ、向かってみよう。
まずは、橋の袂を直角に左折して、一旦下流方向へ。ここから下り坂である。
チェンジ後の画像は、右岸から振り返る小矢部橋の勇姿だ。
どうしてこの橋の前後は、両岸とも直角カーブになってるんだろう。
交通上のネックになるのは、分かりきっているのに。
原因として考えられる一つは、橋の高さを高くするためだ。
周囲にある住宅地はもちろん、前後の堤防よりも橋は高い。
洪水時に橋の流失を避けるべく、堤防よりも高くした可能性があり、その高さのために、住宅地内の前後の道と綺麗に繋げられなくなった可能性がある。
橋の安全を採るか、道路としての便利を採るか、悩んだ末の決着なのかも知れない。
さらにグイッ、グイッと素早く2度曲がって、突き当たりの丁字路が見えて来た。
ここまでは道幅が結構広いので、線形は悪いものの、自動車でも通行しづらいことはないと思う。
問題は、ここからだ。
11:31 《現在地》
この丁字路で、先ほど同道をはじめたばかりの2本の県道は、離別の時を迎える。
本当にただ、小矢部橋を一緒に渡っただけの行きずりの関係だった。
県道324号は、左折。そして、我らが県道72号は、右折する。
これまで、こうした県道の分岐地点には欠かさずあった“卒塔婆”も、なぜかここには見られない。
県道72号の進路を明示することに、何らか後ろめたさがあるのだろうか。そんな勝手な想像もしてしまう。
“卒塔婆”はないが、ここにも「富山県高岡土木センター小矢部土木事務所」が設置した看板が立っていた。
曰く、
「この先 右折通り抜け 出来ません」
どうやら県道72号は、通り抜けが出来ないらしい(笑)。
…聞いてないよぉー(ねちっこく)。
……困ったなぁ(白々しく)。
だって、事前に見てきた、富山県が公開している県管理道路の通行規制状況には、この道路の通行不能なんて情報はなかったはずだぞぉー。
しょうがないにゃあ…。
(→)これは、左折した先の県道324号の風景だ。
小矢部橋を渡る前の県道72号をコピーしたような、赤茶けた雪国の街路風景が続いていた。
そしてこの道はこんな感じのままゆるゆる800mほど続いてから、旧国道8号である県道42号に合流して終点を迎える。
やっぱり交通量は多くなさそうだが、それでも、小矢部橋を渡る交通量のほぼ全量が、この道を通っている。
我らが県道72号はといえば……
はい、振り返ってみて。
ふふっ。
ここは、主要地方道坪野小矢部線。
壁の上も同じ道。
ここをまっすぐ緩やかな坂道にしたら、橋への取付道路としてベストだったろうけれど、
それをすると、左右の家にはアクセス出来なくなるわけで…。
11:32 《現在地》
やっぱり、やべぇ!
「通行止め」や「通行禁止」ではなく、「通り抜け出来ません」と言われていただけだが、
確かにこれは、ちょっと…、どうだろう?
↑ グーグルカーも、ここまで来ているが、
このカーブを曲がってみようという気にはならなかったようである。
これから実際に、連続写真で曲がってみるので、
免許を持ってる皆様は、ちょっとあなたの愛車で想像してみてください。
そして最後の感想欄に、通れると思うかどうかのコメントをください。
電柱が邪魔すぎる!
直角カーブのインの最悪の位置に電柱が立っている。
右側にも電柱があるので、電柱と電柱の間をすり抜けるように走る必要がある。
この先にも車の姿が見えるので、通り抜けに問題があるのは、おそらくこの直角カーブだけなのだろうが、キツい! キツすぎる!!
電柱には、ドライバーたちの悲しみの傷跡が……
ここにこびり付いているのは、地図を見て半ば盲目的に「緑色の道路ならば通れるはず」と信じた、無垢な新米ドライバーたちが操った新車の塗装だろうか。
最大幅の規制標識がどこにもないだけに、地図(カーナビ)を頼りに盲進すれば、本当に起こりそうな末路である。
恐ろしい罠だぞ、主要地方道坪野小矢部線!
しかも、ここで車を擦りながら必死に走り抜ける行為には、申し訳ないが、かっこよさがない(笑)。
これが山奥のギリギリ絶壁道とかだったら、傷つきながら突破する姿にも決死のロマンが見えるかも知れないが、こんな周りにいくらでも迂回路がある、ぜったい通らなくてもいいような道でヤルのは、きっと自慢できない…。
いろいろな意味で、ドライバー泣かせなのである。
曲がりきることさえ出来れば、あとはどうにか通れる道が続いている。
“今日いち”で狭いが、今のカーブを走れる人ならば、こんな狭さは何の足止めにもならないはずだ。
なお、歩行者専用で、橋の袂からここまでショートカットが可能だ。
この段差を埋める狭く急な階段が、取り付けられていた。
もう、階段県道でもいいんじゃねーか、ここ(笑)。
さすがの私でも、ここでは実際に通行する「エキストラカー」の姿を見ることは出来なかったのである。
誰も走ってないだろ、このカーブ。
ほんと、なんでこんな所が主要地方道に指定されたんだーろ?
お読みいただきありがとうございます。 | |
当サイトは、皆様からの情報提供、資料提供をお待ちしております。 →情報・資料提供窓口 | |
このレポートの最終回ないし最新回の 【トップページに戻る】 |
|