2008/5/11 9:40
この日の朝、日光市街にエスクードを乗り捨ててきた私は、霧雨の降る国道120号を西へ進んできた。
この日の最終攻略目標は「華厳の滝と鵲橋」であったのだが、そのレポートが午後から始まった事を覚えているだろうか。
これから、私が午前中に何をしていたのかが明かされようとしている。
現在地は、今も昔も「いろは坂の登り口といえばここ」という、「馬返」だ。
ここで国道120号は2本に分かれる。
左折の第2いろは坂と、直進の第1いろは坂である。
しかし、残念ながら私に選択権はない。
第2いろは坂が昭和41年に有料道路として開通したとき以来、これが中禅寺湖畔への上りの交通を一手に引き受けることになった。
そして、より古い第1いろは坂は下り専用の道になってしまったのだ。
私も、よりハードな印象の第1いろは坂をチャリで登ってみたかったが、それは叶わぬ夢であった。
驚いた。
道路情報の電光掲示板に書かれているのは、「積雪・スリップ注意」の文字である。
もう5月だぞ。
東北の山奥ならばいざ知らず…。
まあ、この馬返でさえ既に標高872mもあって、中禅寺湖まで行くと1300m近いので、秋田あたりの平地よりは遙かに寒いのかも知れない。
それでも、5月の積雪は珍しいとは思うが…。
ぶっちゃけ、雨の探索だって言うだけでも気が重いのに、ぐっちょり濡れたみぞれ雪なんて、堪忍だぞ。
ぶっちゃけ、明智平から「はい。」ってレポートを始めても、旧道探索としてはぜんぜん不足はないのだが、「いろは坂」という道の国民的知名度を鑑みれば、素通りというわけにも行かないだろう。
つか、単に私がめっちゃ興奮しているだけなんだけど。
古くからの山行が読者さんなら分かるよね!この胸のトキメキ。
ヨッキれんはもちろん廃道は好きだけど、重交通に喘ぐ現役の峠道というのが、もっと好きなんだ。
見てくれよ! この分岐のアツさ!!
右も左も同じ国道120号なのに、どっちも一方通行で、ここから10km近くも分かれて走るんだぜ!
サヨーナラー。
さっさと廃道のレポシローというせっかちさんは、こちらをクリックしてね。
第1第2いろは坂の分岐地点は、上り専用(紛らわしいが、いろは坂の上りね)のロードサイドパークになっていて、そこにこんな看板があった。(クリックすると拡大)
第2いろは坂には、1Cから20Cまで合計20のカーブがあるのが分かる。
目指す明智平はその先で、明智平のさらに先に今回のターゲット、「明智トンネル」が描かれている。
ちなみに、17Cと18Cの間にどう考えても数に含めて良さそうなカーブがあるが、これは第1第2合わせて48のカーブ(いろは歌)に合わせるための苦肉の策なのだろうか…。
出発。
第1いろは坂に別れを告げ、第2いろは坂へ左折する。
目指すは7km先の明智平。高低差はたっぷり400mある。
温まれそうだぜ!!
入口には、間違っても逆走が起こらないように、一方通行であることを周知する様々な標識や看板が設置されている。
これがまた、いちいち私をドキドキさせた。
ちなみに、第2いろは坂が無料化されたのは昭和59年で、それまでは第1、第2ともに「県営日光いろは坂有料道路」とされていたのだ。
修学旅行で通ったことのある人も多いと思う。
まずは大谷川を渡って森へ入る。
ここから上り坂が始まる。
小さめの青看には、中禅寺湖9km、明智平7kmと書かれてあった。
2車線あるが、どちらの車線も上り車線である。
車はどっちを通っても良いのだが、普通の道路と同じで右側が追い越し車線のように使われている。
聞いた話によると、一昔前までは左車線がバスレーンとして使われていたとのことだ。
何気なく走っていると、右の車線は対向車線のような気がしてしまう。
いろは坂が始まる前はそうだっただけに、なおさらだ。
道路管理者側もそう言うドライバー心理をわきまえているのか、意図的に右車線にも道路標示を付けるなど、どちらも上り車線であることをアピールしているようだ。
この写真の奥の方に、右側にちょっとした空き地が見える。
この場所から…。
ぐい────ん!
と、トンデモナク登っていく階段(廃)がある。
このトンデモナク登っていく階段(廃)は、前々からタレコミさん及び調査依頼のとても多かった有名廃物件「明智平のケーブルカー」へ繋がっている、かつての保線道路なのだが、今回はまず置いておく。
別にもったいぶる訳じゃないけど、今回は置いておくんだってばさ。
11:43
あれ? なぜか2時間過ぎてるニャ。(笑)
ケーブルカーの廃線跡と交差(とはいっても橋はない)した国道は、一つめのヘアピンカーブへさしかかる。
ドリフトしちゃダメェ! って感じで、路面にペコペコ舗装と、中央線にポコポコ出っぱりが設置されていたり、カーブによってはなかったりする。
「あのころは良かったよ…」なんてモニターの前で独り言の人も居るんでしょうかねぇ。
いろは坂といえばやっぱりこれ。
一体いつからあるのかは分からないけれど、私が子供の頃にはもうあった(と思う)。
いろはの、い。
1番目のカーブである。
…でも。
こう言うのがあるから、よけい走り屋さんを扇情するんでは?
いろは坂といえば、狭い斜面に幾つもの九十九折りが折り畳まれて、所々それでも土地が足りないところでは、カーブの外側が橋になっちゃったりしていて、そこを大型観光バスが斜めに詰まりながら、時にはガードレールと火花を散らしながら(オイオイ)下っていく…。
あたりにはサルがバンバン飛び交って、子供が車内で頬張ろうとしているソーセージを奪い取る。
そんな鉄火場を想像していたもんで…
正直、第2いろは坂のゆったりペースにはちょっと拍子抜け。
とはいえ、2車線たっぷり使った道が、バンクを付けながら雄大に登っていく姿も、またイイもんでして。
小生、濡れちゃったわけで。
でもやっぱり?
右車線を車が走っていく姿は馴染めなかったりもするわけで。
気付けばもう「い⇒ろ⇒は⇒に」と4つめのカーブにさしかかっていたわけで。
実は、カーブごとに立っている「い」とか「ろ」とかの看板も全て写真に撮っているわけであるが、考えてみればこれといって使い道もないわけで…。
「や」「ま」「さ」「い」「が」←ない!「ね」「が」←ない!
「は」「い」「ど」←ない!「う」。
「よ」「っ」←ない「き」「れ」「ん」。
「にほんのはいどう」も無理だし、何かに使えないかねー。
…「にほんのはいとう」 じゃ別のものみたいだしな。
「やまさいかねか」 じゃヌルいよなぁ。
「よつきれん」??
…どーでもいいか?
どーでもいいな。
さらに「ほ」のカーブを過ぎると九十九折りが一段落。
そこで、海抜1000m地点であるという標識が出て来た。
登りはじめから130mほど高度を上げているわけだ。
で、この辺りは右側に大きく大谷川の谷がひらけて視界がよい。
ちょっと見てみましょうかね。
うーーーん。
もうちょい拡大。
実はこの場所からケーブルカーの廃線跡がはっきりと見える。
しかも、橋がある。
…あるんですよ。
おおっ
おおっっ
怖いなー。
申し訳ないけど、チャリだと左車線は余り走りたくないですよ。
「へとちりぬるをわかよた」
「れ」は17番目のカーブ。
ここに、始めて車を停めることの出来る小さな駐車場がある。
その名も、黒髪平という。
私も最近抜け毛が気になっているんだが、…まあ関係ないな。
いや。
同じようなカーブが延々と続くもんで、途中全部端折りました。
しかも期待していた眺望も霧のため全然でして、今走っているカーブ一つずつしか見えない「いろは坂」は、はっきり言って面白くも何ともないわけでして…。
さほど目立たないこの駐車場に、「日本の道百選」の立派な石標が建っていた。
下の方には、栃木県の撰文が次のように刻まれている。
「「いろは坂」の名は四十八箇所のヘアピンカーブの数に由来します。この坂は、国道120号の最大の難所でありましたが、現在では全国でも希な、上り下りが完全に分離された観光道路となりました。
四季折々の景色、特に春の新緑、秋の紅葉がすばらしい道路です。」
別にツッコミ所はない。
九十九折りは黒髪平で終わり、あとはポツポツと「そ」「つ」「ね」のカーブが現れ、第2いろは坂のいろは歌は終わる。
この辺りはさほど勾配も無く、道も何となく「やり遂げた感」を演出している。
明智平までは、消化試合だ。
明智平まで1kmという標識の先で、今度はこんな標識が現れた。
これは、どうやら左右の車線ごとに行き先を分けるぞと言うことらしい。通行帯区分だ。
うわ。
道路に沢山の文字が。
まだ分岐までは800mくらいあるのに、気の早いことで。
しかも、センターライン上には既にポコポコが現れていて、浮気はダメよ!との事である。
今はこんなに空いているが、繁忙期となればこの辺りまで渋滞が発生するのであろう。
短い「明智平スノーシェッド」をくぐり、いよいよ明智平に到着だ。
右車線が、カーブの頂点で右へ弾かれていく。
直進は許さないぞという作りだ。
もっとも、この20m先からは普通の相互対面通行となるので、間違っても右車線の車が真っ直ぐ行くような事があってはならないわけだ。正面衝突してしまう。
変わった交通誘導の姿に、凄く地味に感心した。
12:53
3時間10分もかかって(かかりすぎ)、やっと明智平に着きました。
近所のスーパーの店内放送ばりに大音響で音楽が響いてますけど、凄く寂しいです。
むしろそれが寂しい。
昔、こんな景色の八幡平の駐車場で一人のババへらアイスを見ましたが、可哀想で咄嗟におばあちゃんを保護したくなりました。
ここもそのくらい寂しい感じです。
さすがに雪はないが、気温も10度は切っていそう。さぶい。
雨が強くなってきたので、店内に避難です。
店内のお土産コーナーには、こんなものが売っていた。
普段滅多にお土産屋に入らないので、まさかこんなのがあるなんて知らなかった。
廃道でも、なんかやる??
「くねくね坂道を
かわいいキティがご案内(ハァト)」 ですって。
「ぐちゃぐちゃ廃道を
かゆい(←ウルシかぶれ中)キティが誤案内」 とかね。
……さて。
この寒い状態で廃道探しかい? 明智君。