2008/2/26 8:51
顔面流血の下山から15分。
仕切り直しとは言いながら、気になって仕方がない私は早速戻って参りました。
今度はこの沼津側にクルマを停め、とりあえず山腹の第二洞坑口前に放置してあるチャリ目指し、歩き出しました。
前回の反省を活かし、今度は素直に尾根を目指します。
たった10間の隧道ならば、きっと尾根のすぐ近くにあるはずですから。
8:56
先細りの坂道をテキパキ歩き、5分後には第二洞坑口前へ。
第二洞に遭遇した時点で気付いてはいたのだが、ここから左へ登る急坂がある。
(右図の赤いライン)
今度は、これを登ってみよう。
チャリはもう少し置き去りで、リュックは回収。
…リュックの中のジュースを…、ゴクゴク ウマー。
いよいよ道は人が歩くだけの幅、荷を背負って歩くだけの勾配となる。
しかし、その行く手には間違いなく鞍部。
周囲よりも尾根が一段低くなったところがある。
それは、見上げた空の形で分かる。
これまでで、一番隧道への接近を予感する光景。
しかも、いま登っている斜面の直下が、「山田」刻名や竣工記念碑のあった「第一洞」である。
これは来たかも。
あっ! ア───…
あーーあ…
……
…コイツは、 隧道無いな。
いま登ってきた坂はかなり急なので、たかだか標高70mそこらの峠だが、振り返る西側の眺めは優れている。
特に、手前の大平山(356m)から鷲頭山(392m)へと連なる山脈は「沼津アルプス」いう命名がされているほど明確な連山で、これらの山が海岸に下ろす幾筋もの支脈を超えるべく、人々は明治の頃から幾つもの隧道を掘り抜いたのだ。
本レポートの第一回で紹介した江ノ浦隧道などは、そのうちの一つだ。
白くて掴み所のない曇天が、なんだか憎たらしかった。
そして、ここはとても静かだった。
鞍部もまた、“無事”ではなかった。
明治期前半期と関東大震災の直後と二度、この地域に一大ゴールドラッシュをもたらした伊豆石の採掘事業は、地図では決して分からないような巧妙さで、天然の鞍部を壮大に拡幅、かつ掘り下げていた。
おそらく、この場所での採石は相当に早く行われ、そして終わったのだろう。
風雨に晒されない洞内掘りの現場と一概に比較は出来ないが、一度は完全に表土を失った筈の稜線上にも、ジャングルのような森が出来つつあった。
人が作業用の足場として垂直の壁に用意したような小さなポケットに落ち葉が溜まり、やがて少しの土を造り、そこから貪欲に生えだした木々が、こんな立体的な森を作ったのだ。
相当の時を要するに違いない。
鞍部の東側に道は続いていなかった。
おそらく地表ごと削り取られたか、藪に埋もれてしまったのか。
そこに、第二洞の出口があることはだいたい感じられた。(見えないが地形的に把握)
いずれにしても、鞍部はあるにはあったが、そこに隧道の痕跡として認められるようなものは何もなかった。
ここでいったい、隧道の何を探せばいいのだ!
壁? 天井? 洞床??
探すあてさえない。
ここは、隧道を求めたオブローダーが最後に辿り着く、空虚のラビリンス。
下山。
隧道は見つからなかった。
おそらく隧道は周りの伊豆石と一緒に、関東地方へ出荷されてしまったのだろう。いまもどこかのビルで使われていたりする可能性は限りなくゼロの近いだろうが。
しかし冷静に考えれば、昭和27年版以降の地形図で、それまで隧道が描かれていた位置に切り通しらしいギザギザカーブの道が現れているのだから…。【証拠画像】
開削というのは、至って当然の結末だろう。
せめて跡地が明確であればと願ったが適わなかった。
…それだけのこと。
さてと…
やるっきゃないか。
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9:11
正直、これで下山するのでは余りに不完全燃焼。
もし隧道が素直に見つかっていれば、この沼の事なんて忘れて帰っただろうけど…。
それに…、この第一洞には坑口に刻まれた「山田」銘や石碑など、“幻の隧道”との繋がりを連想させるものが多い。
多すぎる!
だから、この沼の奥に空洞があるのなら、そこにも何かがあるかも知れない。
これまでずっと隠されてきた、秘密のような何かが。
もぞもぞ
モゾモゾ モゾモゾ
実は、一度クルマに一度戻ったのは、 これ を考えてのことだった。
ボートは無くても、着替えならある。
それに、ボート代わりの “ひみつへいき” も…。
ひみつへいき
装備完了!
いったー!!!
躊躇わず
ヨッキ行ったーー!!
おおぅうおぉぉ…お
もう足が、チョンともつかねぇ。
ライフベストは偉大だ!
全然浮かんでられる。
で、でも怖えー!!
もしライトを落としたら真っ暗だし、
ナニかが足に絡みついてきたりしたら… こえぇぇ。
うわはははー。 洞内プールに、俺が、浮かんでるぅ!
あはははははは。ははははははは。
はははははははっっはははっはー…
ぐぁし!
もうちょっとで、
沼津地下沼アクアライン開通だ!
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