2014/12/9 13:53 《現在地》
ここは釣師隧道の東口。
このトンネルを今しがたくぐり終えたところだ。
『平成16年度道路施設現況調査』によれば、この全長61mのトンネルの竣工年は昭和56年で、見ての通り幅が随分と広い。9.1mもあるそうだ。
また、昭和27年応急修正版の地形図にも、この同じ場所にトンネルが描かれているので、おそらく最初は素掘のトンネルだったのだろう。岩船隧道と同じように。
なお、トンネル前は津波発生時における緊急避難地に指定されているらしく、いすみ市が設置した案内板があった。
その中に“定番の誤字”を発見してしまったが、誰も気にしていないから、直されもしないのだろう。幾らWindows標準搭載のIMEが「ずいどう」を「隋道」と変換する(今は違う?)からって、このミスが全国的に多すぎるよ!!
私は基本的に、探索中自転車で初めての道を通るときは、特に何もなくても、だいたいカーブを曲がる度に1枚は写真を撮影している。
ひとくちで探索中と言っても、メインの探索の最中と、その合間の移動の最中とでは、当然撮影する頻度も違っているが、後者の場面でも上記の通りである。
そして、この釣師隧道をくぐって、クルマを停めておいた岩船漁港へ向かうシーンも後者であったが、自転車を運転しながら、トンネルから二つめくらいのカーブを撮影したのが、右の写真である。
変に前置きが長くなったが、矢印のところに、何か色々な看板が立っているのが目に付いた。
それで自転車のブレーキをかけた。
典型的な、偶然の出会いであった。
13:55 《現在地》
な! 何だこの有り様は!
この道端に、一体いくつの「危険」と「禁止」が並んでいるんだ?!
しかも、咄嗟に見ても、何が危険なのか全然理解できない。
「転落死亡事故」とか「落石」とか書いてあるけど、そこにあるのは、ただの竹林ではないのか??
何か得体の知れないものを感じたが、まずは近付いてみよう。
うおおぉ!!
奥に隧道らしきものが!
だが、本当にこの有り様はいったい何事?!
多くの警告板があるが、その設置者の名前も様々であった。
「注意 この先落石あり
」は、千葉県大原土木事務所。
「危険 この先通行禁止 転落死亡事故多発地点
」は、いすみ市・いすみ警察署。
「落石のおそれのあるため漁業関係者以外の立入を禁止
」は、不明。
「この先崖崩壊のため立入禁止
」は、いすみ市農林水産課。
(朽ちた)「通行禁止
」は、いすみ市。
なにこれ…… 得体が知れなすぎて、少し気持ち悪いぞ。
私の熱狂を誘う、異常な数の警告板。
状況が全く飲み込めない。
一旦冷静になるべく、少しだけ現場を離れ、遠巻きに眺めてみた。
場所の状況はこうである。
市道から、階段が刻まれた歩道が、南の方角へ分かれていた。
歩道は下りながら、おおよそ30mほどで小さな丘のような山の根に潜っている。
短い隧道がそこにあるのだが、これだけの風景から警告板の真意を汲むのは難しい。
大縮尺の地図で、現場の状況を把握しよう。
実際ここへ来るまでは、市道からは釣師海岸が見下ろせるものと思っていたが、実際には(この地図の等高線をつぶさに観察すれば分かるように)、市道と海岸の間には小さな尾根があって、視界を遮っている。だから海は少しも見えないのである。
赤く示した坑門と、そこへ通じる小道とは、私がベースの地理院地図に書き足したものだが、位置は間違っていないと思う。
そして、この歩道とトンネルは、市道から釣師海岸へ降りるために用意されたものであろうということが、地図を見ることで予測出来た。
繰り返すが、市道からは海が見えない。だから、地図を使わずにこの行き先を想像する事は難しい。