木戸川森林鉄道 (乙次郎〜木戸川第1発電所) 第2回

公開日 2012.07.07
探索日 2006.12.09
所在地 福島県楢葉町〜川内村

路盤を辿って行くならば、現れたるは…



2006/12/9 11:51 《現在地》

さて、進行方向へ向き直りました。

現在地は、乙次郎沢出合から500mほど木戸川本流を遡った右岸の、軌道跡路盤上。

我々が最初に路盤へ登った地点から50mばかり上流へ移動してきているが、ここは(下から目視で確認した部分を含めても)初めて安定した地形を感じられる地点であった。
ここで一度息を整えてから、これから長くなるであろう探索に、取り組もうと思う。


ん? 何か足元に落ちてるぞ。



プ!
プリキュアふりかけ?!


こんな所で、フリカケご飯を食べたのは、誰なんだ?
しかし、ゴミを捨てていくとは、プリキュア(というアニメの内容は知らないが)の精神に反しているのでは無かろうか?
大自然にかわっておしおき! されるで……。

私とくじ氏、
山で不思議なものを見たと、思わず顔を見合わせてしまった。




気を取り直して(?)前進をはじめると、本当に僅かな距離で、またしてもの橋に出会ったのである。

木橋であったようだが、その橋桁はバラバラになって小さな沢に落ちていた。
一対の橋台の他には何も無いという、取るに足らない遺構ではあったが、この探索の前途を占う上では、重ねて不安になる光景であった。
今回は容易に迂回出来る地形だったけれど、この頻度で橋が頻発するとなると、いつか… 絶望的な光景が現れそうだ…。

それと、今まで見てきた2本の橋も同じだったと思われるが、本橋の橋台は石造であった。
記録の上では、この区間の軌道の敷設は昭和20年代とされるが、それにしては古風というか、敢えてコンクリートを選ばなかった理由が気になる所である。




濡れちゃうよぉ…。

もう既に、下半身は乙次郎(下降)のせいでびしょびしょだったが、ここに来て雨の笹藪の洗礼である。

さすがに防寒対策はばっちりしてきたつもりではあったが、みぞれ混じりの雨で濡れた笹の冷たさは、川の水の冷たさとは比較にならなかった。
例によって今回も手袋を着用していない私にとって、この展開は地味に気力と体力を奪い去る、強力な障害であった。

今さらグダグダ言っても始まらないから、「遭難でもしない限り、数時間後には温かい車に辿り着ける」と、自らを奮い立たせた。
実際、立ち止まっている時間が最も寒かったから、このときは私が先頭になって、やや乱暴なくらいの歩速で進んでいった。



プリキュアの後は、野球ボールだと…?

河原であれば分かるが(上流にいくつも集落があるので)、どうしてそこから2〜30mも高い軌道跡に落ちているのだ?

よく見なければ野球ボールと分からないほどに表面が傷んでいたが、間違いなく、それである。
笹藪のただ中に、何気なく転がっていた。

川に放ってみたい気持ちを踏みとどまり(新種の妖怪の罠かも知れないからな)、元あった場所に戻してから、再び2人首を傾げて、歩き出した。





地形図でも、この辺りはかなり急な斜面が描かれているが、軌道は臆することなく、高い石垣を随所に築きながら、正面から横断していた。

いつ致命的な崩壊や落橋現場が現れやしないかと、内心ビクビクしていたのだが、そういうものが現れることはなく、ただ慎重な歩行を強制される場面が、約10分にわたって続いた。


…景色に変化を期待しはじめた、ちょうどその頃、

それは、現れた。




12:08 《現在地》

路盤上を歩き出してから推定500mの地点では、こんな予想外の光景に出会った。

今までと変らない様子で続いている荒れた軌道跡の道から、唐突に左の山手へ登っていく階段路が分かれたのである。

階段は、公園にあるもののように丸太で段差が付けられており、その老朽具合から見ても、作られてからそんなに時間を経過していないようである。
公園整備という事は無かろうから、考えられるのは、ダム整備関連の作業通路だろうか?

林鉄に関連した「発見」を期待して「カーソルオン」した方には申し訳ないが、これは素通りの対象にしかならなかった。

この階段路が現在も生きていれば、右岸の山上に延伸整備された木戸川林道とどこかで繋がっているだろうから、木戸川湖を回避して軌道跡へアクセスするルートに使えそうである。





階段を無視して進むこと、1分後。

前方に笹生える小山を切り通した、小さな堀割が現れた。

…景色に変化を期待しはじめた、ちょうどその頃、

それは現れた。





マジで。






現存☆木橋
 出! 現!



うっひょ〜〜〜!!! コイツは渡っちゃうか?!
渡っちゃうか?!




渡橋は自重しました。

橋は連続3径間あり、全径間に木桁が乗っていたものの、
第3径間は3本の主桁の1本が外れて落ちている状態で、

個人的に、主桁が1本でも欠けている橋は渡らないのが「吉」と、判断することにしている。

主桁の欠落は、橋の耐久力が自重さえ支えられないほどになっている可能性大。

私の体重程度でも、残りの主桁が墜落する可能性があると、そう疑ってしまう。
まして、このように「ほとんど積雪しない」場所では、
本当にギリギリのバランスで保っている可能性があるだろう。

…そもそも、本橋は無理矢理渡らずとも、容易に迂回可能であるしな…。



それにしても、いい橋 だ。

前回の最後に間近で見た落橋した桟橋(地図上の「橋2」)よりは小振りだが、それでも十分過ぎる存在感を有している。
やはり、“架かっている”というのは、何者にも勝る美点であると思った。

架かっているということは、普段見慣れすぎた(苦笑)橋桁の上に、どのようにして木桁が乗っかっているのかという事を、間近で観察する機会を与えてくれる。
橋台にしても同様だ。

写真でお分かりいただけるとおり、橋脚や橋台に直に主桁が乗せられているのではなく、交差方向に置かれた2段の丸太を介して為されているのである。
この丸太材は、気温や湿度による主桁の伸縮や積雪による撓み、多少の地震動などに対する“緩衝”の役割を果すと考えられる。

また、興味あるのはそれだけではなく、重厚な石造の橋台と、のっぺりとしたコンクリート造りの橋脚の対比も面白い。
本路線の橋はほぼ全てこの組合せであったが、これが当初からだったのか、後に橋脚のみ木造をコンクリートに置き換えたのかは、不明である。




橋を渡らずとも、その“線”から3mと離れることのない、最小限度の迂回中。

対岸の橋台によじ登る部分が、写真で見ても分かるとおり急であったが、
笹の葉を手がかりに無理矢理、よじ登った。


そして、息を整えつつ振り返る…



魅惑の現存橋梁。


この微妙なカーブが 苔むした木材が 容赦しない河床との比高が

いいんすよ。全部イイ!

ええもん見た。来た甲斐あった。



大きかった「橋4」を過ぎると、再び砂地の浅い堀割が待ち受けており、

馬の鞍状に盛り上がってしまった路盤を越えたところ…




12:16 《現在地》

もう1本、橋があった!

しかも、またギリギリのところで、架かってる!

この橋も3径間だが、規模は直前の橋よりもさらに小さく、長い主桁材さえ確保出来たら、1径間で越せそうなほど。
短い径間ごとに仕込まれた頑丈な橋台とコンクリート橋脚のおかげで、辛うじてではあるが、本橋も原形を留めたまま私の前に現れることが出来た。

渡りはしなかったけど、続々現れる“架かった木橋”の歓びに、先ほどまでの「おっかなびっくり」もどこへやら、我々の興奮度はぐいぐいと上昇していった。




頭上に小橋を見送りながら、

さらなる出会いに胸を躍らせる。

そんな、まだまだ序盤の道行きだった。