尾盛駅への道 序

公開日 2010. 4.28
探索日 2010. 4.19


尾 盛 駅 をご存じだろうか。


wikipedia:尾盛駅 には、こう書かれている。


駅周辺に民家は無く、その上駅に通じる車道も1つも無い。このため鉄道でしかこの駅へ来ることはできない。
そのため、一部の鉄道ファンに日本で最も理想的な秘境駅といわれている。
2008年度の年間乗降客数は574人である。

太字は著者による

オブローダーというのは、元来「ひねくれ者」の資質を有する。

誰もが使う道ではなく、敢えて裏道を探し、無理に使われなくなった道を辿ろうとする。

「イケナイ」 「行けない」 と言われれば、本当にそうなのかと確かめなければ気が済まなくなる。

道が無いのに駅があるわけなんてないだろう」 と、そう心から疑う。


そして、「秘境駅ファン」というのも相当に「ひねくれ者」であろう。

非共益の誹りなどどこ吹く風で頑張る秘境駅を愛する者が、

年に500人以上も、

この「どこにも行けないホーム」に降り立っているという現実が、私には微笑ましい。





今日は記念すべき“出会いの日”になるかも知れない。


“オブローダー × 秘境駅ファン”


尾盛駅さ行がねが!




今回のテーマを一言でいえば、「尾盛駅に陸路で行ってみよう」である。

しかし、本当に尾盛駅に通じる道はないのか。

最新の地形図を眺めてみた。


うふふふふ。

確かに、一本も道が描かれていないでゴザル。



つか、なんでこんな所に駅があるんだ。

乗降客574人の内訳は、100%秘境駅ファンということか。




尾盛駅は、静岡県の私鉄大井川鐵道井川線にある一般駅である。
前後駅を含む範囲の地形図は、右の通りである。

この辺りは「接岨(せっそ)峡」と呼ばれる大井川の大渓谷地帯で、観光地になっている。
その観光の主要な足が井川線なのであるが、道路の整備も少しずつ進んでいるので、その存在感は相対的に減少している実情がある。(赤字路線である)

そして尾盛駅は、接岨峡温泉駅からは2.2km(線路キロ程ベース)、閑蔵(かんぞう)駅からは2.7km(同)離れた位置にある。

繰り返すが、地図中においては尾盛駅まで繋がる“線路以外の道”はないようである。
しかし、図中に赤くハイライトした「破線道」が、かなり“いい線”まで行っているのが、前から気になっていた。
その末端から駅までは、直線で500mと離れていないのである。

しかも今年4月上旬頃、読者のAIR氏から、この道を途中まで歩いてみたというタレコミがあった。
それによると、この道はどうやら「遊歩道」らしい。


あ、 間違った。



遊歩道らしい……。




かつて、接岨峡温泉駅から尾盛駅へ行く遊歩道があったのだろうか?

それでは、歩いて駅まで行ったという人も、いると言うことだろうか?

もしそうだとして、なぜ「廃」になってしまっているのか。


秘境駅としてはとても有名な同駅だが、この歩道についての情報は、ネット上にも無さそうだった。


やはり、行って確かめるしかない!!

             こういうの、ダイスキッス…。





しかし、駅まで歩いていって、ただ戻って来るというのも、ツマラナイ気がする。
せっかく駅に行ったのだから、やはりそこから乗りたいではないか。

この立地を信じるならば、尾盛駅の乗客と降客の数は、本来同じはずである。
だが、私のチャレンジが成功すれば、このバランスを僅かだが乱すことが出来る。
それってなんか、とっても楽しみ!!
乗員さんは、どんな顔をして迎えてくれるだろう…。

楽しそう!!


…というわけで、尾盛駅の発着時刻を確かめてみたのが、右の図。

この駅に止まる列車は、1日4往復8本である。
そのほとんどが午後で、1〜2時間に1往復ずつ列車はやってくる。

そして、悩んだすえに私は決めた。

 ★第一候補(乗車目標) 尾盛発14:53 (千頭方面行き)

 ☆第二候補(乗車目標) 尾盛発15:10 (井川方面行き)


 ○最終防衛ライン(終電だし…笑) 尾盛発16:28 (千頭方面行き)


あとはこの時刻から、踏破に掛かりそうな時間(90分)を逆算して、出発時刻(13:15)を決定したのであった。



レッツ! オブチャレンジ!




尾盛駅最寄りの駐車場(?)を出発


2010/4/19 13:15 【周辺地図】 《現在地》

接岨峡温泉駅は、犬間集落裏山の少し高いところにある。
そのため集落の表通りは、長島ダム建設に伴って広く明るく改良された県道388号接岨峡線が担っている。
集落自体も妙に綺麗だが、やはり長島ダム建設に伴って移転してきた家が多いためだという。

そして、接岨峡大橋のたもとにあるトイレ付き駐車場が、接岨峡温泉駅だけではなく、尾盛駅の最寄り駐車場である。
もし尾盛駅で「パーク&ライド」を試みるには、この駐車場が「パーク」ということになるが、ここから「ライド」までの道が…ありやなしや。

なお、写真内の赤い線は、私の動線である。
車を降りて、尾盛駅を目指すのである。




接岨峡大橋を渡って道なりに進めば、約2kmで閑蔵駅に行くことが出来るが、尾盛駅への道はここを左に行く。

左へ…。

お土産屋さんの脇…、幅1m足らずの道。

か、階段が…。


もちろん、何の案内もない。

大丈夫か?




30mほど小径を上っていくと、線路端に突き当たる。
そこで左を見ると、ローカル線の好ましい姿をした接阻峡温泉駅が間近であった。

レールの幅こそ見慣れた1067mmだが、ホームの高さが、ちょっとあり得ないほど低い。
いったいどんな列車が現れるというのか。
実はまだ、一度も目にしていない…。




振り返ると、「27」とペイントされた坑門があった。
井川線の第27号隧道である。
そしてその脇には、保線用通路にしては幅の広い、歩道用のガードレールが目立つ道がある。

もしやこれが、「廃遊歩道」と報告されている道の始まりなのか。
このガードレールは、曰くありげだ。




第27号隧道脇まで来ると、その道は右へ逸れていた。

その雰囲気は、確かに歩道のようであるが、と同時に「廃」を醸し出していた。

今にも両側の笹藪に掻き消されてしまいそうだ。

しかも、道幅に倣った小さな「Aバリケード」が置かれている…。






13:22 《現在地》

「本川根町役場建設課」と書かれたAバリケード。

ちなみに私も間違えていたが、本川根町(ほんかわねちょう)は平成17年に中川根町と合併して

川根本町(かわねほんちょう)になっている。

だから、今は川根本町というのだそうだ。

こんなに紛らわしい改名の真意は、何だったんだろう。


ともかく、ここから「廃道」が始まるようだ。




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ゲートを避けて先に進むと、思ったほどヤブヤブしていないようで一安心。

それに、土道の路面はほぼ平坦で、歩きやすい。
確かに遊歩道として使われていたとしても、不自然ではない感じだ。

間もなく、前方にまた何かの「立て札」が見えてきたのだが、この内容が相当に意味不明な、全く予想外のものであった。


何 だ と 思 う ?





「対向車あり」

って、マジで?


この道幅で「対向車」って…。

自動車?!

…まさかなぁ。

これは自転車のことなんだろうか…?
確かに、自転車くらいなら通れそうだが…。
看板はまだ新しげであり、謎が深い。





さすがにこれ、自動車は通ってないよね…。

なんか、肝心の所でガードレールが無くなって、
頼りないトラロープに変わってしまった。

序盤から、思いのほか険しいぞ。





バリケードから100m少々で、最初の山肌の出っ張りを回り込み、足元に第27号隧道の北口が現れた。

地形図の通りなら、これ以降は道の表記が消える最後まで、ずっと線路よりも上を通るはずである。
そして、その先についても、線路よりも下に行く理由は特に無い。
尾盛駅まで、ずっと線路よりも高いところを通って行くものと想像していた。

ガードレールが無ければ、古道か杣道か保線用通路か、いずれとも区別の付かなそうな「ソフト廃道」を順調に進んでいく。




橋 …だ。

この狭い狭い道に、橋が現れた。

まあ、水のない桟橋だが…、生意気にも「名札」が立っている。

第一竹の花橋」というそうだ。

なんか日陰で、存在感はとても薄いのだが、とりあえず…廃橋発見だ。
そして、確かに遊歩道だったんだろうなと、これで決定的に思った。





伝説的快挙(?)達成へのロードとしては、
今ひとつ覇気の感じられないスタートとなった、“謎の廃遊歩道”。

この道は私を尾盛駅へ連れて行ってくれるのだろうか?