読者さんから寄せられた情報をもとに私が突撃調査を敢行する、『読者からの調査指令』シリーズの第一弾。
いくつかのネタ情報を懐に、梅雨の合間となった2008年6月27日に神奈川県中南部へと向かった私が、その第一番目の突撃ポイントとしたのがこの、藤沢市の街中にある大庭トンネルであった。
まずは Nh3526氏 からの情報を、ほぼ原文のままご覧頂こう。
神奈川県藤沢市に「大庭トンネル」というごく普通の隧道があるのですが、北行の隧道内に、左へ分岐してるっぽい穴を見つけました (^_^)v が・・・バリケードが堅くて入れませんでした。また、外側からも狙いましたが、坑口が見つからず・・・・・
そこで是非、山行がに探索していただきたいのです。また、それが何の為の穴なのかも調べて頂けると幸いです。
場所ですが、「辻堂駅」から1Kほど北上した所です。
写真などは添付されておらず、この文章から私はいろいろと想像してみた。
まず次の地図をご覧頂きたい。
中央にあるのが、横穴があるという大庭トンネルだ。
ゴルフ場のある丘の下をくぐって幹線道路とニュータウンを結ぶような立地で、いかにも郊外にありがちな都市計画道路の雰囲気である。
これは余談だが、私が普段地図上からネタを探すときは国道や県道を重点的に見ており、無色の道はよほど怪しい形が無い限りわざわざ立ち寄ろうとはしない。
この大庭トンネルなどは、地図を見る限りどこにも怪しい部分はなく、おそらく情報が無ければ一生気にしないで過ごしていたに違いない場所だった。
読者情報によれば、「北行の隧道」の内部に、向かって左へ分岐する塞がれた穴(トンネル内分岐か?)があるとのこと。
しかも、この読者さんはわざわざ外からも探したが、それらしい坑口が見当たらないというのである。
この段階での私の推測は、二つのパターンに絞られた。
ひとつは、この大庭トンネルが戦中の防空壕的な物を利用して掘られたものであって、横穴がたまたま壁から見えているのではないかということ。
もうひとつは、それは電気室への入口のような、業務用であって外へは通じていない横穴なのではないかということだ。
前者ならば面白いが、後者だとちょっと… どうかなという感じ。
しかも周囲がゴルフ場になっているというのは、もし横穴が外へ通じていても、その出口を探すのが容易ではないような予感も…。
とりあえず、そんな緩い下調べで現地へ向かってみた。
現在地は、トンネルの南側の入口にあたる、国道一号新湘南バイパスの高架下。
ここから見る大庭トンネルは読者からの情報通り、「北行き」と「南行き」の二本が並ぶ並列4車線のトンネルであった。
今のところ、何も不審な点はない。
というか、端から見ればここでカメラを構えている私が不審かもしれないが、都会の中での私の探索はいつでも不審者を見る目の中で行われるのであって、交差点で写真を撮っているくらいはまだものの数ではないのである。
こう見えて、私はとても人の目が気になるのだ。
「大庭隧道」というバス停を過ぎて、電光掲示板の立つ坑口前へ。
防音壁に囲まれていることからも分かるとおり、周りは住宅街になっている。
20mほどの間隔を空けて並列する二本のトンネル。
ここでは上り線下り線と言わず北行き南行きと言った方がしっくり来るようだが、二本のトンネルそれぞれの構造物としての名称はそれらとはまた違っていて、一風変わっている。
大庭トンネル(L線)
1982年3月竣工
延長476m
幅員10.75m
藤沢市建設局
ちなみにもう一本は「R線」で、1986年3月竣工の延長446mとなっていた。
二本は同時に竣工したのではないが、わずか4年の開きと言うことを考えれば、当初から並列の計画があったのは間違いない。
果たしてこの先にどんな横穴が待っているのだろうか。
防空壕なんかがぽっかり口を開けていそうな雰囲気では無い。
お願い!!
この大庭トンネル内の構造物
(特に壁・内装板)等をこわした人を見か
けた方は下記へご連絡下さい。
おいおい。
トンネルの壁を壊すって、どんな怪力なんだよ…。
こういうのは妖怪ポストに手紙出した方がいいんじゃないか。
全長500m近いトンネルということで、それなりに長い。
そして、国道でも県道でもないが自動車の通行量はかなり多い。
左側の壁を特に注意しながら進んでいく。
中程まで来るとかなり暗い。
歩道は幅が広くていいのだが、歩道用の照明が無いのが歩行者には喜ばれなさそうだ。
どうやらこのトンネル、北側の出口付近にちょっと変わった仕掛けがありそうだ。
出口の見え方が普通とは違う。
さらに進む。
後半は急に上り坂になっていた。
しかも、その手前からトンネルの断面が角形に変化しており、開削工法によって施工された可能性が極めて高い。
ようするに、この先はほとんど地被りが無いのだろう。
それを証明するように、上り坂に変わる地点は右側が洞門のようになっている。
だが、未だ横穴らしきものは現れず。
不安になってくる。
これが角形断面になってすぐに現れる洞門。
そこにはL/R線の2本の洞門に挟まれた、まるで刑務所の中庭のような空間があって、そのなかにシャッターが下ろされた電気室が見えた。
…となると、横穴は電気室ではないのか?
なお、この“中庭部分”へ立ち入るには、L/R線どちらから行くにしても車道と歩道を隔てる高いフェンスを越えねばならず、通行量も多いので私は遠慮しておいた。
洞門区間で、遂にそれらしい物を発見した!
確かに向かって左側の壁。
何か横穴のようなものがある。
内装板とフェンスの二重のバリケードが施されており、立ち入る術は全くない。
しかも、内装板のせいで内部を伺うことも出来ない。
うーん。
これは何なんだ?
電気室ではないなら、ポンプ室とか…
何かの施設ではないのか?
少なくとも車道ではないように見えるが…。
うーん 覗きたい!
中はどうなってるんだ。
横穴の形は角形。
おそらく正方形に近いのではないか。
そして、大庭トンネルとは45度くらいの角度で接続している。
南西方向に向かっているようだ。
なにー!
バリケードの向こうにあるのは、横断歩道の標識ではないか!
…なぜこんな所に道路標識が…?
しかも、横断歩道なんてどこにある??
急にワクワクしてきた。
これは、歩行者が通るような、文字通りトンネル内分岐の可能性も出て来たぞ。
内装板の向こう側を覗くべく、車の流れが切れた時を狙って車道と歩道を隔てるフェンスによじ登った。
出口がありました!
血圧上昇。
この横穴。
どこかに繋がっている。
長さは30mくらいだろうか、車も通れる一車線幅のトンネルが真っ直ぐ続いていた。
そして、出口にもバリケードが設置されている。
しかも、この横穴トンネルがもともとは一般道路であったことを裏付けるように、向こう側に向けられた一時停止の標識が…。
ただし地図を見る限り、あそこはおそらくゴルフ場の敷地内…。
とりあえずトンネルをくぐり抜けた。
情報提供者も試みたように、あの光の届くところ。
出口を探すことにする。
まずはゴルフ場の裏側に回り込んでみるが…。
うーむ。
ゴルフ場の裏口。
人目は無さそうだが、場内立入禁止と明言されているし、地図にも書かれていない道。
すなわち、ゴルフ場の私道であると判断。
…ここは、やめておこう。
今度は大庭トンネルの北東側へ。
ちょっと例の横穴とは反対側なので、出口を見つけるということとは離れるのだが、ここにちょっと気になる道があるのだ。
それを見に行く。
この場所が気になっていた。(上の地図の「現在地」)
そこには、横穴がやはり口を開けていた。
地図を見ると、大庭トンネルとクロスする細い車道(以下「交差道路」と表現)が描かれているのだが、おそらくこれが大庭トンネルの横穴の正体ではないかと思うのだ。
そしてこの交差道路の東側が、写真の横穴なのである。
ここにも横穴が存在していることは、大きな意味を持っていると思う。
横穴から、大庭トンネルの南行き(R線)に入った。
やはりこのトンネルにも歩道と車道の間に高いフェンスがあって横断不可能だが、もし車道と“中庭”をこのまま横断すれば、正面に問題の「横穴」が開いているのだ
これにより、横断道路がかつて存在し、ある時期までは平面交差によって利用されていた可能性が高いと思われた。
これは全くの想像だが、平面交差が使われていた時期とは、まだトンネルが複線になる前の、昭和57年〜61年の間だけではなかっただろうか。
だんだんと「横断道路」という、横穴の素性らしきものが見えてきた。
だが、この目で向こう側の出口を確かめないとやはり気持ちはスッキリしない。
とりあえず外に戻って、ゴルフ場に進入することなく横穴へ接近する策を練った。
ここで有力な情報をくれたのは、このR線付近の草地をテリトリーにする中サイズの縞ぬこ G氏である。
普段我々がゴルフボール集めのバイトをするときに利用する間道がある。
すぐそこにトンネルを越える小径があるので、行って見るといい。
G氏の情報をもとにトンネル脇(←)から山に入り、手際よく複線のボックスカルバートを乗り越えるも、その先には有刺鉄線に守られた神聖なるグリーンが(→)。
しかも、プレーヤーたちが間近だった。
そそくさと逃げ帰る私。
これは本当に、ゴルフ場を通らず横穴へ行く術は無いのかも…。