2008/10/13 14:08
【現在地(別ウィンドウ)】
六左の件はどうした?
道路レポの続きはどうした?
…そう叱られそうだが、どうしても「速報」したい景色に出会ったので、こちらを優先させていただく。
現場は新潟県湯沢町。
関東と新潟を結ぶただひとつの一般国道である国道17号にある、八木沢トンネルだ。
旧道ではなく、現道にあるこのトンネルを、
語りたくなった!
ところで、探索日08年10月13日って、
それお前… 清水峠に行くからって、そう言い残して家を空けていた日じゃないか?
その空白の三日間の最終日だろ。
…まさか。
前に同じ国道17号の二居峠旧道をレポートしたときにも、清水峠の帰路だったよな。
たしか、清水峠の新潟側を途 中 敗 退したその鬱憤を晴らすべく突入していた。
お前、清水峠へのリベンジは…?
八木沢トンネルの南詰めに三俣という集落がある。(話をすり替えた)
ここは、南接する浅貝や二居とともに「山中三宿」と呼ばれていた三国街道の旧宿場であり、旧街道でもある旧国道は、民宿とロッジに占領された宿場の風景を通っている。
現在の国道は、昭和35年頃に三国峠の開通に合わせ整備されたバイパスで、旧国道と並行して清津川沿いを走っている。
で、何でこの写真なのかというと、ここにあるドライブインの自動販売機でジュースを購入したら、おつりの400円が何の断りもなく全部50円玉で出て来た驚きと、どこか損したような行き場のない気持ちを表現したかったからだ。
お金以上に掌が汚いのは、清水峠の死闘とは別に関係なくて、単に我が愛車(チャリ)のグリップのゴムがディートで腐食し、握ると融けたゴムが手に着くせいだ。
ああ…、地球上で最低のグリップだよ。
アプローチなどという大層なものはなく、
集落から北へ出ると間もなく、行く手に一本のトンネルが見えてくる。
それが今回の表題、八木沢トンネルである。
すげー標識の数だ!
19枚くらいある。
制限速度で走っていても、この全ての内容をちゃんと認識してからトンネルに進入するドライバーが、一体どれだけいるだろう。(そもそも、この国道17号は交通の流れが速く、制限速度で走っている車をほとんど見ないが…)
絶対にほとんどドライバーが、大半の標識の内容を“流している”と思う。
確かにこのトンネルには注意すべき問題が多少(多少以上?)あるのだが、この標識の数は群を抜いている。
今までいろいろな坑門前を見てきたが、1枚の写真に収まった標識の数はここがダントツに多いのではないか。
ウチの方が多いぞ! という挑戦は喜んで受けたい。
この景色を見せたかったというのが、このレポの一番だが、
これで「完」ではちょっと食べたりないので、
飾りではないモノたち彩られたトンネルを、少し詳しく見ていこう。
上の写真に写っている中では、最も手前にある「F型標識柱」。
そこには、いきなり一杯一杯と思われるだけの標識が取り付けられている。
その内容を1枚ずつ口語にしてみると、次の通り。
トンネルの出口には、急な右カーブがありますよ。
300m先には、中央分離帯がありますよ。
この先、幅員が狭くなりますよ。
100m先は、落石の危険があるので通行注意ですよ。
これだけの情報量が、一気にドライバーにもたらされるわけである。
この時点で、もう何がどういう順序で危険なのか分かりにくい。
落石?路幅?カーブ?中央分離帯?
一挙にトラブルが現れすぎなのである。
しかも、いまだトンネルの事にはほとんど触れていないことに注目だ。
続けて現れたのは、余り目立たない1枚ものの標識。
しかし、コイツはどう考えても高速で走る車から認識されようと努力していない。
道路標識失格だと言われても仕方がないだろう。
ただ盤面一杯に小さな文字が並んでいるだけなのだ。
確かに、文章をちゃんと読めば意味はよく分かるのだが。
トンネルが狭いのでトラックが一時停止することがあります (追い越し禁止)
八木沢トンネルは大型車同士がすれ違えないので、その危険を察知した大型車が坑口直前で急に停止することがあるから、追突しないように気を付けてね。(それを追い越そうとするなんて駄目よ。)
ちなみに、写真左に見える洞門は旧国道だ。旧国道は国道の下を潜っているが、歩道だけが接続している。
トンネルは眼前に迫ってきたが、1枚ものの標識がもうひとつ。
しかし、これだけは歩行者と自転車向けの標識だった。
とりあえず、自動車のドライバーははじめの2行だけ確認できれば問題がない。
一応内容を口語風に紹介すると、
歩行者と自転車の方は、この先の八木沢トンネルの通行は危険ですから、旧道をグルッと迂回してくださいね。
ということである。
どうやらこれは規制ではなく、お願いである。
どうでもいいが、「至東京」の文字には少し違和感をおぼえた。
なにせ、自動車向けの道路標識にさえ、200kmも離れた東京はまだ案内されていないのだ。
まあ、ツッコミどころとしては弱いが、歩行者や自転車向けに東京はさすがに遠いだろうと思う。
嵐のような標識のラッシュだ!!
と、とりあえず二本目の「F型標識柱」に注目だ!
なんと、この一本の標識柱だけで5つもの標識が取り付けられている。
しかも、文章を含むものが多数。ドライバーの動体視力が追いつけるか激しく疑問。
例によって、口語訳を並べてみる。
制限高は3.8mです。
制限幅は2.5mです。
大型車はトンネルの壁面に車体を擦る危険がありますので、注意して走行してください。
この50m先は、落石の危険があるので通行注意ですよ。
ここから6km区間は、連続雨量180mmになると通行止ですよ。
とまあ、今度はトンネルに関係した内容を中心に、様々な注意事項が並んでいる。
ひとつひとつの標識は珍しいものではないが、これだけ並ぶと壮観だ。
いよいよ坑門直前であるが、ここに最後の「逆L形標識柱」が設置されている。
取り付けられた標識は、補助標識を合わせて4枚。
ここは追い越しのための右側部分へのはみ出し通行は禁止です。
ここから先は、時速40km/h制限です。
ここは駐車禁止です。
内容は説明も要らないような平凡なものだが、真面目にここまでの複雑な標識の内容を頭にインプットしようとしたドライバーは、むしろこの、「警察がその辺でチェックしていそうな」重要な標識をスルーしかねないと思う。
トンネル直前の100m間に5本の標識柱があり、そこに合計15枚の標識が取り付けられていた。
時速50km/hで走行していたら、7〜8秒でこれらの全情報が目に飛び込んでくることになるわけだ。
そして、ようやく辿り着いた坑門。
昭和37年に開通した八木沢トンネルは、本来ほとんど無装飾に近いシンプルな坑門である。
上越国境の唯一の車道として混雑が予想されていただけに、開通当時としては車道幅5.5m(全幅7m)、高さ4.5mという規格は思い切った大断面だったそうだが、車輌も大型化した現在にあっては、これだけの標識群に守られて(歩行者・自転車までシャットアウトして)、どうにか(安全に?)利用されている。
坑門にも当然、標識たちが扁額を隠すように取り付けられている。
だが、ここにあるのは余り重要度を感じない標識ばかりだ。
天端を指し示す「矢印」は、他のトンネルでは余り見ないものである。
冬期に積雪のためセンターラインが見えない場合でも、とにかくはみ出さないで走ってくれと言う事なんだろう。
沿線のトンネルには全て取り付けているので、ここにも一応取り付けました。
今にもそんな声が聞こえてきそうな、「トンネル内ラジオ放送施設案内」の標識。
さらに、トンネルの異常等を見つけたらどこそこに連絡してくれと言う案内板。
もう、読んでもらおうなんて思ってなさそう。
実際、坑口突入直前にこんな小さな文字に気を取られていたら事故りかねない。
この標識の数自体が異常等ではというツッコミも、容易い。
ちなみに、ここが2度も予告されていた「落石注意」のポイントである。
もう忘れてなかった?
19枚もの標識に歓迎され、迎撃され、威嚇され…
ようやく、わずか201mの八木沢トンネルへ、進入できる。
真っ直ぐなトンネル。
特別に語りたくなるようなものはないが、出口に近づくと、ちょっとばかり壁の様子が…。
これは酷いクラックだ。 地下水ダダ漏れ。
あ、 あの… 異常等が発生してませんか、これ?
東京側とはうって変わって、標識類のほとんど無い湯沢側坑口。
だが、坑門自体の傷みが酷い。
アーチ環を模した部分は、度重なる車輌の衝突によって相当に破壊されたのだろう。
もう角を復旧することは諦め、衝突時の衝撃が弱まるよう丸められている。
しかも、それにもかかわらず…「肉がそげ、骨が見えている」状態。
ここまで酷く衝突されまくった坑口には、一体どんな問題があったのだろう…?
きっと、これが原因だ。
坑口前には直角に近い急カーブが控えている。
この悪い線形が、坑門に多くの車輌を激突させたのだろう。
もう覚えているドライバーは少ないかも知れないが、確かに予告されていた。
一番最初の段階で。
この「右急カーブ」も「中央分離帯」も。
道は、カーブの外側にチラリと八木沢集落を見ながらすぐ上りに変わって、上越国境に連なる三国四峠のラスト、芝原峠へ入っていくのである。
場所はここである。
北から旧国道を南下してくると、清津川に架かる大鳥橋が右に別れる。
この橋を背にして左のブロック擁壁を見ると、そこに…。
こんなものがある。
…これ。
坑口だよね??
埋められた。
間違いない。
坑口だ。 土で埋められているが。
しかし、立地的にも形状的にも、ただの隧道では無さそうだ。
そもそも、行き先が分からない。八木沢トンネルの横坑にしては離れすぎている。
またサイズ的に、人やせいぜい自転車くらいまでしか通れないだろう。
思い当たるものとしては、岩穴の中に安置された岩屋観音堂のようなものだが、果たしてそれを無造作に埋めたりするだろうかという疑問もある。
ウオッ!
隙間から奥が見えそう!
どうも、このコンクリートの壁面は入口だけのようで、その先は素堀らしい。
現地ではこれ以上探りようもなかったが、奥の手の画像処理で明度を強引に上げてみる。
隧道です…行き先不明の…。
土を退かせば中に入れそうなんだが、とりあえず今回はパス。
まあ、普通の隧道ではないに違いない。
また、一応八木沢トンネル内もチェックしたが、横坑を埋めたような痕跡も無し。
鉱山か何かの跡なのかも知れないが、まったく正体不明である。
調査完了