ミニレポ第264回 高滝湖パーキングエリアの未成道 中編

所在地 千葉県市原市
探索日 2021.01.19
公開日 2022.06.18

続・SAになれなかったPA


2021/1/19 6:52 《現在地》

封鎖された道の入口から500m来た。地形図にある道の終点まではあと半分、500mくらいある。

圏央道の本線とPAからの外回り線オンランプを慌ただしいアップダウンで彩られた2連続のボックスカルバートでくぐり終えた道は、直ちに直角左カーブとなって、再び上り始める。
この部分は線形も悪いのだが、路面より高い両側の地面がコンクリートウォールとなって視界を遮るためにカーブの先の見通しが全く効かず、地下駐車場の出入り通路を彷彿とさせるような圧迫感がある。

その分ちゃんとカーブミラーや反射材、滑り止めの舗装など、手を尽くしたと思えるだけの安全施設はあるものの、逆に言えばそこまでしなければ危険な道ということだ。極めて最近に整備された道にしては、なかなかハードであるといえる。




左直角カーブの次は、右直角カーブである。
厳密には直角カーブではなく、隅切りがされた90度の円カーブではあるが、再び見通しは絶望的に悪く、なるほど大型車通行不可というのも頷ける線形だ。1台ずつ通れるか通れないかと言えば通れるだろうが、通りにくいことが他の交通の支障になるに違いない。

しかし、このようにアクセス路の線形を犠牲にしてまで、限られた四角い土地の中にPAの施設を押し込もうとしたのだろうか。そんな印象を受ける。
こういう山中の道路というのは、何か特別な事情がない限り、もう少しゆったりとした線形を選べるはずだ。

そしてこのカーブに差し掛かるとき、正面にはいよいよ間近へと迫ったピラミッドの“異様”がそそり立つ! 威容ともえいるが、どちらかというと、異様だと思う。



ピラミッドの隣に道路を敷くとこうなるのか。

エジプトならばありがちな風景なのかも知れないが(?)、日本にはまずない景色である。
ピラミッドは直線の裾野を持っているから、その裾野を巡る道路はおおよそ四角形の形となるのである。それがここにある。地形図でもはっきりと四角形の3辺を回り込むコの字形の道路が描かれている。本当に変な道だと思う。

そして改めて、ピラミッドの大きさに驚く。
我が国にはダムでもビルでもこれより遙かに巨大な人工物はたくさんあるが、築山として、これより高いものを見たことがない。
それこそ、我が国版のピラミッドともいえる古墳とかなら、あるのかもしれないが。

PAの駐車場がある高さを基準にすると、この築山の高さは20mくらいなのだと思うが(地形図でも2本の等高線で描かれている)、今いる道はそれより低い所に“埋まって”いるので、その路面から見上げる高さは20m以上あるはずだ。たぶん30mくらいあるだろう。なんとも凄い迫力なのである。



上りながらピラミッドの北東角で、今度は左へ折れる直角カーブだ。
ここまでくれば、終点である高滝湖PAまで、残り200mである。
ほとんどPAの駐車場と同じ高さまで来ているのだが、道路の周りがもっと高いせいで、前半戦のような見晴らしは全くない。

それにしても、依然として道の外形は道路標識まで含めて完全に完成しており、完成したのに使われていない道路を“未成道”と呼ぶべきなのか、あるいはもっと別の言葉……未供用道路のような……で呼ぶべきなのか少し悩ましく感じた。これは作りかけの道路ではない。出来上がっているのに供用されていないというのが正しい。

なお、この辺りでちょうど朝日が雲間に現れ始めたせいで、撮影した写真の多くで陰影が極端に濃くなってしまい、そのままだと見にくいのでコントラストや明度を大きく弄った画像を使っている。不自然な色になっていると思うが、ご容赦願いたい。
といったところでピラミッドの外周2辺を回り終え、道のゴールへと近づく。



6:55 《現在地》

ピラミッド北西角へ近づくと、やっと上り坂が終わって平坦に。
そして1枚の黄色い看板が、先触れのように現われた。

この先 転回路有」

との見慣れぬ文言が表示されているが、確かに地形図にもそれらしい道形があった。
転回路というのは文字通り、車の方向を転換(転回)するための道路のことである。
ようするに引き返すための道があるということで、終点が近いことを予告されたのだと思うが、本当ならあるべきは転回路などではなく、高滝湖PAそのものだったはずだ。転回を目的にこれまでの1km近い道のりを辿りたいというのは、よほど奇特な者だけだと思うから(苦笑)。

しかも、この看板に予告された転回路というのが、地形図で見たような穏当な(駅前ロータリー的な)転回路とは一風変わった、なかなか強烈なものだった!




だだーっ広い舗装地にー
白線によって描かれただけの道がー
左へ90度折れていきー



描き出されるー

転回路



“R=14 転回路”

まるで虚無を代弁するかのような…

広い空間を持て余して余りある、地上絵の如き転回路だった!


いやほんと、虚無感がハンパないですわ……。



ぱっと見たところ、ここは高滝湖PAの隣接地であるのは確かだが、圏央道から出入りする駐車場やトイレなど、既存のPA施設がある地面よりも一段高いところであるようだ。
だから、本線も駐車場もトイレも全く見えなかった。

しかし見えなくとも本線から遠くないので、大型車の走行する音などはたまに聞こえてくる。それになんといっても、傍らにはどうやっても存在感の強すぎる、このPAを利用したことがある人にとって印象深いピラミッドがあるので、高滝湖PAにいるという感じは強かった。中なのか外なのかと問われれば、一応まだ外なんだろうが……。

で、転回路のある場所はちょっとしたグラウンドが収まりそうな大きな広場で、ピラミッドとは対称的に真っ平らだった。
その真っ平なのところの北側半分くらいがアスファルトで舗装されていて、そこに半径14mであるらしき単車線の転回路が真新しい白線で描かれていた。

普通に考えれば、駐車場とするための舗装された土地だと思うが、あるのは我が物顔の転回路だけだった。もちろん、舗装部分にもたくさんの余地があるが、そこは本当に何にも使われていなかった。ゴミ一つ、タイヤ痕一本ない、本当に綺麗なものだった。



6:56 《現在地》

?!

綺麗すぎる転回路を一周して、なんの後腐れもなく、“封鎖はされてはいるが形としては完成している道”の探索を終えるのかと思った最後の場面、転回路の最も南寄り(PA寄り)の数メートル分だけ、道がなかった。

作った後に壊したという感じではなく、もともとこのほんの少しの部分だけが未完成だったように見える。
まるでジグソーパズルで、最後の1ピースだけが嵌まっていないみたいな…。
そう……、確かにこの道は未完成だったのだ。
これでは、他の部分がいくら出来上がっていても、道として供用できなかっただろう。

しかしなぜ?
こんなほんの僅かな部分だけ、未完成のままなんだ??
土地としては全て整地されていて、もちろん取得済であるはずだ。そもそも、この周囲はみなPAと一体整備されるべき用地として取得、造成されたものではないのか。
そんななかで、この最後の容易げな“1ピース”だけが嵌められていないというのは…… ……少々、闇深いものを予感せざるを得ないぞ……。




虚無空間の全天球画像。

みんなが知っている圏央道、みんなが知っている高滝湖PA、

そのすぐ隣、簡単なフェンスに隔てられた向こう側に眠っていた空間が、これだ。

この高滝湖PAに隣接する未活用空間の存在理由を、
SA→PAへの計画縮小の結果であると理解するのは、おそらく間違っていないのだろう。
だが、どうして計画は縮小されねばならなかったかとか、
具体的な当初計画の内容など、気になることはいろいろある。


未成道としての道の探索はここまでだが、もう少しだけ、この場所の観察を深めよう。



上の全天球画像で私の背の方向へ30mばかり進むと、ピラミッドの南西側の角地がある。
そしてこの角の向こう側は、PA内として既に一般に開放されている空間である。
私がいる外側の空間と、PA内を隔てる直線上にはこの写真にあるような高いフェンスが連なっていて、開口部は存在しない。

そして、ピラミッドには頂上まで通じている歩道があるのだが、その入口もPA側にだけあり、私がいる外側から上る道はない。
が、登山の要領で道なき斜面を登攀することを妨げる柵は存在しない。

(自転車をここに停めて…)





直登ーッ!

(って簡単に書いたけど、気をつけてね…。

転んで落ちたら大変だよ…。下まで転げ落ちるカモだから。)




7:06 《現在地》

するとこうして、ワルニャン無しでPA施設に含まれる築山頂上に辿り着くことができるのである。
だからここは皆さんも見たことがある場所かも知れないが、頂上はこんなふうになっている。

……うん、えらく空虚なとこだよ。案内板一つないコンクリートの広場で、
椅子とベンチが2セット、なんか仕方なさそうに置いてあるだけ。
普通なら、なぜここにこういうものを整備したかみたいなアピールがあって然るべきなんだけど……。

虚無。


でも、まあ、いちおう、存在意義は、ある。




眺めが良いから。

隠せることなどもちろんなくて、例の転回路も、ご覧の通り。

なんとも所在なさげに見えて、仕方がない……。



まあ、普通はこっち側を見て欲しいんだろう。空撮みたにPA全体を見下ろせるし、遠くには地域の自慢である高滝湖が見晴らせた。

(だからあんまり右の方は見ないで…)




次回、未使用施設用地をちょっと探検。


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