2018/10/26 15:41 《現在地》 (海抜160m)
ここまでやる気を感じさせないバリケードは、珍しい。
まず、出来るだけ最少の資材で広い道を塞ごうという手抜き感がある。
Aバリケードの両端部材(富山県のシールが貼ってあった)と2本の鋼管を組み合わせて、市販品には存在しない幅の広いAバリを作っている。そしてそこに申し訳程度に「通行止」の道路標識板を木杭に取り付けたものを固定してある。
曲がりなりにも、ここは現役の県道であるはずで、そんな道になんの予告なく現れた封鎖がこの説明する気のなさというのは、道路管理者はこの道に興味がないと見える。どうせこんな道に来る人なんていなでしょと、そう考えられているのかも知れない。
なぜ封鎖されているのかということが、掲示されているものからは全く読み取れないのである。
しかも、これまでに比べて道自体は広いのが余計にチグハグだ。せっかく良さそうな道になった途端に塞がれている。
バリケードと分岐を振り返って撮影。
このバリケードはやる気がないせいか脇が甘すぎるので、私のような二輪の者だけでなく、四輪でも脇をすり抜けて通っている形跡があった。通行量が少ない舗装路は、タイヤの跡が路面に模様になって残るので、それがよく分かる。
15:42
まだ振り返ればバリケードが見える場所だが、道の山側半分以上を塞いでしまっている大きな倒木が放置されていた。
この倒木が通行止の理由とも思われないが…。
なお、さっきから道幅が広くなったとは書いているが、その具体的な広さは、ずばり2車線である。
山中に唐突に現れた2車線道路!
まだ先の状況は分からないものの、状況的に、未成道感が半端ない!
15:43
すぐにまた倒木!
今度は、右幅の右側半分が使用不能になっていた。
右に左に、もはや2車線道路の車線を守って走ることは何人たりとも不可能だ。
でもこの倒木には、ノコギリか何かで部分的に除去された形跡があった。
道路管理者の手口とも思われないので、おそらくこの路面に数少ない四輪の轍を刻んだ何者かが草の根活動的に道路整備をしてくれたのだろう。おそらくは、私と同じ“趣味的通行”の者だと思う。まあ、この先に鉄塔とか、何か管理のための通行がありそうなものがあれば別だが。
2車線道路だが、両側から蔓延る草のせいで、実質的には1車線道路になっている。
しばらく尾根上の平坦に近いコースだったが、バリケードを境に再び本腰を入れて登り始めた。
ここにも右側だけ眺望が広がっていて、眼下に先ほど別れた市道七村線の狭い舗装路が見えた。
15:45
it's ジャングル!!
我が物顔の草木たちは、道路の左右を驚異的に狭めるだけでは満足せず、遂に制空権をも握ってしまった。
まさに“緑のトンネル”を潜るような道であるが、この使い古された“緑のトンネル”という表現、だいたいはもっと快適な森林浴シーンの描写で用いられるべきものだ。こんなジャングルみたいなシーンは、なんていえば良いんだろうか? のれんを潜るレベルで狭いし、先も見通せないし、“緑の廃隧道”とでも言い直すか?
この辺り、地味にかなりの急坂なのでペースも鈍く、本当に窮屈な気分になった。
15:47
線形は悪くないが、とにかく藪のせいで道幅が狭くなってしまっている。
狭い道の中央が黒っぽく見えるのは、もとはセンターラインがあった部分だ。数十年も放置されているのだろう。白いペイントはほとんど剥げていた。
しかし、ここが2車線道路であることには、単に道を繋げるだけではない“意味”が込められているはずだ。
この県道にはおそらく、入口の【隠された青看の行先】を埋めるような活躍が期待された時期があったんだろう。
ここまで来る途中に狭い区間があったが、多分最終的には全線をこのような2車線道路として整備する構想(あるいは計画が)あったのだと思う。そうでなければ、山の奥を2車線道路にすることの整合性がとれない。
15:48
バリケードの地点から既に500mは進んでいる。
相変わらず、未成道然とした廃道同然の舗装路が淡々と上り続けている。
橋やトンネルのような目立つ構造部はなく、道路標識やガードレールといった安全設備の類も見当らないが、別に未完成という感じではない。
もし普通に完成していたら、車には特に何の印象も持たれることなく通過されるだけの区間だったろう。
チェンジ後の画像は、山側のコンクリートブロック擁壁の様子だ。
酷く緑色であることを除けば、全く普通の法面だった。
15:51
さらに数分前進し、登り方が穏やかになってきた。
そろそろ最高地点が近いようだが、見晴らしはない。
そして前方、なんだか、袋小路の雰囲気が……。
これは、もしや…
15:54 《現在地》 (海抜210m)
終点か。
県道自体は、まだ終わりではないけれど、バリケード以来の2車線道路は約750mで終了した。
山の中で唐突に始まった2車線道路だったが、終わり方もまた、唐突だった。
探索のスタート地点からは約3.2kmの地点だ。
なお、地理院地図、SMD24ともに、この地点から道幅が狭くなるように描いており、これは実情を正しく反映している。
しかし、2車線道路の終了と同時に、ここまで死守していた舗装までも失ってしまう様子だ。
これにはちょっと先行き……というか主に藪の状態に不安を覚えた。
地図を見る限り、ゴールまで残り1kmくらいだと思うから、何とかこのまま突破したいが…!
終盤の未舗装区間へ、突入!
15:55
う〜〜ん! まだこんな“険道”が、富山には残っていたか!
地形も景色も地味ではあるが、なかなかの、なかなかさだ。
車道がないわけじゃない!
車道はあるが、整備が行届いていないのである。
これは車道自体が存在しない不通区間よりも、よほど貴重な存在である。
未舗装になると下りはじめたが、すぐに底をついて、また登りとなった。
この県道の地図上における最高地点は、もうすぐである。
15:56 《現在地》 (海抜200m)
おおーーっと! 初めて、四輪車が通さない障害物が現れた。
この巨大な倒木は、チェーンソーでもない限り、一人二人ではどうにも退かせそうにない。
狭い尾根上であるため左右に迂回路をとる余地もないから、四輪車での完抜を阻む厄介な障害物だが、もちろん自転車なら簡単に越えられる。
道全体が緑っぽくはあるが、未舗装になっても恐れたほど藪に埋れていないのは、細々ながら最近まで交通が行われていたのだと思う。あのバリケードを無視して……!(笑)
この道に最後まで残ったのは、か細いシングルトラック!! (物好きは私だけではないらしい)
狭く薄暗い尾根をなぞりつつ、直線的に北西方向へ登っていく。
いよいよこれが最後の登り。 あとひと息だ。
16:01 《現在地》 (海抜220m)
おおっ! 切り通し!!
スタートから約3.5km、本県道の最高地点である無名の峠に到達した。
そこには、無名の峠とは思えないほど深く刻まれた切り通しが存在していた。
相変わらず道の素性を伝えるようなアイテムは全くないが…。
地理院地図だと切り通しから先の県道は点線の徒歩道として表現されているが、どうやらこれまで同様の緑っぽい車道が続いてくれているようだ。
そして、もしあと数年整備が進行していたら、ここも先ほどまでのような2車線道路になったことだろう。
もちろん、そうなって多くの人の役に立つほうが道としては幸せだったと思うが、建設が中断しているのにも何か理由はあるのだろう。
ここが峠の頂上なので、この先は県道の“起点”に向けて下り坂が始まる。
地図読みで起点まであと600mほど。そこに下るべき落差が40mくらいある。
峠を越え、最終区間へ進行!
16:03
切り通しを過ぎて間もなく、尾根上に分岐があった。
写真はそこを振り返りながら撮影した。右から手前へ来るのが県道で、左奥に別の道が分れている。
ちょうどここは尾根の分れでもあって、左の道は県道とは別の尾根に延びている。南砺市と小矢部市の境界となる尾根である。
16:03
上記の分岐地点から進行方向を撮影した。
ここが尾根の上であることが景色からも分かると思う。
尾根の向かって左側が南砺市で、右側が小矢部市となる。
道は尾根の上を行くが、ぎりぎり南砺市からは出ていかない。
ここからガツガツ下りはじめた。
16:06
下りなので、道は良くないがペースは速い。
峠から既に200mほど進んでいる。既に尾根からは南砺市側へ外れている。
ここの路上に大きな泥濘があり、新しそうな軽トラっぽい轍が残っていた。
前述したように、途中に倒木があって四輪の通り抜けは出来ないが、反対から峠までは来られたようだ。
この轍の出現で、私の目的達成はほぼ確約された。
16:07 《現在地》 (海抜190m)
いよいよ最終盤、地図上でも特徴的な九十九折りの区間に入る。
前方、切り返すカーブが見えてきた。
この九十九折りで道は尾根の近くから、一気に谷底を走る県道42号へ近づこうとする。
既に高速に行き交う車の音が聞こえているが、姿は全く見せていない。
ところで、この最初の切り返しのカーブの先端附近(ピンク枠の辺り)で、予想外のものを見つけた。
小さな切り通しだ。
今いる道のものではない。
進行方向がまるで違うし、抜けた先は藪が深く、進行方向も定かでなかった。
気にはなったが、明らかに辿るべき道から外れているし、年代も違う感じがしたので、この日は追求を避けた。
これは全天球画像だが、私の背中側に切り通しがはっきり見えている。
【位置】的に、国道304号旧道の蔵原隧道の上を越えているので、そちら絡みの古道かもしれない。
16:10
“謎の切り通し”への寄り道をすぐに切り上げて、下りの続きへ。
2度目の切り返しを過ぎたところには、コンクリートブロックの擁壁があった。
こういうものを見る限り、そんなに昔の道ではない感じがする。あくまでも感覚的なものだが…。
帰ったらちゃんと調べないとな。
とても地味な道だとは思うが、探索をするとやはり、その道の来歴が我が事のように気になるのである。
16:11
地味にキツい、このカーブ!
3度目の切り返しのカーブは凄い急坂に被っているうえ、水が染み出しているらしくマッディで、泥濘んだ轍のせいで酷く路面が荒れていた。
ここを2WD車で上ってくるのは大変そうだ。難所である。
というかこのカーブに限らず一連の九十九折り区間は平均勾配が10%くらいあるので、全体的に難所である。
そして、ここを切り返すとようやく……
さっきから車の出入りする音を聞かせていた県道42号小森谷トンネルの坑口が見えた!
トンネル照明が見えている通り、現役のトンネルだが、まるで藪に埋れているように見える登場シーンだった。
足下の道は、この坑口にぶつかる直前で最後の4度目の切り返しをし、いよいよ最終ストレートへ!
16:12
ゴールだーー!!
小森谷トンネルへ向けて次々と車がこちらに走ってくるが、まずこの道へ来る車はいないだろう。
というか、ここに道があること自体を知らない人の方が多いかと思う。
ここを県道として描いているのは地理院地図くらいなもので、市販の道路地図や、グーグルマップなどのオンライン地図もそのようにはしていない。
最後までこんな駄目な感じの道ではあったが、自転車の機動力を活かし、出発地点から僅か55分という短時間にて……
県道285号西勝寺福野線、起点へ到達!
これにて、無事探索終了と相成ったわけだが……
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