2010/4/21 12:48 《現在地》
千頭森林鉄道本線の大樽沢宿舎から徒歩で約40分。
逆河内支線の跡を40分辿って到着した日向林道。
約5時間ぶりに出会った林道であったが、いきなり問題に直面した。
地形図では普通に両者は出会っているように描かれていたのだが、実際にはこんな高低差を持って、接続と言うよりも衝突していたのである。
軌道跡の路盤を完全に削り取って、その進路を林道が奪っていた。
林道を建設された経緯(林鉄のリプレース)を考えれば、それもやむを得ない事だったが、私にとっては大問題だ。
ちょうど軌道跡はこの直前が隧道であったために、他にこの崖を迂回するルートが見出せない。
どうにかして、これを下るしかないのだろう…。
…ガラガラッ
いかにも崩れやすい、脆そうな岩壁だった。
…ガラガラガラ
降りた。
どうやって?!
と、つっこまれそうだが、
普通に壁を這う蜘蛛のようにして下りた。
岩肌がとてもゴツゴツしているのが、幸いした。
おかげで手がかり足がかりが豊富にあり、常に三点支持を維持しながら行動できたのだ。
だから、思っていたほど危ない感じはしなかったし、その気になれば逆に登行も出来そうだ。
…たまたま、調子が良かっただけかも知れないが…。
ちなみにこれは、数時間後の帰り道にて撮影した写真。
林道と「3号隧道」の位置関係だ。
これだけ近接していれば、地形図で接続しているように描かざるを得ないのも納得。
しかしこの坑口、意外に林道からは気付きづらいように感じた。
こういうものがあると予期していないと見ない場所だし、往路だと振り返らないと見えない。
それに、夏場はおそらく坑口前の緑に覆い隠されてしまうだろう。
12:50 …というわけで…
祝! 林道到着!
なんだけど、
予想外の事態発生!
なんかこの林道も、廃道じゃね?
岩とか路上にゴロゴロしてるし、路肩なんかも“なで肩”で、なんかワイルド過ぎるんだけど…。
林道に脱出できれば、とりあえず帰りの足は安心だ…なんて思っていたのに。
いや、別に車がビュンビュン走っていて、ヒッチハイクでも出来ると思っていたわけではない。
そうではないけど、歩いて帰るにしても廃道と普通の林道とでは、安心感が雲泥の差だ。
これって下手したら、帰りの林道にも大規模な崩壊が待ち受けているかも知れないって事だよな…。
ちょっと土地勘がないと現状を分かって貰いにくいと思うので、広域の地図を用意してみた。
今日私がここへ来たルートは、次の通りだ。
地図下方の「大間(寸又温泉)」を自転車で出発した私は、青の林鉄跡を辿って千頭ダムに自転車をデポ。
それから隧道で林道と交差したりしながら大樽沢に到達し、今度は逆河内支線に入りって今ようやくたどり着いたのが、日向林道である。
今後の予定としては、このまま逆河内支線の終点である「庄尾」まで日向林道を歩き、終点を確かめたら引き返してくる。
帰りはそのまま日向林道を上閑蔵付近まで戻り、そこからピンクの線で示した登山道を通って、千頭ダムへ降りるつもりである。そして自転車を回収して大間に戻るのだ。
ここまで、もちろん日帰りで達成したい。
少し話が脱線した。
今後の予定云々は置いておくが、今地図を持ち出したのは、日向林道の「現在地」が山深い奥地であることを伝えたかったからだ。
林道だけでここまで来るためには、軌道跡を通るよりも多くの距離を走らねばならない。
その距離、実に17kmにも及ぶ(寸又左岸林道11km+日向林道6km)。
しかも、沿道は完全な無人地帯であり、往復したらそれだけで30kmオーバーという奥地である。
ちょっと、ショックだったが…。
さて、のんびりしている時間はますます無い公算が強まったわけだから、さっさと目的地を目指すことにしよう。
軌道の終点である庄尾(地形図などには地名がないが、資料にある終点名)までは、あと2.7km前後と思われる。
ただし庄尾に行くのは、「そこに旅のもうひとつの目的がある」というだけで、逆河内支線の探索については、日向林道に合流したことでほぼ終わったと考えていた。
というのも、新旧の地図を見較べると、ちょうど軌道と重なるようにこの日向林道を敷設されており、軌道跡を拡幅して林道化したものと思われたからだ。
ここから終点までは、林道歩きをもって軌道跡探索に替えねばならないという公算が、大であった。
そういう意味では、ここが廃林道だったのも退屈しのぎにはなるかも知れないな。
あまり景色に変化を感じないが、実はもう林道に降り立ってから10分歩いている。
だから、そろそろ500mくらいは来ているはずだ。
そして、道は依然として上り続けている。
実はこの上りについて、少し前から気になることがある。
それは林道の登り方(勾配)が、いかにも自動車道的な急さのままで、未だ軌道らしい緩勾配に変わった様子がないことだ。
確かに最初、軌道は林道よりも10mほど高い位置で合流したが、その後は100mにつき5mくらいのペースで、両者の比高は縮まり続けているはずなのである。
にもかかわらず、未だに林道の勾配が緩まらない…。
もしや林道は、既に軌道跡よりも上に来ちゃっているのではないか…?
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13:07 《現在地》
そんな重大な疑念を感じつつも、路肩から下を覗いた限りでは特に平場のようなものを見つけないまま、林道合流から550m地点の尾根にたどり着いた。
逆河内支線ベースでは、起点から1.7kmの地点である。
既に見えている幅広の切り通しには隧道の期待があったのだが、それは呆気なくしぼんだ。
左の図は昭和37年修正版の5万分の1「井川」の地形図だが、これは逆河内支線が描かれた(おそらく)唯一の5万図である。
そしてこの図の中には、現在地の尾根の所に短い隧道が描かれているのだ。
もっとも、この昭和37年版は色々とミスが目立つので(どう考えても存在しなかった支線が描かれているなど)、もしかしたらこれも地図の誤りかも知れないのだが。
う〜ん。
特に隧道の痕跡は見あたらない。
右の壁も、左の壁も、どちらも普通の素堀の岩盤で、特に隧道の側壁のような痕跡は見られないな。
なお、この小さな尾根の向こうは、いよいよ逆河内(さかさこうち)の流域となる。
これまではその本流である寸又川沿いの道であった。
まあ、大きく景色が変化することはないと思うが、何となく緊張はする。
名前が怖いからな…。
さあ、どんな感じだ……。
…ゾクッ
や、やべェ…。
いま来たよな、間違いなく ゾクッ と。
いったいこれ、何メートル下なんだ…水面。
地形図だと…(等高線を数える)…15、6本はあるな。
てことは、150mくらいか…。
確かに今までずっと登ってはいたけれど、ずいぶんと高い。
ほんと、林道がいてくれて良かった。
さすがに前半戦の千頭林鉄本線みたいな雰囲気で、この高さを“へつり歩く”勇気はないと思う…。
そういえば、いま切り通しから下を覗き込んだときにも、やっぱり林道の下に平場のようなものは見あたらなかったな。
少し急だったけれど、やはり軌道跡を林道化したと考えるしかあるまい。
わざわざ埋め戻すようなこともしないだろうしな。
よし、道が1本なのは好都合である。
林道でさえあまり万全な雰囲気ではないのだから、このうえ軌道跡までとなると、大変だ。
ほら、そこにも「落石注意」と書いてあるしね。
ここは慎重にいかないと…。
それにしても、なかなか男らしい風景の林道だ。
全線どこでも「戦隊もの」の撮影が出来そうな雰囲気じゃないか?
日本の道というより、もっとワイルド&アメリカンなイメージ。
いや、アメリカが廃道ってワケじゃないんだけどね。とにかくワイルドだ。(キャッシングのワイドじゃないよ)
そのワイルドさの一番の原因は、やはりこの道幅の広いことだろうか。
よほどでっかいトラックでの伐出を想定していたのか、道幅が一般的な林道よりも広い気がする。
全部ではないにせよ、5mくらいあるところが多い。
ただこれもワイルドな理由だが、ガードレールや路肩工などという気の効いたものもないので、端は万端じゃない。
13:11 《現在地》
切り通しから、またさらに400m弱進んできた。
更に ワイルド な雰囲気が増してきた。
現実問題としてまずここに来ることが無理だが、アメリカンバイクが似合いそうだ。
そして、この位置から少しずつ進んでいくと…
あわわわわ
マジで路肩の様子が、
とんでもない ことに…。
でも、とりあえず無事。
林道は、この割り増しな道幅のおかげか、
まだ十分に車を通せるだけの道幅を残していた。
そして、そんな余裕が私に路肩を 覗かせちゃった。
やめてくれよ。
やめてくれよ。 やめてくれよ。やめてくれよ。 やめてくれよ。やめてくれよ。 やめてくれよ。やめてくれよ。 やめてくれよ。やめてくれよ。 やめてくれよ。やめてくれよ。 やめてくれよ。やめてくれよ。 やめてくれよ。
変な冗談は、やめてくれよ。
馬鹿だ!!!
無理だから、無理だから。
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