2015/1/5 12:55 《現在地》
未成ランプウェイへの分岐を想定しているに違いないこの「行き止まりの分岐」から、歩道橋の下を潜ってアクセスするのが、最もシンプルで誰もが真っ先に思いつくアクセスルートだと思う。だが、このアクセスルートには今まで明かしてこなかった問題がある。 このことは、偵察のなかで知った。
それは何かといえば、いま私がいる歩道と「行き止まりの分岐」の間に横たわっている、国道16号外回りから国道464号北千葉道路下り線へ入るランプウェイの問題だ。見ての通り1車線であり、物理的にはガードレールを乗り越えれば簡単に横断できそうだが、歩行者および自転車の通行禁止が道路標識によって明示されている。当然これは「横断禁止」も兼ねると思われるので、ここを横断することは物理的には可能でも、故意の道路交通法違反になってしまう。
偵察で気付かなければ、きっと知らずに横断しただろうから、現場では咎められなかったとしても、レポート発表時にツッコミを受けた可能性大である。
実は、この一帯の道路には多数の「歩行者および自転車通行禁止」の規制が敷かれている。
右図に示した黄色い着色部分がそれである(あとで調べて知ったものも含む)。
まず、小室ICの全てのランプウェイにこの規制が敷かれている。
また、北千葉道路の本線についても、掘り割り構造の中を通る部分については、歩道が少し離れたところに別に用意されているためか、規制が行われているようだ。
だから未成ランプウェイの下を潜る本線も探索出来ないのである。
高速道路ほどではないにしても、小室IC周辺の車道上はかなり堅牢な歩行者拒絶の状況になっていることがお分かりいただけよう。
……というような状況で、いかにして未成ランプウェイへのアクセスを行うか。
もちろんこれまでの偵察は、そのことを念頭に置いたものであった。
少しくらいは障害があったほうが探索も盛り上がるというものだろう。
このドキドキこそが、私を繰返し悪い猫にしてきたのである。
12:56 《現在地》
ここからならば道路交通法を犯さずに辿り着けそうだと思ったのが、この場所だ。
の歩道である。
ここは国道16号小室橋上の歩道で、直下を北総線が横断しているが、歩道沿いの側壁が切り取られていて、そこから歩道橋が空中へ分岐するという変則的な構造になっている。この歩道橋は本編に何度も登場しているものだ。
写真の通り、歩道橋へは歩道から右折して入るのだが、敢えてそこを直進することで、未成ランプウェイや行き止まりの分岐へ辿り着けると考えたのである。
この“直進する歩道”、歩道橋が作られる以前には正規の歩道として使われていた時期がありそうだが、現在は歩道橋の入口に柵がされていて塞がれている。
道路交通法は守ろうとするのに、この柵は乗り越えるのかと、私のダブルスタンダードが問われそうだが、乗り越えるのである!(断言)
なぜか写真を撮り忘れていたので、柵を越えた直後の写真は歩道橋の上から撮影したもので代用する。
黒い柵を越えると、そのまま何事もなかったような歩道が30mほど続いて、小室橋の北側の袂に着く。
そこに2度目の柵(今度は白い柵)があり、これも簡単に乗り越えられるが、柵のすぐ先に「車両進入禁止」と「歩行者通行禁止」の道路標識が立っている。
万事休すとはならない。この標識は状況から見て私がいる歩道向けのものではなく、その隣にあるランプウェイ用である。
このランプウェイは北千葉道路下り線から国道16号外回りへ入るためのもので、こちらからは逆走となるので「車両進入禁止」になっているのだ。
こうして、二度の柵越えはあるものの、かつて実際に使われていただろう舗装された歩道を辿るだけで“目的地”へ達することが出来た。
もっとも、大手を振ってやるような行動ではない。
通行する車には始終見られるし、運悪く道路パトロールカーやパトカーに遭遇したら……叱られそうだ。
だからあまり時間を掛けて探索する場所ではないし、路上の人目が少ない正月期間中であったのも幸運だった。
12:57 《現在地》
キター!
ここから始まる、未成ランプウェイの旅!
傍らのガードレールを取っ払えば多くの車が知らずにコースアウトしていきそうな、
未成ルートの規格の高さを感じさせる堂々たる線形に燃える! 熱い!!
分岐するとすぐに舗装が途切れて草地が始まる。
両側の縁石もここで途切れていて、この先は路盤が構築されていない状況である。
草地には(言葉通り)一面に草が生えているが、あまり濃い藪にならないような管理でも受けているのか、麦畑を彷彿とさせるような背の低いススキ(?)ばかり生えているので、探索の障害にはならないと同時に、姿を隠す役にも立たない。
ところで、「中編」で私が提起した、「歩道橋の高さが不足しているのではないか」問題だが、たぶん問題なさそうです(掌クルッ)。
一面に同じ高さで草が生えていることと、路面より地面が少しだけ高いために、印象として、歩道の空頭高が足りなく感じただけだと思う。
実際に地面に足を置いて見上げてみると、普通の高さはありそうだった。(ただ、最近の幹線道路に増えてきた「高さ限度緩和指定道路」になれるかは怪しい。接続する国道16号は、その指定を受けているが。(参考:pdf))
ちなみに、相棒は連れてきてますぜ!(笑)
走ろうよ・・・・車道の探索をするのに、徒歩ってじゃ味気ないって!
だから連れてきた。
この草地では今ひとつの乗り心地だが、未成ランプウェイ上で真価を発揮してくれることだろう。
正面に近づいてきたぜ!
今は進路を示すもののないただの草地だが、脳内に思い描いた緩やかなカーブを辿れば、自然とここへ辿り着く。
左は北千葉道路への現役ランプウェイ、右は北千葉道路の下り線。
合流しようとする両道に挟まれた私の居場所は急速に先細っていき……
三角形に切り取られた先端に、目指す未成ランプウェイが待っている!
12:58 《現在地》
到達だ!
すすき野に吹きすさぶ空っ風の中、気軽に歩くことも脇道へ逸れることも許されない幹線道路に囲まれた、
ある種の“都会的離島”に私は辿り着いた。
長く引っ張ったように感じるかも知れないが、実際に経過した時間は、発見からここまで僅か11分。
まだ見飽きるほどの時間ではないし、むしろ始めて間近に見る姿は、新鮮さと大きさの迫力で私を虜にした。
この風景には、この冬の季節こそが至高だと、他の季節を見たこともないのに、自画自賛気味に喜んだ。
北総の広大な大地(台地だというが私には平野と区別が付かない)に眠る道には、セピアめいたこの色味が似つかわしい。
このように足を止めて風景を観察をする心の余裕は、幸いこの位置が様々な障害物の配置に恵まれていて、
四方にある幹線道路の多量の視線からは逃れられることに拠っていた。歩道橋からは丸見えだが。
しかしここから先に踏み込めば、匍匐前進でもしない限り、やや目立つことになるのはやむを得ない。
もっとも、結果的にはこの探索を通じて、周囲に人の視線を全く感じなかった。(正月のせいか、都会らしい無関心ゆえか)
始終周囲から人間の活動する(主に車両を使った移動の)音が聞こえているのに、生身の人間からはほとほと縁遠い場所と感じられた。
橋頭にある50cmほどの最後の段差を乗り越えて、いよいよ橋上へ踏み込んだ。
そこで最初に待ち受けていたのは、遠望でも見えた鉄パイプのバリケードだ。
ヘロヘロで錆び付いた、見るからにやる気の感じられないバリケード。
現状、ここで立ち入りを塞ぐべき訪れる人などほとんどないことを暗示しているようだった。
様々な構造物の配置が完璧なお膳立てをしているせいで、存在しない道が描き出す嫋やかなカーブが、誰の目にも見えるであろう。
ここまで準備が出来ているなら、こちら側の開通は容易いことだろう。
分岐から高架橋までの約80mを繋ぐ路面が存在しないことは、ここがかつて使われていた廃道ではなく、未使用の未成道と考える大きな根拠になるが、確たる証拠とまでは言えない。
果たしてこの橋は、一般に供用されたことが一度でもあったのだろうか。
これは今回の探索における、私にとって最大の疑問であり、解明したいと思える事柄だった。
廃道も未成道も、いま使われていない道という点で変わりはないが、私に中のあり方は大きく違う。
廃道にかける言葉は第一に「おつかれさま」だが、未成道にはかける言葉は思いつかない。
「頑張れよ」では軽薄だし、「いいことあるさ」は無責任。「ごめんなさい」と口にするほど謙虚にもなれない。
綺麗に舗装がなされ、いつでも通行できる状態で目の前に横たわっているこの路面に、私は過去の通行人の姿を探し出そうとした。
だが、轍といういうものは一つも見つからなかった。
未成道にありがちな、踏みにじられた苔や地衣が残す白い軌跡も見当たらず、本当にまっさらな、工事車両ですら通らなかったのではないかと錯覚するような(おそらくそんなことはない)綺麗さだった。
路面以外の部分……、例えば両側の擁壁や縁石の角には、それなりに経年を伺わせる土と植生(ツタ)の侵入が見られたのだが、毎日のように風に吹かれ雨降る度に洗われる路面は、本当に綺麗に保たれていた。
立ち並ぶ照明灯。
道路照明といえば多くの方がこの形をイメージされるだろう、現在も各所に設置されているありふれたナトリウム照明灯のようだが、この姿はかなり昔から定番化しているものであり、既に古さが感じられる。
夜の姿を私は知らないが、さすがに点灯はしていないだろうか。
誰か確認できたら教えて欲しい。
目立つことはしたくなかったが、車の音の途切れたタイミングを計って高欄から身を乗り出し、橋下の景色を見ることも欠かさなかった。
右に見える、現在使われている北千葉道路のランプウェイと、私がいるランプウェイとを見較べると、道幅の広さと勾配の緩やかさとカーブの緩やかさの全てにおいて、こちらが勝っていると思った。
この橋は三次元的(上下にも左右にも)にカーブしており、自転車でも明確に感じられるくらい強いバンクが掛かっていた。
まさに高速道路的な高規格さを感じたというのが、高速道路を歩いたことはないけれども、偽らざる感想だ。
上の写真とは反対側の眺め。 (やべっ! 車来てんじゃん!)
北千葉道路の下り線は、この高架橋を潜るために結構なカーブをしているが、これは「所詮は一般部」ということなのだろう。
対して、左隣の敷地に計画されているとみられる「専用部」は、さらに隣に見える鉄道に匹敵するほどの直進性で小室界隈を貫く模様である。
もし全てが開通したら、この路肩に立って景色を眺める機会は二度と訪れないだろう。
高架橋に入った直後には少しだけ上ったが、すぐにピークを迎え下りに転じる。
カーブも下りはじめるとすぐに終わって、巨大掘り割り構造の住人たちが皆ならう直線へ、ピタリと進路を合致させた。
あとはもう皆が待つ底へ軟着陸するだけである。
まっすぐ、下って行く。
13:00 《現在地》
橋端へ達した!
橋の長さは100mに少し足りないくらいだろう。
橋の最後のスパンが終わり、橋台との継ぎ目を越えて2mくらいで、急に舗装が見えないくらいまで草が生い茂るようになる。
しかし、その段階ではまだ草の下に舗装の堅さが感じられる。そこは陸地から橋の上へ押し寄せようとしている植物軍団の最前線なのだ。
そして、そこからさらに数メートル進むと、ガクッと路面が低くなるのが分かる。感触も変わる。廃道で慣れた枯れ草の感触になる。
そこが、本当の意味での舗装の終わりであり、路盤構築の終点なのだった。それより先は、少し大袈裟に言ってジャングル、控えめに言えばブッシュ。 道ではない。
ただ、この状態になってもまだ、両側に将来の道路を形作るであろう“未成遺構”は続いている。
橋台から連続する長いコンクリートの下りスロープが、掘り割りの底に達するまで続くはずだった。
はじめのうち、私がいる地面(路面ではない)と、両側にある将来の路面の高さ(+側壁)にあるコンクリートウォールは、かなりの高低差があって、さらに大量の植物のおかげもあって、非常に人目を避けるに良い場所を作っていた。一応、50mほど前方にある(「中編」で立った)小室駅の歩道橋からならば、私を俯瞰で見つけられる可能性があるが、普通はこんなところに注目して歩く人はないから、ほぼ安心だと思えた。
だが、ここで“かくれんぼのチキンレース”を強要してくるのが、この場所の嫌らしさだった。
先へ進むほどに両側の目隠しは低くなり、まずは大型車の運転台が姿を見せるようになった。さらに進めば、乗用車の運転席が横に見える状況となることは明らかだった。
車の流れはかなり高速でかつ後方からの一方通行である。真横や後方にいる私に気付くはずもないとは思いつつ、目ざといパトカーや道路パトロールカーが巡回してくる可能性を完全には否定できないし……、まあ言い訳を述べても仕方がないが、あまり慣れていない都会的プレッシャーに私は負けた。
いや、悔しいから、引き際をわきまえたと書いておくことにしよう。
13:02 《現在地》
最終的には、橋端から3〜40m進んだ地点で、私は引き返すことにした。
小室駅の歩道橋の30mくらい手前であろう。
私は進まなかったが、このまま前進を続けた場合、しばらく北千葉道路との並走にさらされるが、その後また北千葉道路が高い位置へ移動していくので、危機は一旦去りそうだ。
もっとも、未成ランプウェイのような構造物は、この先にはないようなので、あとはずっと平らな敷地が広がっているものと思う。
そのイメージは、「スーパーマリオブラザーズ」の3-3のゴールポールを、手前にある上下するリフトを活用してジャンプで越えたときに体験できる、タイムアップまで延々終わらない城壁が続く感じであろう。かなりの悪夢を感じる(笑)。脱出ルートもなさそうだしな。
ずっと左の道路ばかり気にしていたが、引き返した地点の辺りでは、右側には小室駅のホームが見えた。これも、これ以上進みたくない理由の一つだったことはいうまでもない。
なお、既に何度も述べているとおり、私と線路の間にある緑地帯的な空き地は、おそらく北千葉道路の専用部下り線用の敷地である。
見ての通り、未成ランプからの合流想定地点周辺に至っても、何らかの準備施設が作られている様子はなかった。
これにて撤収開始!
この後、私は速やかに安全圏まで脱し、本探索を無事に終結させた。
現地にどのようなものが、どんな状態で存在しているかは、あらかた調査ができたので、
あとは帰宅後の机上調査に、残された謎の解決を委ねたいと思う。
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