2020/8/18 8:25 《現在地》
これから、世にも奇妙な道路が展開する。
道路観察者的には、一瞬も気が抜けないくらいイレギュラーに溢れているので、写真の隅々まで注目しながら読み進めていただけると幸いである。
もっとも、あなたが単に自動車で通行するだけなのであれば、もう難しいことは何もなくなった。
最初に、中央分離帯の左右どちらの車線に入るかを選んだ時点で、もう悩むべき場面は終わった。行き先を選び終えたあなたは、あとはもう一本道に従って高架バイパスが終わるところまで車を進めるだけである。
長者町交差点を過ぎると、国道113号東港線バイパスは直ちに右カーブとなる。
そしてカーブの終わりから高架へ向けた擁壁路の上り坂が始まる。
これから高架道路が始まるところだが、まず注目すべきは、既に再三に述べているが、中央分離帯を有するこの4車線の高架橋は全て、南行きの一方通行路であることだ。
中央分離帯上に設置されている「一方通行」の道路標識が、写真の標識板の裏側にもある。したがって、通常ならば反対車線に見える部分も、反対車線ではない。
中央分離帯の左右両側とも2車線道路だが、これらが対面通行ではないことを明示する目的で、中央分離帯の両側に「一方通行」の道路標識が設置してある状況だ。
そしてここでもう一つ重大な注目ポイントは、一方通行規制の対象が、補助標識によって、自動車やと原付に限られていることだ。この補助標識のために、自転車は一方通行ではないということになる。
そもそも、この高架道路は歩行者や自転車の通行を規制していない。
こんなことをわざわざ書いて藪蛇になったら嫌なのだが、明らかに歩道はおろか路側帯すら持っていない高架道路は、外見的にはいかにも歩行者や自転車の通行を規制していそうだが、そういう規制標識は設置されていない。
そのうえで、一方通行規制の対象からも敢えて自転車を含む軽車両を除外してあるので、歩行者やもちろんのこと、自転車やリアカーなどがこの高架道路を逆走しても違反ではない。
もっとも、規制されていないとしても、この道路状況で自転車が車道を逆走すれば、大変危険なのは明らかだろう。決してオススメはしない。
仮に自転車で通るなら、中央分離帯の左側の車線の左端を通ることを強くオススメする。(周知の通り、道路交通法では自転車は原則として車道の左側に寄って通ることが定められており、一方通行路でも同様である)
ところで、走行する車が写っていない写真だと、さほど一方通行路の違和感は強く感じないが……。
こんなん笑うわwww
信号が青になって車がドッとなだれ込んでくるともう、
普段の常識に縛られた頭がヘンになりそうな異常な道路風景にwww
一方通行標識に続いて、今度は「車線数減少」の警戒標識が、「200m先」の補助標識とセットで現れる。
せっかくの世にも珍しいフル規格の4車線高架一方通行路だが、1km近くあるはずの高架区間を全うすることなく、合計2車線へ縮小してしまうようだ。
ちょっと残念である。
あとどうでも良いが、なぜか左右の「車線数減少」の標識の中の車線数が違っている。
現実に即しているのは、反対車線(厳密には反対車線じゃないけど、分かりにくいのでこの表現で通す!)の方の標識。本当にどうでもいい。
現在、高架へ向けて擁壁路のスロープを上っていく最中。
間もなく水平になったところからが、連続高架橋の始まりである。
そして見ての通り、この道路には車道の外側に道路余地が全くない。
いかにも自動車専用の高架道路っぽい構造で、設計の時点ではそうだったのだろう。
あと、国道の高架橋の割には、中央分離帯や路肩の除草が不十分だ。未成道だから、やさぐれているのか。
こんな道路上の状況に目が釘付けになりがちだが、高架道路になれば見晴らしも良さそうだ。その辺もこれから、注目していきたい。
8:27 《現在地》
ここからが真の高架道路だ!
この写真だけなら、未成道に関わる“影”の部分を感じない。
したがってこの眺めは、新潟市がかつて描いた完成形とほとんど違わないだろう。
新潟都市高速……そんな歴史上に実在しないネーミングが、私の脳裏に去来した。
だが、既に紡績角交差点から約300m地点を走っており、
この時点でもう、東港線バイパス全長1180mは残りが4分の3になってしまった。
この道路の歩行者での通行方法について、疑問がある。
テーマに興味のない方は、この写真の小節をスルーして欲しい。
疑問は、歩行者がこの道路のどの部分を通るべきかだ。
規制されていないので歩行者が通って良いことにはなっているが、どこを通れば正しいのだろう。
道路交通法によれば、歩行者は、歩行者の通行に十分な幅の歩道や路側帯がない道路では道路の右側端に寄って通行する必要がある。ただし道路の右側端を通行することが危険であるとき、その他やむを得ないときは、道路の左側端に寄って通行することができるとされている。
一方通行路に関しては歩行者についての規定はないのだが、この道路に当てはめた場合、歩行者が道路の右側端を通行するとしたらそれはどこなんだ? 反対車線の右側の端だろうか。それとも中央分離帯のそば?
しかし、このどちらにしても、ドライバーの目からは相当意表を突いて見えるだろう、実際に危険そうである。この場合は条文の但し書きに則って、自転車と同じで道路の左側端を歩くのが無難な気はする。
他にもまだ疑問はあるが、それはまた後で。
振り返る、終点方向。
この眺めもまた、一方通行路ゆえに車窓としてはバスの最後部座席で振り返るでもしないと見られないが、
本来の道路設計は間違いなく双方向通行路であったろうから、もし未成道になどなっていなければ、
利用者の半数が日常的に眺める車窓であったはず。 そう考えると、少し感慨深いではないか。
高架道路はまず川を渡る。名前が通船川というくらいだから、素性が分かり易い。
明治11年に新潟から東北へと旅したイザベラバードも、この川を船で通っている。
もちろん当時はこんな護岸のある都市河川ではなく、芦原が広がっていたようだ。
高架道路に入っても、高欄は車道規格の低さである。歩道用はもっと高い。
そのおかげで、ご覧のように見晴らしがよく利いた。
この幅80mほどの水域を横断し、道路の舞台は、県都中核を占める新潟市中央区へ。
とはいえ高層ビル街ではなく、ベイエリアらしい石油タンクが出迎えてくれた。
ここまで路上の眺めだけをレポートしてきたが、ちょっと外野からの眺めも見てもらおう。
これは2012年の撮影だが、100mほど海側を並走する国道113号(東港線)現道から見た通船川を渡るバイパスだ。
向かって左側が東区、そして右側がこれから入る中央区のエリアである。
橋はあまり高くなく、現在では大きな船が通行することを想定していないようだ。
なお、この後も何枚か外観写真をご覧いただくつもりだが、東港線バイパスの高架橋は、すべてこのような鋼鉄製の箱桁で、かつ水色の塗装が施されている。
歴史的に、多くの水路が都市機能と密接に関わり、水の都と呼ばれてきた新潟らしい配色だろう。
8:29 《現在地》
通船川を渡ると今度は、高架道路のまま緩やかな左カーブが始まる。
それなりに設計速度が高そうなゆったりカーブだが、カーブと同時に予告されていた車線の減少が行われる。
左右どちらの車線も外側が切り詰められて、中央分離帯寄りの1車線だけに絞られる。
そうして片側1車線へ絞られた直後の道路風景がこちら。
あくまでも、路上の障害物で車線規制をしているだけで、高架橋の構造自体は間違いなく片側2車線を維持している。
早くも未成道としての弱体化が露呈したと言って良い。
本来なら片側2車線の交通量を見込んでの構造だろうに。
でも、私にとっては、落ち着いて路上に立ち止まって観察ができる安全地帯が増えて、たいそうありがたかった。
高架道路上には信号も分岐も合流もないので、車がよく流れているが、やはりまだ見慣れない。中央分離帯の両側を同じ方向に車が走っている光景は。
高架道路の向かって左側には、この写真のように非常に広い“空き地に近い敷地”が広がっている。
空き地ではないが、高度に土地利用が行われているとはいえない。
この敷地は、エネオス新潟事業所と沼垂(ぬったり)駅跡である。
かつて秋田県と並んで国内屈指の産油県だった新潟が誇る製油所が、平成11年までこの地で石油精製を行っていた。
構内には、JR貨物沼垂駅を介して信越本線と繋がる専用線が張りめぐらされていて、巨大なターミナルを形成していた。
もちろん石油だけでなく、新潟港の物流全般を支えていた沼垂駅の貨物線も、駅と共に平成22年には全廃されている。
貨物線の最盛期は、高架道路を潜る線路が埠頭まで伸びており、踏切がある地べたの東港線と、それを回避出来る高架の東港線バイパスには、速達性で大きな優劣が存在した。
ここでやっと一つ、高架道路が優れている点が明確に現れたが、もちろん現状では下の道からも踏切はなくなっている。
再び、外野からの風景。
これも東港線現道の路上より見たバイパスの高架橋だが、ここにはかつて高架橋を潜って沼垂駅構内へと通じる主要な通路が存在した(線路はここを通っていない)。
今も名残として、矢印の位置に、「沼垂駅」と書かれた大きな看板柱が錆びた老躯を晒している。
8:30 《現在地》
高架道路を走り出してから、まだほんの僅かな時間しか経っていないが、早くもなにやら終わりの気配が漂ってきた。
車の流れが詰まってきた。特に、最初から交通量が多かった向こう側の車線……『新潟県庁』などを行き先表示としていた車線が、混んできている。高架道路の終わりが近い証拠だろう。
……地図を確認すると、東港線バイパスの入口である紡績角交差点から既に750mを終えており、残りは400mほどでしかないはず。
もう、完全に後半戦に入っていた。
次回はいよいよ、
新潟名物 “ジャンプ台” が出現しちゃうんだ!
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