日野市の自宅から約70km離れたところにある山梨県大月市の葛野川(かずのがわ)ダム【地図】には、これまで何度も足を運んでいる。
そこにはダム建設によって発生した旧国道や、松姫湖に水没した林鉄跡など、いくつもの見どころがあるからだ。
そして数多い見どころの中でも、この地を訪れるだけで誰でも簡単に発見できて、しかもインパクト抜群なのが、今回紹介する廃隧道である。
ただし、残念ながら正式な名前は分らない。
日野市の自宅から約70km離れたところにある山梨県大月市の葛野川(かずのがわ)ダム【地図】には、これまで何度も足を運んでいる。
そこにはダム建設によって発生した旧国道や、松姫湖に水没した林鉄跡など、いくつもの見どころがあるからだ。
そして数多い見どころの中でも、この地を訪れるだけで誰でも簡単に発見できて、しかもインパクト抜群なのが、今回紹介する廃隧道である。
ただし、残念ながら正式な名前は分らない。
2010/3/15 9:35
ここは葛野川ダムの堤上路。
この右側にダム湖である松姫湖の湖面が広がっている。
そしてこの場所に来さえすれば、誰しもが廃隧道を見つけてしまう。
その割にこの物件がメジャーになっていないのは、堤上路が閉鎖されていることが少なくないことや、そもそも観光地でもないこのダムを訪れる人が、あまり多くないせいだろう。
なお、葛野川ダムは高さ105m、堤長263mの重力式コンクリートダムで、完成したのは平成11年である。
相模川水系葛野川の支流土室川を堰き止めて作った東京電力の発電用ダムで、導水トンネルにて結ばれた上日川ダムとのペアで、揚水式発電が行われている。
また、このダムのすぐ下流には、山梨県営の深城ダムがある。
廃隧道を発見していただく前に、この周囲の道路網の状況を地図で確かめておこう。
葛野川ダムのそばを国道139号が通過しており、ダムへの唯一のアクセスルートである山梨県営林道の土室日川線を分けている。
現在地である堤上路へは、さらにこの林道から分かれて進入するわけだが、林道との分岐地点はトンネル内にある。
このトンネルには銘板等が無いため名称が分らないが、ここでは仮にダムトンネルと呼ぶことにする。
当然私もここへ来るのに、このダムトンネルをくぐってきたわけだ。
それでは、堤上路から湖面を眺めた次の写真から、廃隧道を思う存分発見してほしい!
群青色の湖面の向こうに、
なにやら怪しい一角が。
こっこっ…これは!
げに恐ろしきは弱肉強食、道路の世界。
道路もまた、弱者を乗り越え強者のみが未来へと進むことができるのであるが、この眺めは天下一品である。
この奇抜さ、【甲子道路】をも凌ぐかも知れない。
たてに坑門が並ぶ異様な光景である。
縦に並ぶと言えば、以前紹介した千葉県の共栄隧道もそうであったが、向こうにはそこはかとない手作り感があったのに対し、こっちはより非情に徹している感じがある。
そもそも、新旧の上下関係が逆である。
旧隧道を踏み付け、踏み台にして、新トンネルが作られているかのようだ。
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あまりの奇抜さに、咄嗟に私はこんな疑念を抱いた。
そもそも下にあるのは本当にトンネルなのか?
それによく似た、アーチ型の支持工だったりしないのか? …と。
だが、下の坑門の手前まで、わざわざガードレール付きの道路が設えられている。
流石にこれでトンネルでないというのは、無理がある。
やはりこれは、上下2段に並べられたトンネルである。
…しかし、いったいなぜ?
遠くで見ていても謎は解けそうにないので、近くへ行ってみよう。
そのためには、ここへ来るときにも通った「ダムトンネル」を今度は左折して、土室日川線の奥へ進めば良い。
問題の“2段坑門”があるのは、ダムトンネルを出た次のトンネルである。
すぐ近くであり、歩いてでも簡単に行けそうだ。
ダムトンネルのダム側坑道から、本坑洞方向を見る。
奥のナトリウムオレンジの部分が突き当たりになっており、左が土室川上流、右が国道139号方向である。
ダム側坑道は本坑よりも狭く、大型車がぎりぎり通れる程度の1車線。
また、内壁は吹き付けコンクリートの表面に鋼製セントルが露出した、簡易施工となっている。
どこか一般道路離れした光景であるが、実際にも発電所の専用道路であるらしく、堤上のダム事務所が無人となる時間帯には入口の柵が施錠され、全面封鎖となる。
洞内分岐部。
左がダム方向で、奥がこれから向かおうとしている土室川上流方向だ。
本坑にはセンターラインも敷かれ、2車線の幅があるが、やはり内壁の大半(出入口附近以外)がコンクリ吹き付けの簡易施工になっている。
そして、この写真だと問題無く奥へ進めそうに見えるのだが、実際にはここに世の釣り人やオブローダーを苦しませる障害物がある。
逆光のため見えていないだけである。
洞内分岐から10mの至近に、堅牢なゲートあり。
そそり立つ針を無数に持つ鉄のゲートは、トンネル内という場所にあるため迂回不可能である。
この奥にあるのは林道で、しかも数キロ先で行き止まりなのだが(将来的には甲州市へ抜ける構想もあるが工事は止まっている)、その割には異常と思えるほどの封鎖ぶりであり、徳川氏か武田氏の埋蔵金でも山中にあるのだろうか。
それはともかく、どうしても入りたい人たちがいるようで、上部のトゲが一部破壊されている。
さらにそれを妨害する意図なのか、或いは応援する意図なのかは不明だが、破壊されたトゲの周囲に大量のグリースが塗られており、ヌルヌルである。
したがってもし乗り越えようとすれば、手足や着衣がべっとり汚れることは必至だ。
わるにゃ〜ん
封鎖された上流側ダムトンネルは、分岐から出口まで約100m。
一直線で外光が比較的良く入ってくるとはいえ、照明が落とされているので薄暗い。
そして、壁の様子はもう簡易施工というか、“つくりかけ”っぽい。
なぜこんな事になっているのか不明である。
照明が取り付けられているので、間違っても作りかけではないのだろうが、なんか不気味だ。
そして、
そとに出ようものなら、
そくざに、
これ。
ぶっ飛んだ景色。
同時に写真は2006年(平成18年)8月13日にタイムスリップ気味に。
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