ミニレポ第273回 富山県道359号石堤大野線にある“特異な線形”

所在地 富山県高岡市
探索日 2018.10.27
公開日 2023.06.20

地図で妙にギザギザした道は、本当にギザギザしていた!


《現在地(マピオン)》

ミニレポ向きの変な県道をまた見つけてきたよ。
いわゆる泡沫県道というやつで、どうしてここが県道になっているのかを調べてみてもよく分からない道だ。

路線名を富山県道359号石堤大野線という、富山県が管理する一般県道である。
ウィキペディアに一応単独の解説ページがあり、そこで全長4753mであることや、認定が昭和48年3月31日に行われていることが分かる。
ページには特に路線の状況について言及がないし、整備状況の良し悪しもかかれていないが、実際に訪れてみると、本編で紹介するような実態であった。

もう少し路線の概要を説明する。
この短い県道があるのは、富山県西部に広がる砺波平野の西端、石川との県境になっている宝達丘陵の麓だ。
起点は高岡市石堤の県道369号小野上渡線上にあり、そこから3kmほど丘陵の山裾を集落を結びながら南進するが、高岡市福岡町加茂で突如進路を90度変えて平野に向かい、小矢部川を三日市橋で渡ると、国道8号の旧道である県道266号岡笹川線と高岡市福岡町大野でぶつかって終点となる。道自体はそのまま直進しすぐに国道8号にぶつかって終わるが、なぜか県道の認定は旧国道で昔の北陸街道でもある上記の県道との交差点までである。
起点と終点の地名はいずれも高岡市の大字レベルだが、平成の合併以前(2005年まで)は高岡市石堤と西礪波郡福岡町大野を結ぶ市町レベルの越境路線であった。

路線状況としては、沿道に途切れず集落や耕地があるので、全線とも生活道路として利用されており、特に廃道化しているとか荒れているというわけではない。だが、基本的に近隣の生活者以外が利用する需要の無さそうな、ひどくローカルな路線である。近くを十分整備された県道32号が並走しており、この地域の通過交通を受け持っている。

本県道は全線ともグーグルストリートビューで車窓の追跡が出来ると思うので、レポートも途中は軽く進めさせて貰う。
主に取り上げたいのは、路線上のある地点に存在する“とても特異な線形”だ。
そこもストリートビューで見ることは出来るが、道路マニアとしては敢えて特筆したいので、そこを主に取り上げたい。

それでは起点の石堤から出発しよう!





2018/10/27 13:43 《現在地》

ここは高岡市石堤(いしづつみ)の県道369号上にある、県道359号の起点である交差点だ。

が、注意していないと素通りすること請け合いだ。全く目立っていない。

それでも県道であることを示す最低限のアイテム――案内標識の“(118の2-B)都道府県道番号”――通称“卒塔婆標識”は設置されており、左折して入る狭路が県道359号であることを教えていた。
これ以外、行先を表示するものなどは全くなかった。
くり返すが、ここが同県道の起点である。


(←)
左折直後の県道風景。

1車線の絵に描いたような狭路だ。
路肩にデリニエータが配置されており、そこには「富山県」の表示がある。県道を含む県が管理する道であることを物語っている。道の周りは田や屋敷が広がる。

写真奥に橋が見えるが、起点から僅か100mほど進んだところに架かるこの小さな橋を渡ると、高岡市石堤から同市の福岡町赤丸に入る。平成17(2005)年まではここが高岡市と西礪波郡福岡町の境であった。
ちなみに橋には銘板などがないが、県の資料によると、橋の名前は鞍馬寺1号橋といい、竣工年は不明になっていた(もっとも特別古そうな橋ではない)。
そして橋の先で道は山の裾に取り付くが、登っていくことはなく、山と平地の際を民家の庭先を掠めながら進む。



13:46 《現在地》

起点から約450m進むと、家屋がやや密集した景色となり、前後の道よりも少し広い橋で用水路を渡る場面があった。この橋も銘板などは見当らないが、資料によると橋名は鞍馬寺橋で、昭和52(1977)年竣工らしい。

なお、この短い橋の前後から5方向へ道が出ており、どれが県道なのか少し分かりづらい所であるが、なんと、県道の進路を示すだけの小さな案内標識が設置されていた。
これは思いがけない富山県の親切に触れた気分だ。ほとんどの読者はこの名前を聞いても何のことだと思うだろうが、懐かしの“ナビクマちゃん”を思い出したぞ。




そしてここからは、いま渡ったばかりの用水路の流れに沿って県道は伸びていく。
水路はほとんど流れを感じさせない深い水に満たされていた。

そして、ほんの少し前に渡ったばかりの水路だが、この先の橋でまた渡る。
しかも渡ったあとはそのまま対岸に沿って進むので、県道は橋を中心に強烈なクランクカーブとなっている。クランクだから、直角カーブの連続だ。
でもありがたいことに、ここにも再び県道の進路を示す案内標識が用意されていた。




別アングルから、橋の前後のクランクカーブを撮影した。
このアングルからだとよく見えるが、県道が用水路を渡る橋は、神社の参道を兼ねている。
そのため参道の景観にマッチするよう、高欄が赤く塗装されているのである。
なお、この橋も銘板などはないが、資料に拠ると、橋名は浅井橋といい、昭和36(1961)年竣工だそうである。

神社の方は浅井神社といい、300mほど離れた石堤地内にある同名の浅井神社とともに、(どちらかが)式内社に比定される古社である。ここから見る境内には、ずっと奥まで見事な杉並木が伸びている。これは高岡市の天然記念物である。




二度あることは三度ある。
最初の橋からまだ250mしか来ていないが、なんと三度、県道は同じ用水路を渡るのであった。
しかも今回もクランク状の線形になっていて行儀が悪いことこの上ない。例の案内標識が県道のルートは律儀に教えてくれているが…。
もし将来、この県道を通過に適した形へバイパス化するならば、真っ先にこの用水路と絡み合う連続橋区間を矯正することになるだろう。

ちなみに、今回の橋も現地に名前を知る手掛かりはないが、資料に拠れば橋名は寺谷地橋で、昭和35(1960)年竣工とのことであった。
この県道の認定は昭和48(1973)年だそうだから、それ以前におそらくは町道として架けられた橋だろう。



13:55 《現在地》

引き続き、張り付いたように用水路の縁を進む。

この先、近くを走る別の道路との位置関係が、なんとも言えない不思議な感じになっている。
ほんの少しだけ低い位置にある別の道路が、県道のすぐそばまで近寄ってくるのだが、接続することはなくまた離れていく。最も接近している部分では、自転車はおろか自動車であっても強引に草地を踏んで相互に行き来出来そうなほど近いが、接続はしていない。

しかも、下にある道の方が少しだけ幅も広く、どちらかといえばより県道っぽい外観をしているのだが、実際の県道はこちらなのである。
この部分は、地形図でも下の道の方が広く描かれているし、かつ地形図の縮尺では接続しているように見える。




14:00 《現在地》

そこから400mほど用水路を右手の友として進むと、前方に「止まれ」の標識を表示した十字路が見えてくる。起点からはおおよそ1.2kmの地点である。
格下であるはずの市道を相手に容赦なく一時停止を命じられた県道だったが、その屈辱をバネに飛躍する。これまでの万年1車線状態をこの交差点で打破し、極めてどこにでもありそうな、真っ当な2車線道路へと生まれ変わるのだった。
もっとも、これもかりそめの姿であり、県道石堤大野線の真の見どころは、この平穏で平凡な区間を抜けた先に待っていた。

チェンジ後の画像は、2車線区間の始まりに立っていた県道標識(ヘキサ)。
狭隘区間にはなかったくせに、恥ずかしくない道路になった途端に現れた。



14:03 《現在地》

何の変哲もない2車線区間は約650m続く。
この間も道は常に用水路に沿っており、両者のコンビは宝達丘陵と砺波平野の境目を極めて明瞭にしていた。

そして、次の馬場という集落(高岡市福岡町馬場)に入るところで、再び県道は怪しくなる。
県道標識に取り付けられた補助標識が、目立つ赤い矢印で指し示しているその進路は、どう見ても通過交通には不向きそうな狭路であった。
直前までの県道を引き継ぐに足る2車線の道が左にあるにも関わらず、わざわざその旧道としか見えない右の狭路へ、県道は導かれるのであった。

前半の展開をくり返すかのような、“ステージ2”の始まりである。




馬場集落に入った県道も、用水路と距離を置く気配は全くない。
序盤のように橋で渡ってみることもせず、完全にその左岸が県道の定位置として定着している。
道幅は1車線、ところにより1.5車線であり、典型的な狭路区間になっている。

もっとも、近くに自然と導かれるような迂回路が用意されていなかった前半の狭路とは異なり、後半の狭路はすぐ近くに2車線の迂回路(市道土屋馬場線)が完成しているので、交通量はさらに少ない。
利便性を考えればさっさと市道の経路を県道にした方が良いのだろうが、敢えてそうなっていないことに深甚な理由があるかどうかは定かでない。




14:06 《現在地》

馬場集落の中ほどに、県道が用水路を跨ぐ小さな橋がある。
やはり銘板などはない橋の名前は西橋といい、昭和44(1969)年の竣工である。
橋の下を流れているのは、用水路から水門によって分岐する支流の流れだ。

さらに進むと、県道から水路を渡った対岸側にも沢山の家屋が現れるようになり、一軒一橋の周到さで水路を渡る立派な道路橋が用意されていた。

……といったところで、馬場集落も終盤だ。
ここまで序盤を除けば、ずっと同じ水路に沿って県道が通っているのは一つの特徴だが、それが特段珍しいとはいえまい。
また、狭いと言っても、我々にとっては見慣れてしまった常識的な狭さの範疇である。
いくらミニレポとはいえ、パンチのない展開に退屈を始めてしまった読者もいるかもしれないが、お待ちかねのハイライトシーンは、この後、全く予期せぬ形で唐突に現れた。

驚く準備はOKか?



14:09 《現在地》

集落入口からおおよそ600m進んだところで集落が終わり田んぼへ入る。
県道は丁字路に突き当たるが、例によってヘキサ付きの矢印案内板があり、県道の進路が右であることを教えてくれる。
当然、私も疑いは持たず右折する。
別に疑う必要があるわけではない。確かに県道はここを右折する。間違っていない。

問題は、曲がった先の道だった。


ちょっと先にこれを見て欲しい。(←)

これは、最新の地理院地図の拡大であるが、

妙にガクガクしている。

この地図の表記の不自然さには先に気付いていたので、おそらくは昔ながらの住宅地などでよく見る入り組んだ路地が県道になっているものと予想していた。
まあ、よく見ると“ガクガク”の周囲には家屋がないなど不自然さはあるのだが、私には他にこのようにガクガクした線形が出来る状況が、ちょっと想像出来なかったのである。

で、実際はどうなっていたかを、今からご覧いただく。





こう、なっていた。


「 ??? 」

(↑)おそらく、こういう反応の方が大半だろう。

私も、見た瞬間に飛び上がったわけではなかった。なんか、違和感があるとは思ったが、

衝撃は、追ってじわじわとやってきた。




これって

白線の位置的に

考えると……

…………




(゚Д゚)



(後日ちゃんと確認したところ、確かに白線の外は道路ではないことが判明した!)



(゚Д゚) つづく


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