2010/5/18 15:40
前回も書いたが、このトンネルは全長1360mもあり、昭和49年の完成当時は長野県で最長の道路トンネルだった。
その内部は大きく右にカーブしており、排ガスに霞んだ洞内に出口の光を見ることは出来ない。
まだ姿は見えないが、近付いてくる車の走行音が轟々と響き続けていた。
坑門に取り付けられた、まだ新しい警告板「事故多し トンネル内歩行者・自転車に注意!!」が目をひいた。
一サイクリストとして、このトンネルには瞑すべき記憶がある。
数年前に日本一周達成間際のサイクリストが、このトンネル内で事故にあって亡くなっている。
ナトリウムの単色光と絶え間ない轟音が支配する、異常な世界。
事故云々を知らずとも、このトンネルの感想はひとつ。
非常に怖い。
とにかく交通量が多く、しかも流れが速い。
ちゃんとした歩道でもあればいいのだが、歩道はなく側溝の蓋を代用にするしかない。
(歩道の様に見える両側の一段高い部分は、側溝を車の衝撃から守るための段であり、あくまで歩道ではない)
特に自転車では、どうやっても万全に安全という通り方はないように思われる。
ルールでは自転車は車道を走ることになっているが、流石に後が怖くてそれをする気にはなれない。
それでは側溝の上を通るしかないが、そこはとても狭い。
むしろ狭すぎて、自転車を押して通行しようとすると、右にはみ出したハンドルを大型車に巻き込まれかねないという最悪!の状況。
結局、乗車のまま側溝上を通行しつつ、車に追い抜かれる前には停車して風圧に耐えるという、自転車の交通弱者ぶりを痛感するような通行方法をとった。
→【トンネル内の動画】(安全のため停止して撮影)
上の写真に写っている、横穴のようなもの。
これは北口から約500m付近で発見された短い横坑で、奥行きは約2m、高さ1.5m、幅4m程度である。
鉄道用のトンネルであれば待避坑のようでもあるが、何に使っていたのだろう。
内壁は素堀にコンクリートを吹き付けただけで凹凸があり、もともとこれ以上の奥行きは無かったものと思われる。
おそらくはトンネルを掘進する上での何らかの作業スペース(電源など)であったかと思うが、正体不明だ。
迫り来る車列の恐怖と、止まったり走ったりの繰り返しという面倒な行為にひーひー言いながら、やっと中間地点のカーブに差し掛かろうとしている。
が、ここにきてもともと悪かった環境が、さらに悪化する事態に。
側壁になにやら大量の配線や、正体不明のボックスが設置されているのである。
お陰で、ただでさえ狭い歩道通行スペースが、ますます狭まっている。
これが何に使われているのか分からない(たぶんトンネルの変状を測定する装置だろう)が、現状では配線なども朽ち果てていて、使われているようには見えない。
仮に現役だとしても、道路管理者はもう少しだけ歩行者や自転車の事も考えて欲しい気がする。
これまでのレポを見て貰えば分かると思うが、このトンネルには迂回路がない。
旧道は死んでいるし。
(実はひとつだけ、地図にはない“隠し迂回ルート”があるが、その話はまたあとで)
また、ここには国道と並行して地域高規格道路の“構想”があるみたいだが、それが開通するのは何十年先なのだろうか。
とりあえず、このトンネルに並行して歩道用のトンネルを設置してくれると嬉しい。
現状だと、下手なオブローディングより危険。
15:50 《現在地》
脱出!
10分かかった。
どっと疲れた。
もう、通りたくないよ…。
しかし、これでようやく次の手を打てる。
こちら側にも、旧道の入口があるはずだ。
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右側に旧道の入口がある…はず なんだが…。
…おい。
マジかよ。
右側、ぜんぜん出られねーじゃん…。
どうすんだよ。
どこまで行けば出れんだよ。
ちょっと先に行ってみるか。
勘弁してくれないか。
右への出口は全く無いまま、次の「平倉トンネル」がはじまりやがった。
外沢トンネルと平倉トンネルの間は、約330m。
結構な長さがあるのに、延々とスノーシェッドが続いていて出らんない。
外沢トンネルの旧道はもちろん、平倉トンネルの旧道だってあるはずなのに、ない。
トンネル間に出口が無いとは「奥只見シルバーライン」を思い出させる展開だが、今の私はそれを甘受できない。
出たい。
猛烈に出たい!
また外沢トンネルの南口に戻ってきた。
何とかして外へ出なくてはならない。
そう思ってあたりをよく観察すると… ん?
扉を見つけた。
間違いなく、外へ出るための扉。
…だが…。
扉は施錠されているのか、全く開けられないばかりか…
わざわざ、下の隙間まで封鎖している。
そこまでして外へ出したくないのか。
ここは監獄か。
もう意地でも外へ出たい!
にゃんこ
するしかない!
にゃーお。
隙間でゴキブリみたいにガサゴソやってる最中も、
頭より高いところを車はバンバン走り去っているわけで、
ドライバーの目には、私はどんなふうに見えるんだろう。
ろくなものではないだろうな。
通報されないうちに、いこ。
…にゅるん。
これでようやくスタートラインに立った。
ただの回送のはずが、意外に苦労してしまったが、
第2回戦のはじまりだ!!