神岡軌道 猪谷〜神岡間 第5回

公開日 2008.7.11
探索日 2008.7.3
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第二次探索 廃線レポ トップ


予想以上の発見の連続に、当初予定したペースよりも大幅に進行が遅くなっている。
そこで泣く泣く、探索予定区間のうち荒田沢〜杉山までの2km弱をすっ飛ばし、神岡軌道にとっては非常に重要な途中駅であった茂住(もずみ)へショートカットした。
よって、今回は茂住付近の廃線跡を紹介する。

この茂住は神岡三代鉱床のひとつ茂住坑がある土地で、鉱石は坑内軌道と茂住駅で接続された神岡軌道により、精錬所のある鹿間へ輸送されていた。
また、国鉄神岡線の登場によって神岡軌道が廃止となる際にも、最後まで輸送が続けられたのは、茂住から猪谷までの区間であった。

このように、茂住は鉱山鉄道としての神岡軌道にとって最後まで重要な駅であったが、現在はこの付近の山中地下1000m旧坑道に、宇宙線観測施設であるスーパーカミオカンデが稼働しており、東京大学宇宙線研究所や研究者の宿泊所などの施設も茂住にある。




 柔らか頭の楽しい廃線跡 

 ショートカット部分(国道のレポっす)


2008/7/3 12:55

前回、軌道上をひたすら歩いて到達した最終地点は、横山集落裏手の山を少し過ぎた荒田沢であった。
ここに架かっていた橋は橋台、橋脚だけを残し忽然と消えており、それ以上進むことを断念した。

引き返して東猪谷にて自転車を回収した我々は、国道41号および旧国道を走り継いで、横山集落へと戻ってきた。
前々回のレポ中に紹介した、県境の絶壁にへばり付く軌道跡のロックシェッドを撮影したのもその途中である。

本来であれば荒田沢から再び軌道跡を捜索して歩き始めたかったのだが、今回は時間的な制限もあり、ここは次の茂住まで国道でショートカットすることにしたのであった。




国道が荒田沢を渡る箇所にも、当然橋が架かっている。
しかも、新旧橋が並んでいる。
橋を渡った先でまた一本になるのだが、当然旧橋を行く我々であった。

橋の上から上流を眺めても、軌道跡の橋脚も、それらしいラインも見ることは出来なかった。




旧橋を渡った先に、水の湧く一角が小公園として整備されていた。
「荒田口不動尊霊水」との案内看板があり、かつて盲目の姫君の眼を治したとの伝説を語っている。
私が長旅の疲労から来る眼のかすみを取り除くべく、頭から水槽に沈没したのは言うまでもないことだ。
写真ではまるで、nagajis氏の口が霊泉の湧き口であるかのように見えるが、この写真に他意はない。無いはずだ。
万が一そうだったとしたら、私まで橋マニヤになってしまうしー。




橋を渡り、冷泉で頭を冷やした我々は、すぐに日陰へ入った。
横山トンネルの旧道区間にあったものと瓜二つの、青色のロックシェッドである。
そして、道路標識によればこの先はそのまま「杉山トンネル」へ続くらしい。

杉山トンネルは余り状況が芳しくないのか、ロックシェッドの入口に二つもの電光掲示板が設置され、「頭上注意」「対向車接近」の二つのメッセージを、微妙にタイミングをずらしながら明滅していた。
この両方が点灯している瞬間を写真に収めるべく、数枚のシャッターを切ったが、上手くいかず諦めた。




100mほどシェッドを進むと、そのまま真っ直ぐトンネルへ入っていくのであった。
これが杉山トンネルで、見たところ特別に変わったところはないし、見通しも悪くはないが、ここにも「頭上高注意」が点滅中である。
どうやら、見た目以上に危険な場所らしい。

国道41号は富山と名古屋を結ぶ幹線で、かなり大型交通量の多い道であるから、歩道の全くないトンネルの出現は、我々とっても戦慄すべき事象であった。車の居ない隙に、早急に通り抜けたい。




が。

この標識には思わず立ち止まってしまった。

 …かわいい。

このトラック、めちゃくちゃカワイイ。

しかも、この標識が取り付けられているアーチリングに、本当に「ギギギギ!」の痕があるのが痛々しい。
ほんとドライバーさんは徐行してあげてくださいね。

埃を被った銘板を見る限り、このトンネルは思いのほか古くて、昭和42年竣工、全長426m、幅7mというミドルスペック。
ちなみに旧道も有るのだが、その話はまた今度ミニレポあたりで。




杉山トンネルをくぐり抜けると、そこは杉山地区。
この短い移動によって、本日はやや摂取過多となっていた鉄分ばかりでなく、水分と道(路)分も補給でき、再び軌道跡を精力的に歩く元気が湧いてきた気がする。
残り半日、行けるところまで行くっちゃおう!!

なお、神岡軌道の茂住駅があった茂住鉱業所は、トンネルを出てすぐ左に登る坂の上にあるのだが、ここはいまも神岡鉱山の敷地となっており、残念ながら正面から入ることは出来ない。
一旦直進して東茂住橋を渡り、人家の密集した東茂住地区へ入る。
ここに軌道跡への正式な登り口がある。




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 変化するロックシェッド 


13:09

茂住というバス停を目印に、旧国道かも知れない一本山側で国道に平行する細道へ入る。
左右には茂住の家並みが続くが、思ったほどヤマの街らしいスカスカな印象はなく、むしろ都会の路地のような雰囲気である。
しかも、民家のような姿をした小さな事業所が多くあって、その表札を見ると「東大」「宇宙線」などの、ちょっと似つかわしくないようなコトバが躍っている。
こう見えてもここはスーパーカミオカンデのお膝元、宇宙科学先端の村なのであろう。




突き当たりまで進むと道は二手に分かれるが、左の山の上に登っていく道の入口にこの案内板が建っている(→)。
「ノーベルへの散歩道」と銘打たれたミニハイキングコースが整備されており、この順路に軌道跡の一部が組み込まれているのであった。
附属の説明文によれば、ノーベル科学賞を受賞した研究者たちも、疲れた頭脳をこの散歩道で癒したらしい。軌道跡が発散する「鉄イオン」が良い効果を与えたのだろうか。

突き当たり左の道を登って、軌道跡と交差する地点へ進む。




照りつける太陽の下、気づけば朝はあんなに吹いていた風も止んでいる。

……アツイ。

ひーひー登ること100mほど。
ヘアピンカーブの頂点という変な場所で、軌道跡らしき小径が突然横断してきた。【現在地点】
左の写真のトラックの裏手から出て来て…。




ヘアピンカーブ内側の意外な場所へと、細道が突っ切っている。

これが、久々に再開した神岡軌道であった。

さあ、右左、どちらへ行こうか。
神岡へ急ぎたい気持ちもあったが、『鉄歩』には「駐車場になっている」と紹介されていた茂住駅の跡を確かめたい気持ちもあった。

よし。
少し戻ることになるが、左へ行って見よう。
チャリのまま、トラックの向こうを覗いてみると…。





なんやこりゃ?


ナニコレ?

いくら軌間610mとはいっても、これはあんまりでしょ?
歩行者がようやく二人並んで歩けるかと言うくらいの、狭い狭い… ロックシェッドなの??
藪の真っ直中にむかって黒い口を開ける姿は、、まるで放置された「どこでもドア」のようだ…。

しかし、ここが軌道跡なのは下の案内看板にも書いてあった事実。




13:16 

狭い!小さい!

でも、続いている!!

やっべー(笑)、 怪しすぎるぞー。

普通に考えれば、軌道が廃止された跡に新たに作られた歩行者用のロックシェッドということになるのだろうが、いったい誰がための道?
ノーベル科学者??
しかも、岩石の直撃を受けたものか、コンクリートの擁壁は所々破壊されている。




自転車に乗ったnagajis氏と比較して、ロックシェッドはこの大きさ。
こんなに小さいロックシェッドは、ずいぶん昔に秋田県の抱返り渓谷の遊歩道で見た以来だぞ。
廃道ではないのかも知れないが、ほんと不思議な道。





 しかも長いし、曲がってるし〜。

※動画も後でありますよん。





にゅ?
にゅ!

にゅーーーーーー!!!


さささ、さらに細いトンネルが……!

気づけば送泥管らしきパイプも同居しているし。
管の内部には動くものの気配もあるしー。




異常に狭っまいトンネルへ入る。
…というよりもロックシェッドか。

チャリで通行するのには壁に接触しないかヒヤヒヤするほどに狭いこの部分は、ごく短く10mほどに過ぎない。
周りのコンクリートも新しく、前後の構造物よりも後から追加されたように思う。

そして激狭ゾーンを抜けても、まだロックシェッドは終わらない…。

※後でお見せする動画では、ここで壁に接触し、クラッシュ寸前の事態に。




ワケワカメー!!


突然、ロックシェッドの断面が拡大。(写真は振り返って撮影)

大きくなったあとのロックシェッドは、軌道時代の構造物そのものであろう。


このロックシェッド、入口から既に100m以上も続き、途中で断面や素材が3度も変わっている。

もうこの時点で相当に異常な構造物なのだが…

  この後…



まだまだ変化する!





さあ。
これは見慣れた軌道跡のロックシェッド風景。
しかし、チャリで走ることが出来るものはこれが初めてだ。
その狭さゆえ、明かり窓の連続するロックシェッドの体感風景はかなり速くて、妙に迫力がある。
もう子供じゃないのに、電車ごっこをしている気持ちになった。

なお、明かり窓の部分には、おそらく後付けと思われる、転落防止用の欄干が取り付けられてある。




 !! 

なんということだ。

明かり窓が無くなったと言うことは、おそらくこれは…隧道!

既に入口からは150mほど来ているが、ここに来て遂にロックシェッド→隧道化。

この闇の先には、一体何があるの?!
現時点では全く明かりが見えないのだが、何かの間違いで坑道へ入ろうとして居るんじゃ…。
怪しく蠢く送泥管もあるし…  やべーーよ!!




明らかに完全に疑いなく隧道だ。

風は抜けており、おそらく貫通はしているのだろうが、未だ出口は見えず。

灯りを点灯させてチャリの舳先で闇を掘削しながら進んでいく。  びくびく。


…にゅーると、左へカーブしている。

そして、カーブの先には、明るい場所が…




! 



またしてロックシェッドか。


でも、何かそれだけじゃないような…。

これまでコンクリート敷きだった洞床も、なぜか木敷きに変わっているし…。


 …うわっ。

木道は踏むとペコペコした感触のうえ、何か所々隙間があって緑がチラリチラリと。









  …まさか、これって。






やねぇ。


金属ロックシェッド(小)

 →コンクリートロックシェッド(小)

  →コンクリートロックシェッド(大)

   →隧道

  →金属ロックシェッド(小)+

なんと、五変化のロックシェッドであった。

写真は、深窓のnagajis氏。




 茂住駅付近 選鉱場跡 


13:19 《現在地》

一連のロックシェッドは全長360mほどあって、抜けた先はまさに鉱山地帯の直中、茂住谷のスラグ堆積場の下であった。




軌道跡はこの先、神岡鉱山の構内道路である舗装路に変わり、茂住谷を左手に見下ろしながら、茂住駅跡地である選鉱場前へと続いている。






谷の対岸には、先ほどまでキャーキャー言いながら通り抜けたロックシェッドの連なりが、木々の合間に見えていた。

中にいるときには気づかなかったのだが、ここは『鉄歩』にも外観だけ紹介されている区間であって、「茂住坑の作業坑道になっている」というような事が書かれていた。
ゆえにここだけは今回、立ち入ることが出来ない区間になると考えていたのだが、予想に反して、一切の通行止の措置はなかった。
本の取材当時(2000年)からは、状況が変わったのだろう。



振り返るロックシェッド付き橋の奇観。

二径間のガーダー橋であり、桁も軌道時代のものがそのまま使われているようだ。
本日これまでに見た現存橋の中では最大の規模である。

なお、谷の後方を堰き止めて見えるものが、スラグ堆積場である。
スーパーカミオカンデは、この背後の山の地中4kmほどの位置にある。




13:23 

なにやら行く手が騒がしいと思ったら、ちょうど茂住の選鉱場施設が解体されている最中だった。
廃墟マニアにはそこそこ知られた巨大遺構群であったようだが、今年中には完全に姿を消すと思われる。
駅の跡地はおそらく正面の駐車場のあたりだったと思われ、広い敷地は認められるのだが、人目に付きたくないのでここで撤退する。

とりあえず『鉄歩』によれば、駅跡に具体的な鉄道遺構は無いとのことである。




ここからは、見かけによらず(失礼)宇宙研究先進地であるの茂住の家並みが一望された。

軌道跡は引き続き国道より一段高い山腹を進んでいくのだが、緑のなかにそれらしきラインが見えるではないか。

神岡軌道最大の中継地である茂住を終えて、これより神岡への前進を再開する。



楽しい楽しい五変化ロックシェッド。

これをチャリに乗ったまま通過するたのしい動画は、
【こちら】





次回はここから先へ進むぞ。







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