神岡軌道 猪谷〜神岡間 第8回

公開日 2008.7.21
探索日 2008.7. 3
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 探れば探るほどに数を増やす遺構たち

 赤谷橋梁付近の軌道跡


2008/7/3 14:00

nagajis氏の“心眼”によって捕捉された、赤谷をわたる廃橋。
決して飛び上がるような巨大橋ではなかったが、また一つ新たなる発見を成し遂げた達成感は、落胆を誘うような物ではなかった。




橋のたもとへ登り着いた。
赤谷の左岸側だ。

このあたりは日影がちなのか、辺りには大きなシダが目立つ。
オブローダーにとってシダは好ましい植生である。
視界が良く歩きやすいし、毛虫などの害虫の心配も少ない。

今度はこの橋を起点に、前後の軌道跡を少しずつ探索してみよう。

まずは橋を渡り、北側へ向かう。
(写真に示した矢印は南向き。)




赤谷橋梁。

全長は5mほど、高さは2m前後か。
枕木が一部残っており、これまでの橋の中でもよく旧態を留めているほうだ。
木洩れ日というシチュエーションにも恵まれ、とても美しいと思った橋だった。

しかし、意中の橋を前にしたのにnagajis氏は今ひとつ浮かない顔をしていた。
あとで聞いたら、nagajis的にはもっと大きな橋が見えた気がしたらしい。
それで落胆していたそうなのだ。


細田さん、見てるかい?
どう、この橋は。
我々が普段使っている「渡橋難度評価法」によれば、こんな感じ。


基本難易度 長さ→かなり短い(1/3)
高さ→ほぼノーリスク(1/4)
部材→完全安定(鋼鉄)(0/3)
= 2/10
増減評価梁の巾→かなり細い= +2
梁面の処理→ノーリベット= −1
梁面障害物→あり(朽枕木)= +1
総合難度評価  3 (やさしい)

定義の大木橋=11、旧柴崎橋=10、自己最高経験=15など



橋を渡ると左に曲がり、すぐまた右に曲がる。
赤谷によって曲げられた斜面に沿う、自然なカーブである。
そして、再び左下に国道を見ることになる。

僅かに踏み跡の残る浅い草藪をさらに進んでいくと、




国道の落石防止柵が軌道敷きを占拠していた。

このような物を建造するためには、軌道跡の平場はまさにうってつけだったのだろう。
しばらくは歩いてみたが、状況に変化がないので100mほどで引き返した。

橋を再び渡り、今度は南側へ進んでみる。





14:47

赤谷橋梁の南側の軌道も、谷を挟んで北側のそれと線対称のカーブを描いている。

ただし、気になる物体が一つ。
軌道の右カーブの外側法面に、コンクリートの一角がある。


それは、どことなく隧道の坑門を匂わせる形状をしている。




これって…

 マジで隧道の跡だぞ。

完全にコンクリートで塗り込められてはいるが、これは隧道の坑口だ。
微かにアーチの形に模様が見える。

しかし、何故この坑口はこれほど大がかりに埋め戻されたのだろう。
神岡軌道の隧道はこれまで何本も見てきたが、完全に封鎖された物はこれが初めてだ。




またしても地図にない隧道との遭遇。

当初、軌道のラインだと思ったのは、ここまでも何度かその存在を認めた「旧線」のようだ。

隧道を敢えて塞いだ理由は分からないが、ともかくこの旧線跡を利用することで、隧道区間を迂回することが出来た。
さすがに「廃線」の「旧線」だけあって、路盤の風化度合いはより深い。




旧線跡を進む。

苔生した空積みの石垣が存在しており、純粋な鉱山鉄道であった大正時代の輸送風景を連想させる。

50mほどで写真のカーブを曲がると、





見えてきた!

 あそこが隧道の出口らしいぞ。

何故塞がれているのか分からないだけに、今日これまでで一番ゾクゾクを感じる、坑口接近の場面だった。




 ぞわぞわぞわー……


何でこんなにボロボロなんだ?

まるでこのコンクリートは水溶性であるかのように、全体の角が取れて丸みを帯びている。
そこにはなにか、禍々しさのようなものさえ感じた。

あの不自然に大がかりな坑口の閉鎖を見た時点で、なにか気持ちの悪い隧道だと思った、その弱気のせいもあるだろうが…。





ミイラの凹んだ眼窩のように黒い窓。

身をくぐらせれば、そこにどんな隧道が待っているだろう。



先頭で入って、左を向くのが、 …ちょっとだけ怖い。






塞がれていた。

またしても、完璧に。


壁を叩いてみる。
耳をあててみる。

冷たい。響かない。重い。

おもわず叩いた悪趣味な軽口がしつこく耳に残ってしまい、後悔。




今回発見した隧道は、これで6本目。

はじめて内部へ入ることが出来ない、「跡地確認」のみの隧道となった。

そして、この隧道にも旧線らしき跡があった。

『鉄歩』には一切「旧線」の存在に触れた記述はないが、それは単に気がつかなかったのか、あるいは旧線などというのは我々の妄想で、なにか別のものだったのか。

はっきりしないのが現状だ。




隧道をあとにして、さらに南へ進んでみる。
しかし、国道に近づきすぎたらしい。
森を剥がされ日なたになった軌道跡は、足元の見えない歩きにくいものに変貌した。
nagajis氏も写真では足を草にとられ、不自然な姿勢で苦しんでいる。
この下20mほどに、Nの屋根がダラダラと続いていた。




流紋のような凹凸を全体にまとった不思議な岩が、ポツンと落ちていた。

きっと珍しいものだと思うが、ちょっと大きすぎて持ち出すのは断念した。
この岩の正体に心当たりのある方は、教えてください。
触った感じは堅く重く、また、ざらついていた。




14:54

隧道から200mほど進んだところで、地表の凹凸を完全に覆い隠すほどの猛烈な藪が立ちはだかった。

すぐ足元からはシェッドを通してくぐもったエンジン音が聞こえており、この先の軌道跡に隧道や橋の存在する可能性は低いと判断。
軌道上の踏査を断念し、再び国道からの観察に切り替えることにした。



この赤谷では橋と隧道を一本ずつ確認することが出来た。
ほんと、「軌道へ登って成果無し」ということが、いままで一度もない。
嬉しいが、同時に相当数のやり残しもありそうで気持ちが悪い。




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 どどーもん! 


15:01

午後3時、赤谷から先へ進み始める。
この辺りになると、さすがに今日中に神岡まで探索することは不可能だと理解する。
そこで我々は探索日程を1日延長するという決定を、さしたる葛藤もなく採択した。(ふたりとも社会人じゃないみたい…笑)
取りあえず今日は進めるところまで進み、明日も半日程度だが神岡軌道を探索しよう。

この決断により、私の焦りはだいぶ軽減された。

ところで、Nと番号を振られたこのシェッド。
なかなか名前が奮っていた。


さあ、皆さんもご一緒に!




どどーもん!

何度でも口に出したくなる、美しい日本語である。

あなたも遠慮しないで欲しい。

いいんだよ言って。口に出してくれ。

どどーもん。



赤谷から土(ど)までは、これまで以上に多くの洞門やシェッドがひしめく、地峡地帯である。

水面すれすれに見える国道だが、もしダムがなければ、下流の景勝地「神通峡」もかくやというような絶壁の渓谷なのだろう。

この写真には、
「O 土洞門3」
「N 土洞門2」
「M 土洞門1」
「L 土スノーシェッド」

これだけの構造物が写っている。

シェッド自体は何ら個性のない奴らだが、その名前のせいで私には印象深い存在となった。




軌道とは無関係だが、ちょっと寄り道。

ダム湖も上端が近づきつつある辺りで、こんなラーメン構造の水門のような構造物が現れた。

水上に出ているのはこの骨組みだけだが、透き通った水面下にも同じような梁が無数に見えている。

正体が分からないし、幻想的な雰囲気もあり、思わずチャリをとめて湖畔に降りた。




釣り人には喜ばれそうな特等席だが、右の出っ張っているところの下には全く支柱がなく、乗る気にはなれない。

左に並んでいる車止めのようなものは、切断された柱の基部で、鉄骨も使われている。
やはり水門があったようだ。
新猪谷ダムは北陸電力の発電所だが、土の辺りは昔から神岡鉱山に附属した水路発電の要地であったから、これも関連施設だと思う。




単なる風景だが、掲載しなければ気が済まない風景(←)と、

深度不明の湖水に沈むラーメンの怪しさ(→)。




15:16

そして、茂住から約4.5km。

跡津川と高原川の合流地点の集落、土の入口に立つ。

茂住が採鉱の中枢であるならば、土は発電の要。

今回の神岡軌道探索においては、全行程22kmのほぼ中間地点にあたる。
ようやくだ。

この先神岡に至るまで、ここ以上に大きな集落はない。
ますます地形は急峻となり、軌道踏査の難しそうな区間も二つ、待ち受けている。




上の写真の分岐を左折するのが旧国道で、土の集落を巡ってからまた現道に戻ってくる。
再合流地点は。突き当たりに写るカーブの手前だ。

しかし、旧国道から土へ入ろうという我々の企ては、思いがけない「通行止め」に遮られた。


次回は、この旧国道を突破し、土駅へ。

そして、nagajis氏を歓喜させる橋梁と、

私を狂わせる隧道が… また現れる!!











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