杉山1 2 3/土1 2 3 4 第一次探索 廃線レポ トップ |
2009/4/27 15:03
今回は、新猪谷ダムと「赤谷」の間に残る、推定400mの「小区間(2)」に挑む。
前回の小区間(1)同様、ここもこれといった期待感の無いエリアではあるが、今回は「踏破すること」に拘りを持っていたので、よほど大変じゃない限りは、頑張るのである。
前回の夏(7月)の探索では、この藪が嫌で引き返したのだった。 4月でこれという時点で夏の“威力”を推して計るべきであるが、猫のように姿勢を低くして潜り進む。
ぐむっ。
ぐむぅ。
ただでさえ藪が深い最中、道幅を狭める構造物が容赦なく現れた。
国道への雪崩の落下を阻止するための、強固で巨大なコンクリート重力擁壁だ。
廃道化後に別の用途で手が入ってしまった廃道は、黙って放置されていた場合よりも通りがたいものが多い。
ここもその例に漏れない。
うむむ…。
どっちへ行くか、悩む。
どっちへ行っても最後は同じだろうが、どっちが楽に進めるだろうかと。
そんな選択を何度か強いられながら、それでも着実に距離を詰めていく。
藪は深いが、おおむね順調。これならば、400mはものの数分か。
その藪も遂に晴れた。
ふと見下ろすと、国道の姿が無くなっている。
またしてもシェッドの下に隠れていた。
実はこのとき、私の知らぬ間に、
孤独な戦いが、すでに始まっていた。
15:12
それは恐らく、国道にシェッドが作られる前からあるのだろう。
古い落石防止ネットの支柱が、微妙に歪んだ姿で多数並んでいる。
また、路盤の中央には、焼け爛れた古い木製電柱が、ポツンと立っていた。
この電柱が、私の心をとらえた。
逆に言うと、この場面は私にとって、そのくらいの意味しか持たないはずだった…。
電柱。
いや、電信柱だ。
小さな金属のプレートには、「上平通信線」という文字とともに「58」の番号が記されている。
これだって軌道の廃止後に建てられたはずだが、すでに役目を終えて久しい様子。
自分が随分と古いものの痕跡を追い求めていることに、今さらながら気付かされる。
電柱の先へ 5歩 進んだところで、足が止まる。
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キタ――!!
キタぁぁぁ!
一瞬、唐突すぎてそれが何なのか考えに詰まったが、それはどう見ても橋だ!
半分だけ残った、軌道時代のコンクリート橋だッ!!!
だが、心に背いて足は止まったままだ。
この写真を見て欲しい。
上の写真を撮影してから、戻って撮った訳じゃない。
上の写真は、望遠で撮ったのだ。
だから、彼我の隔たりというものが、
実際にはこれだけある。
この距離、
約5メートルが、大きな問題となった。
まだ、お分かりいただけない方もいるだろう。
もう、分かってしまった方もいるだろう。
見た目よりも、この5メートルは危険な5メートルだ。
どうやって進めばいいのかが分からない5メートルだ。
しかも、これが圧倒的にやっかいな問題なんだが…、工夫すれば行けそうな感じもしてしまう、そんな5メートルなのだ。
この、「頑張れば」というのが、本当に曲者なんだよな。
分かってる、自分がこれに何より弱いのは。
そのせいで何度怖い目に逢ってきたか。
だろうな…
結局、こうなる…
チクショウ…
なんでこんな所(支柱の付け根)に、廃レールが括りつけられているんだよ…。
ここを踏んで行きなさいって、そう言う意味かと思うじゃねーか。
それ、 罠 なんだろ…。
と、 遠いッ…!
向こう岸が、遠いッ!!
そして、
ちょっと…
マジ怖い。
ここに桟橋のような廃レールが無ければ、諦めて別の手(といってもそれがあるかは不明だが)を考えもしただろう。
廃レール無しでは、どうしょうもなく超えれぬ場面なのだ。
唯一の救いが、2メートル毎にある、支柱。
そこが、完全に安全な橋頭堡の役割を果たしている。
しかし…、2メートルという距離は微妙に遠い…。
罠だ!!
絶対に罠だ!!
なぜ隧道が見えるッ!
この区間にそんな物は無いはずだろー。
そう思ったから、前回は探索をしなかったんじゃないのか!
ええッ!! nagajisさんよぉ!
(↑失礼。前回指令したのは、実は私でした…)
チョッ
チョーッ!
チョッ!!
チョッつ!
上の写真から、1cmも進んでないんじゃないか?!
これ、どう表現すれば良いんだろうな。
両足がちゃんと構造物に接しているのに、異常に怖い。
怖そうだと思っていたが、予想以上の怖さだ。
まず、この姿勢が良くない。
ふにゃふにゃふにゃふにゃ、全然体の芯が立たない。
そりゃそうだよ。体重のほとんどはブルンブルン揺れるレールが預かっていて、それでも右へ転げ落ちるのだけはぜったい嫌だから、上半身を法面に斜めに寄せている姿勢。。きっと物理学者でも計算不能の姿勢だ。
“クソ姿勢” だ!
“クソ姿勢” の模式図を用意してみた。
怖さが伝わるだろうか。
ポイントとなるのは、ネットの無駄っぷりだ。
外見的には、ネットが張られていることで、多少の安心感というか、“守られている”感のようなものがある。
しかし、実はそれも誘い込むための 罠 のひとつだったのだ。
廃レールに体重を預ける以上、ネットにはどうやっても手は届かず、無理にそれをすると【こんな風になる】こと請け合いだ。
ネットは生還を難しくする、ただの罠だ!
こっ、 こんなはずでは…ッ!
(こんな顔するなら、最初から挑まなきゃ良いのに…)
おぅえ…。
吸い込まれそうだ。
吸い込まれそうだ。
前に某国道ばたのこんなネットの裏側に、ミイラ化した鹿の死骸が挟まっているのを見たことがある。
あの焼けるような醜景が、脳裏に甦る。
ここで落ちれば、開放的な場所に墜落する以上に、自力での生還は難しくなりそうだ。
見たところ下はびっちり閉塞していて、袋の鼠。
そもそも、墜ちればそれだけで息絶える危険もあるかも。
これは、失策だな。
ここは、私の実力(バランス感覚)では、迂回すべきだった。
くじ氏(仲間のロッククライマー)には便道であろうが…。
15:20
もちろん、墜ちたらこんなレポは書かない。
無事、成功したよ。
成功したけど青ざめてるって、負けた気分だって、松の木以来か。
いや、他にも忘れちゃならん失敗談が色々あったはずだが、忘れてる?
忘れてないよね?
いや、忘れてるかも…?
さ、さあ…、ともかくは収穫…。
手にした収穫物を楽しむことにしよう…。
それだけが、後悔を過去に追いやってくれるはずだ。
この橋は、今まで私が見たことのない形をしている。
去年探った区間では、この形の橋は一本も見なかった。
適当な形容が思いつかないが、冷凍室の中の製氷皿のような形というのか。
コンクリート製の上路鉄道橋で、欄干があるのは珍しい。
(普通、路盤を欄干が包み込むような形の橋は「下路」や「中路」だが、本橋の欄干はあくまでも単なる欄干であって、荷重を受け持つ部材では無さそうなので、「上路」橋と判断した。)
穴だらけの桁(これがまた想像していたよりもだいぶ高かった)から底を見透かすと、H型の橋脚が見えた。
はっきりとは見えないが、恐らくこの橋脚は桁と一体になっているのではないだろうか(ラーメン橋)。
見れば見るほど変わった形の桁だ。
前回見つけなかっただけで、神岡軌道にはこの形状の橋が他にもあるのだろうか。
ということで、半身の橋を一本収穫した。
続いて、隧道があったよね…。
…ちくしょうめぇ…。
隧道が潜んでいやがったか。
国道の真上に…、無いと思っていたが…。
国道を通る限り、基本的にロックシェッドの上は覗きようがないのだから、気付けなかったのも無理はない。
…いや、しかし、 嬉しいぞ。
嬉しいぞ!これ!
が、
ここで勇んで飛び込むと、ヤバかった。
罠だ!
そっくり路盤が抜け落ちていた。
あんなにビクビクしてネット地獄を越えた直後の安堵。
そして、気付くと目の前に隧道がある状況。
これはヤバイ罠!
隧道へ夢心地で駆け込めば、ネットの時とさほど変わらぬ地獄へと、自らホール・インするところだった。
数多の敵を斬って伏せ、時ぞ来たれり!
閉塞している…
罠だったんだ……。
まあ、こういう日もあるさ。
十分、じゅうぶんだよ…。
隧道があったことを、こうして確かめられたんだからね。
さあ、迂回して先へ進もう。
恐らくもう少しで、見覚えのある赤沢に出られるはずさ。
出た
ら、
白い… (T_T)
終わつた。
無理。
これはどうやっても無理だ。
隧道が迂回できない。
またしても、この展開なのかよ…
いったい、この小区間(2)には、幾つの罠が仕掛けられているんだ…。
これ以上進むためには、不本意だが下へ降りて、国道を迂回するより無い。
下へ…
下へ…