2008/4/2 13:15
首尾良く3本の隧道を突破した私。
古地図が教える隧道の総数は4本。
ラストワンを目指して前進するのであったが、恐れていた事態に遭遇。
路幅10cmを残して、ゴッソリ道が落ちていた。
そこでやむなくチャリを置き、身軽な状態で「偵察」と称して先へ進んだが、間髪入れず第二の難所が現れる。
果たしてここは突破できるだろうか?!
うむ! 行けるぞ!
間違いなくいままでで最大の崩壊地であり、地表の土砂を全て押し流すような崩壊が、過去10年の中に起きたと見る。
温暖多雨で植物育成には最高の条件であるこの山中にありながら、いまだ引っかかったような灌木しか生えていないことからも、その崩壊の凄まじさが窺える。
だが、幸いにして道形は残った。
表土を削っただけの道であれば一巻の終わりであったろうが、元来の地形の急さゆえ、地山の固い岩盤に届いていたことが功を奏したのだ。
幅50cm弱、しかも全体が谷側に傾斜した、まさに鬼気迫る道だが、どうにかチャリでも越せそうだった。
よしよし。
またしっかりした道が出て来たじゃないか。
しかし、ここで慌ててチャリを取りに戻るほど私も馬鹿ではない。周りからは無鉄砲だと思われている私だが、実は慎重なんだ
…実を言うと、理由は別。
私は一度決めた進路はなかなか変えられない性格なので、置いてきたチャリのことを忘れたわけではないが、単純にここでは先が気になる気持ちが勝っただけだった(笑)。
13:17
あ!
あああああ!!
出たな。
4本目の隧道。
見える。 こっからでも暗いところが。
今度はリュックサックを置き去りにして、まるっきり荷物無しの状態でチャリへと戻る。
このリュックは、チャリと一緒にここへ必ず戻るぞという、私の声なき意思表示だ。
二つの難所は… 特に一つめの幅10cm道の方は、これまでチャリ付きではチャレンジした事のないアクションを強いられそうだが、是非とも越えねばならぬ場面だと思う。
なんなんだ!
このシュールな絵は!(笑)
ポツンと置かれたチャリが、カワイイじゃないか。
13:23 よし! チャリと再合体!
流石にこの幅に車輪を合わせる事は…
…無意味だった(笑)。
こうなると、とうぜん…
こうせざるを得ない。
(チャリを左手に抱えている。タイヤは空の中。)
万が一足場から墜落しても斜面の途中で止まれるとは思うが、この傾斜である。もうチャリを回収する事は不可能になるだろう。
そして、足場はとにかく狭い。
さらに、少しも平坦ではない。苔に覆われてさえいる。傍らのツタに右腕を絡ませなければ、とても横断し得ない。
私だけでなく、これにチャリが加わった重さを、足場も、ツタも、支えてくれなければならなかった。
うわー!
とかって、びっくりさせてゴメン…。
これは歓喜の自分撮りでした。
ともかく、これまでで最大の難関を突破!
偵察の段階で大分枯れ藪を除去しておいたので、この先はすんなりとチャリを通す事が出来た。
さて、気を取り直してもうひとつの… “明るい難所”。
しかし、これまでの苦労を思えば、この場所は見た目ほど恐ろしくはなかった。
一度歩いていたことが精神的にも楽にしてくれた。
軽く突破である。
さて、いったり来たりで20分ほど要したが、ラストワンと目される4本目の隧道。
その入口にいま迫る。
今度はどんな穴だろうか。
ああっ!
そういえば!
そう言えばまだ、貫通しているかどうか確かめてなかった!
おいおいおいおい……。
まさか、この隧道が塞がっているなんて事は……??
なぜさっき確かめてからチャリを取りに戻らなかったのかと、己の浅薄さを情けなく思ったが、この自分への叱責が数秒で終わるか、それともこの後ネチネチと続くものになるか。 …その答えはきっともう数秒で分かる。
さあどうだ!
貫通か!! 否か…?
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13:32 4号隧道到着
げっつ!
助かった! 助かりました!
4号隧道も健在!
房総の地質は本当に素晴らしい。
こんな怪しげな隧道たちが支保工ひとつ無しで半世紀以上もほとんど形を失わずに残されてきたのだから。
特にこの4号隧道東口付近には、五角形断面の鋭角な頂点が完璧に保存されている。
これはもう工者がちゃんと設計図に従ってこの形…日本古来の観音掘りを徹底したのだと分かる。
4号隧道もまた狭く短い隧道であった。
これまででは、1号隧道が唯一50mを越えるくらいの延長があり、残りは15〜30mほどの長さである。
また、その幅や高さも普通自動車や林鉄の車輌が通れるサイズではない。
この一連の道が車道は車道でも「軽車道」と呼ばれるような、“オート三輪”が通る程度の道、ないしは馬牛引きの橇道であったことを想定させる。
はっきりと側壁に浮き出した幾筋もの地層の線を憶えておいて欲しい。
さて、今度はどんな景色が待っているのだろうか…。
最初に貫通さえ確かめられてしまえばあとは安心して通れる隧道に較べ、外の方がよっぽどスリリングだ。
さっきあれだけヒヤヒヤさせられたので、ある意味“外恐怖症”になりそうでさえあった。
この辺りは普通の人の感覚とは逆になっているかも知れないが、むかし森吉森林鉄道の運転士をしていたという人物も、「トンネルの中は暗くて最初は不気味に思ったが、慣れると落石やカーブがないので安心して走れた」と言っていた。
西口坑口はスラブ状の一枚岩を刳り抜いた独特な形状をしていた。
洞内の壁の模様であった地層が、そっくりそのまま坑門の模様になっているのが面白かった。
この隧道は一枚岩でとても安定していそうだった。
素人「山行が」のお墨付きなど信用には値しないだろうが、「私が生きている間は保つだろう」と誰の迷惑にもならなそうなので言わせてもらう(笑)。
私が寿命になったら誰か見に行って欲しい。そしたら奇麗に崩れてたりしてな。
さて、与太話はこのくらいにして、想定された4隧道を終えたその先の道を見よう。
後は稜線に速やかに合流してくれれば私としては言うことがないのだが…。
う へ …
これは…
今度こそ、本当にマズいような…。
ガビーン
終わった‥
まってよー。
これは、チャリは無論。
歩きもどうかというレベルだぞ。
いや、無理っぽいかも。
えーー!?
ここまで来て、行き止まりなのかよ?!
それとも、これは崩壊??
どっちにしても最悪だぞ。
うおっ
うぅぅおおぉーーぉぉお!
なんだか今回叫びすぎ?
いや、ホントこの道は
一喜一憂
喜怒哀楽
悲喜交々の道。
マインドと一緒に辿る道だ!
ヤバイヤヴァイヤバイヤバイ!! きてゅよ。
つか、これで穴が塞がってたらズッコケるけどな。
これって、私のカウントが正しければフツーに、
5本目じゃん…。
これ、もしかして…
房総の暴走、始まった?
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