都道201号 十里木御嶽停車場線 第3回

公開日 2008. 6.19
探索日 2008. 1. 3

到達! 山上の宿坊街

 私的記念地 …不通都道同士の交差点


2008/1/3 15:20 

チャリ同伴での登攀が苦しく、思考が「ぬこ」に逃れたξ道であったが、1時間の試練に耐えて名も無き峠に到達。
海抜700mを越える山上の厳しい寒さは、火照った体をすぐに冷ました。

息も落ち着いたところでそろりと出発。
不通都道走破の決着地であると同時に、古くからの信仰が根付いたこの山域の核心部、「御嶽宿坊街」へと向かう。

峠を過ぎても下り坂は最初に20m程しかなく、右側に移った山腹に沿って緩い登りが再開した。




200mほど進むと、斜面上に稜線が明確となる。
御岳山と日の出山を結ぶ、この一帯では主となる稜線だ。
都道はまず、この稜線上を目指すことになる。

  んあ?


稜線に、 石垣?




あれは確かに石垣だ。

もしや、これから合流する「もう一本の不通都道」の姿なのか?

  … 。


な、なんか負けた気がした。




初め見たときにはまだ結構上にあると思った稜線だが、こっちがグイグイ登り、向こうは向こうで下り尾根であったから、呆気なく到達した。

いや、今はまだ到達寸前の光景だった。
到達間際、稜線上にまず見えてきたのは朱い小ぶりな鳥居。
そして数本の桜の老木である。
おもわず、足が止まる。
最後の登りがきつかったからではない。

構えたのだ。

これから遭遇するのは、日本唯一級の道路特異点だ。
(特異点名:都道の自動車交通不能区間同士の交差点…おそらく日本に二箇所だけ)

県道であれば他にも有るし、「都道」に拘るなんて他愛のない言葉遊びだと思われるかも知れない。
それ以前に、ここをそんな風に認識し、また価値を見出す人は、都民多しといえどもかなり少ないだろう。
しかしここは、私が日野に引っ越してきて以来、「ずっと気になっていた地点」だった。
07年1月7日の引っ越しのすぐあと、新天地の版図を広げるような気持ちで都内の道路地図を見まわした私が気づいた、最初の「特異点」だった。

これはある意味、私にとっての「上京記念地」ともいえるもの。
上京361日目にして、いま…




到 達!


15:30 【現在地

右が私の登ってきた都道201号。
左が日の出町の大久野に通じる都道184号だ。




都道201号に向けられた道標は二本。
ひとつは「秋川渓谷観音温泉」(どこだっけ?)、もう一つはこの写真の通り「上養沢バス停 4.0km」とある。
このうち1.7kmほどが車の通れない山道だった。



都道184号の側に立って交差点を振り返る。
既に西日が夕方を告げている尾根の上。
一人、この極めて地味な記念地で(半ば無理矢理心を動かして)悦にひたった(ふりをした… 寂しい)。


何かを持ち込むのも大変な山上ゆえ、都道の立派な標識を立てて欲しいとまでは言わないが、せめて何か道路杭の一本でも有れば…。

…。

読者にはせめてこの感傷を理解して欲しいが…、それもちょっと無理っぽいな。
あまりにも、平凡な、山道同士の交差点である。
いまさら、都道、都道とここで騒ぎ立てるのも、見苦しいだろう…。
もう、ここまでで十分騒いだしな。



上の写真と同じ地点から、今度は反対側、東側を撮影。

そこにもまたもう一つの交差点が。

左の道が明らかに上等で、幅広の石段までこしらえられている。
もしこれが都道であれば「階段都道」などと喧伝出来るのに(きっとしないし、しても誰も見向きもしないだろう)、残念ながら都道184号は右の道をとる。

道路地図も地形図も、この交差点を三枝のように描いているが、実際にはこのように二つの追分が近接する形をとっていた。




今度の道標は文字情報が盛りだくさんだ。

この口数の多い道標が教えるとおり、左は「日の出山」山頂を経由してやはり上養沢(上養沢バス停まで4.1km)に下る「関東ふれあいの道」である。



また、右の都道184号はその近道として捉えられており(というか、その程度の役割…)、「上養沢バス停までは3.8kmと、三本のルートのなかで微妙に最短である。

都道184号の自動車交通不能区間は、この先も結構長くて、地図で数えても2.5kmほどある。これもいずれは走破したいものである(地味そうだが)。




…さてと。

  進むか。



この先は、御岳宿坊街の中程まで、都道184号と201号の重複区間となる。
『都道が二本集まってもこの程度の道なのかよ!』とか、そう言うツッコミを期待したいが、山行が読者は今さらその程度で驚いてくれ無さそうである。

くぐる鳥居には、「武蔵御嶽神社」の額が掲げられていた。
件の宿坊街を形成した関東有数の大社、御嶽神社の正式名である。

 いざ 入門! 



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 車道の復活


15:32 

稜線に沿って西へ進む道も依然として自動車は通れぬ徒歩道であるが、これまでに較べれば格段によく踏まれている。
良く締まった土の路面は勾配も緩やかだから、自転車にとって快適な道である。
また、時間が遅いためか休日の割に人気も少なく、気兼ねなく走ることが出来た。
一時は明るいうちに宿坊街まで辿り着けないのではないかと心配していたが、一気に進行のペースが速くなって一安心。





ときおり北側に眺望がひらけ、壮大だがどこか寂しげでもある眺望を得た。
青梅や奥多摩、そして後背に位置する秩父の山々が、夕焼け色に染まっていた。
現在地の標高はすでに800mにも達そうとしている。




必ずしも生活に必要ではない徒歩道がこれだけ良く踏まれているという現状は、この都道が地方の県道でありがちな、将来の道路整備を期待してとりあえず山道を指定した…、というようなものとは根本的に違うことを示している。
大勢の人たちが、おそらく憩いを求めて歩きに来ている。
もしこれが普通の車が通るような舗装路だったら、御岳山の環境はめちゃくちゃになってしまっていたかも知れない。
たとえ車は通れなくても、都民にとっての「お役立ち度」としては決して馬鹿に出来ない道なのだと思った。
二重に指定された都道も、伊達では無いのかも知れない。

(余談ながら、都道の認定基準にはそのような「憩い」は認められていないらしく、都道201号の指定理由は単に「地方開発のため特に必要な道路」とされている)



なんとこんな尾根の上に、小さな畑が現れた。
いよいよ人家が近いのか。

ここからは、霞(スモッグ?)によって視界の尽きるまで関東平野を見晴らす。




ほとんど平坦だった道が、再び登りはじめた。
これまで足元にあった尾根が道の隙を突いて一気に高くなった。
道はワンテンポ遅れて、渋々といった感じで着いていく。

そして登りの最中、右手の苔生した石段上に石祠が現れた。
この辺りの路面には、側溝の蓋やコンクリートの切れ端など、雑多なものが舗装代わりに使われていた。
ますます人家が近そうな気配だ。




 どーん!

という擬音を脳内で再生。

現れた! 折り重なるような家並み!!
しかも、見たところ普通の民家。
見上げた尾根に、空を背景に民家が!


いよいよ「雲上の宗都」(←RPGとかに出て来そう)御岳宿坊街が、その姿を現す!!





“交差点”から約700mの地点で、遂に舗装が復活。

コンクリート舗装路だ。

いまだ車が通れる路幅ではないが、とにかく舗装復活。






それからすぐに別の道に合流した。
写真は合流地点。

そして、この合流先の道というのは、車道であった。
荷車道とか自転車道も車道だが、ここでは自動車の通る道、自動車道。




15:49 【現在地

上養沢の登山道のような入口からここまで、約2.5km。
1時間30分余りを要し、海抜830m付近の車道に復帰。
都道201号の自動車の通れない区間を無事突破した。

そして、これから先がこの探索のメインディッシュ。
部外車の車は立ち入れない、限定都道が始まる。

写真は、さっそく現れた宿坊の門と、それより遙かに目立たない都道。(振り返って撮影)
ちなみに、宿坊というのは一般に僧侶のための宿のことだが、この御岳山にある宿坊はみな民宿や旅館と同じように一般の客を泊めている。
この宿坊街と呼ばれる一角には、現在26の宿坊が営業中であるという。




ガードレールも現れたし、これは車道。

しかし、狭い。

車でここまで来るのは、先ほど通り過ぎた宿坊の主くらいのものだろう。
何度も言うが、「限定都道」なのである。 もちろん、お客であっても車で来ることは許されない。





あっ!

遂に自動車を発見!!

一気に四台も。
あと、携帯電話の電波塔も発見。

ちなみに、どの車にも屋根の上に黄色ないし青色の回転灯が付いていた。
どうやらこの御嶽宿坊街では、この回転灯が「許可車」の証であるらしい。
それ以外にはべつだん変わったところのない市販車たちである。許可証のようなものを常備しているようにも見えない。

いずれも「軽」だというのは、何となく分かる気がするが…。










「分かる気がする」なんて




確かにこの時には「分かったような」気になっていたが……。






実際に、この場所へ来るために絶対通らねばならない道を




後ほど、この身で知ったとき






私はぶっ飛んだ。







さらにもう一台見えてきた。

つうか、凄いところにおさまっている予感。

しかも、これは急な登り…。
車が現れたのでもうきつい登りは無いだろうと油断していたが、

甘かった。

この坂の途中から、本格的な宿坊街へと入っていく。





狭い道路の運転には慣れている。


そんなベテランドライバーでも、


泣いて愛車に謝罪するような都道。


とうとう現れる。