2008/1/3 16:04
御岳登山鉄道(ケーブルカー)に沿った都道201号。(←)
強烈な下り坂の始まりとなる分岐地点。(→)
ケーブルカーの線路と交差しながらその起点駅である滝本を目指す都道。
現在地の標高は820m、滝本駅は400mにあるから、その差420m。
これを約2.2kmの水平距離でカバーするワケだから、その平均勾配は… 19.1%
そんな馬鹿な。平均が20%近いとは…。
お、俺のブレーキパッドは下まで保つだろうか…。
しかし、いまの計算はいきなり揺らぐことになる。
なんというか、地図が…ぜんぜん… 道の実態を追えてない!
例えば、下り初めて初っぱなの都道を上から見下ろすと、左のようなもの凄く折り畳まれた道が見える。
しかし、地形図には全くこの道路線形は描かれていない。
何もなかったかのように淡々と下っている。(確かに30mで高低差20mをカバーしているのは不自然だが)
鬱蒼とした杉林のせいで空撮による地形図が正確に描けなかったのか、あるいはこれを正確に描くことは紙幅の都合上出来なかったのか。
どちらにしてもこの都道。初っぱなから地図で測った距離が合わないのである。
それでは時間も押しているので、下りはじめよう。
おそらく一度下ったら、もう二度と登ってこようとは思わない道だ。
宿坊街よ、さらばだ。
こんなとんでもない道が始まるというのに、意外に「警告」は無い。
唯一その入口に歩行者に向けた右の看板があるだけだ。
この道は一般の車両は通らないことになっているので、これでも十分なのだろう。
幸い、自転車の進入を特に規制するような表示もなかった。
遂に始まった「一般車両通行止(限定都道)」の「もっとも厳しい区間(2.2km)」である。
路面は、丸石が少し頭を出す形で埋め込まれたコンクリート舗装。
急勾配の林道や集落道で稀に見る特殊舗装だ。
そして特筆すべきは路幅の狭さ。宿坊街の中の狭さをここでも引き継いでいる。
正確に計ったわけではないが、舗装路面の巾は2m無いと思われる。その外側に路肩と言えるかも定かではない土の地面が数十センチ。この合計で2mほどだろう。
すれ違えないどころではない。
一切はみ出せない!!
そんな道が、崖同然に急な杉林のずっとしたにまで続いている…。
もう、(自動車ならば絶対)Uターン不可能。
なぜか、自転車のグリップを握る私の掌が、早くも汗ばんでいた。
な ぜ か ?
単純に思いっきり握っていたからだった!!
力一杯握らないと、制動不足でどんどん加速していくんだもん!(涙)
やっべ! 上り坂で気づかなかったけど、結構すり減っていたんだな。
俺のブレーキパッドよ、頑張れ!
超!頑張れ!!
頼むから暴れ馬になるなよ。大人しくしていろよ。
さっそく現れた、第1のヘアピンカーブ。
普通車はどう頑張っても絶対に曲がりきれないと思われる。
道路構造令? そんな物はクソくらえだ!
こちとらこの急斜面に車道を造るだけで手一杯なんでぃ!
そんな江戸っ子?の啖呵が聞こえてきそうなどぎついカーブ。
山上で見た車は全て軽だったが、ナルホド納得。
しかも、このカーブの外側部分(ポップアップで黄色いべた塗り部分)は、平成16年頃にようやく拡幅されたらしいのだ。
ではそれ以前、どうやって車は通行していたのか?
この坂を突破するために必須であった自動車の通行方法。
それは、
自動車教習所が教えてはくれない運転術。
なんと数年前まで、
全てのドライバーはここから先、バックで下ることを余儀なくされていた!
しかも、ここにガードレールが新設されたのも、拡幅の時らしいぞ…。
運転上手な郷友ミリンダ細田氏。特にバックは驚くほど上手だが、この坂に耐えられるだろうか。
お、俺は遠慮しておきます。
実際、ここのスイッチバックでミスって谷底へ車ごと落ちる事故が何度もあって、ようやく道路が改良されたらしい。
こりゃ、落ちたら死ぬな…
チャ、チャリで良かったー…おれ。
後で調べたら、この一般車通行止めの道を通るのは宿坊街に住む人たち(主にお坊さんと宿坊を経営する御師と呼ばれる人たち、その家族)の他に、「業者」もあるらしい。
山上の商店などに品物を納入する業者と言うことらしいのだが、それでも可能な限りケーブルカーを使っているそうだ。
でも、偶には車でも上がることがあるらしい。
俺は絶対にこの辺りで配送業をしたくない!!
スイッチバックが解消されたとはいえ、絶対に無理だ俺は。
元「バック進行区間」は30mほど急な下り坂のまま続き、そして次のヘアピンカーブに達する。
後半なんかガードレールも無い。
そしてまた、スイッチバックのためにあるカーブ先端の“尾っぽ”の部分に、バックのまま車を収めるのも容易では無さそうだ。
ともかくこれを成し遂げればスイッチバックは終わり、前を見て走れるようになる。
ほんの数年前までの話である。
スイッチバックから解放されても、気を抜く隙は与えられない。
道はさらに先鋭化していくきらいさえ見せている。
この道を容易に拡幅させないのは斜面の急さもさることながら、路傍に無数と言うほど植え付けられ、そして天を突く勢いで育つ杉並木。
その多くは江戸時代に参道の杉並木として植樹されたもので、市の天然記念物に指定されている。
全山は重ねて「秩父多摩甲斐国立公園」にも指定されており、容易に伐採は許可されない。
そんなわけでこの都道。
車など無かった江戸時代の参道とたいして変わらぬ路幅と勾配、線形のままに車道化されたという、たいへん希有な例なのである。
街灯の気休めのような薄明かりが、坂の方々で点灯しはじめた。
だが、このまま行けばそう遠くなく撮影続行不可能な暗さになる。
この特殊な立地にある道路をもっと細やかに観察していきたかったが、少し妥協せざるを得なくなった。
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16:10
この道に自動車がどのくらいの頻度で通行するのか分からないが、特に無線などで「閉塞」を行っていないようであるから、対面する自動車同士で行き違う事もあるはずだ。
確かに所々、こんな待避所が存在するが、この幅になってようやく普通の林道と同程度。
どこにも明示されてはいないが、これはもう「軽自動車専用道路」なのだろう。
また、待避所以外で対向車に遭遇したら、どちらかがバックする羽目になるわけで、かなり車体感覚を掴んだベテランでも、この幅でバックすることは至難と思われる。
杉並木によって、タダでさえ狭い道が余計に狭められ、また屈曲を余儀なくされている。
この参道において杉の並木は、通行人の目を楽しませ涼を与える「副」ではなく、参道自体をひどく圧迫する「主」になっている。
特に辺り一面が杉の林ではあるが、道路端にだけ巨杉は存在し、まるで寄って集って道路をいじめているようである。
「木隧道」とでも言うべき遮蔽感、圧迫感に支配されている。
もちろん、この時間にあって徒に通行人の不安を倍増させるこの薄暗さ。これも夕暮れのせいばかりではない。
凄すぎる。
都道201号凄すぎる!
自分がハンドルを握っていてもしあの辺りで対向車と遭遇したら…。
いや、相手が歩行者だったとしても嫌すぎる。
この道の一般車規制がいつから敷かれているのか分からないが、このカーナビ時代に規制がなかったら、毎年100人は転落死しそうだ。
この道を四輪以上の車で通行した経験があるという方、ご一報下さい。この道の感想を是非お聞きしたいです。
あんまがえし
この辺りは、少しだけ下り坂になっています。(気がつきましたか?)
かつて盲目のあんま師が、”ここが頂上だ”と勘違いをして引き返してしまった。”という言い伝えがあり、”あんま返し” と呼ばれるようになりました。
(みなさんは、引き返さないでくださいね)
↑↑↑↑↑
絶対に引き返しませんから。
歩行者がみんな巨人に見えるが、大きいのは杉の木だけである。
ちなみに、激しい屈曲があったのは最初だけで、以後は小刻みなグネグネはあるが、ターンするようなカーブは無い。
勾配についても計算上は常時20%くらい無ければならないはずが、15%くらいしか無い。
このしわ寄せが、後で来るんだろうな…。
いずれにしても、下り始めて以来“あんま返し”のささやかな上り返しを含めて、ただの一度もプレーキレバーから手が離せない。
指先が「ガオー」(獣の真似ね)になったまま固定されつつある。
16:14 だいこくのお 【地図】
このかわった名前は「大黒の尾根」という呼び名が変化したと説明版にある。
確かにここは急峻な尾根筋を回り込むカーブになっている。
地図を見ると現在地の標高は760mで、入口から高低差60mほどしか処理できていない。
これに要した道の長さはおおよそ500mであるから、残り1.7km(水平距離)の道をもって高低差360mを処理する必要があるわけだ。
この場合の計算上の勾配は… 21.2%
終わってる(笑)。
カーブの先が…
道 見えないよ。
見えないよー。
20%をゆうに越える急勾配は、暗い叢林の底へ落ち込んでいた。
ゾクッ!
狐狸の類が跋扈し、人知の及ばぬ何かが潜んでいそうな暗い森。
その中に、昼なお暗い細路が、ただ山上を目指し黙々と続いている。
こんな道を辿らねば決して着けぬ山上に、信仰の名のもとで、何百年も人が住んできた事実。
人は信仰の元で、どれほどの孤独に耐えられるのか。
私は、底知れぬ信仰のパワーに畏怖した。
道半ばにして、足元さえはっきりしないほどに暗さに支配された。
ポシェットからライトを取り出そうと自転車を停めると、背後から小さなエンジン音が聞こえてきた。
間もなくオレンジ色の光点が、右の木立に一文字の走り書きをした。
来た!
車が来たぞ!
あわわわわ。 ど、動画!
動画準備ッ!!
<ベテランどころじゃない、プロも驚愕?! の操縦技術>
<とくと見よ! これが、御岳山の軽ドライバーだ!>
※なお、走行中はドライバーに不要なプレッシャーを与えないように、意図的にある程度距離を置いて自転車を追走させましたが、それでも徐々に車が速くなってきて「私が身の危険を感じ」追跡を断念する場面までを収録しました。この後、この車とは二度と出会いませんでした。
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