隧道レポート 国道474号 草木トンネル (旧三遠南信自動車道) 第2回

所在地 静岡県浜松市天竜区
探索日 2011.3. 3
公開日 2011.9.19


水窪北IC〜草木トンネル西口



2011/3/3 6:26 《現在地》 

長い長い(少なくとも自転車にとっては)ランプウェイを上り詰めると、海抜680mに存在する“本線”に辿り着く。
出発地である池島集落(標高600m)からは、すでに80mも登っている計算になる。
ランプウェイと言いながら、ちょっとした峠並の上りであった。

そして、入口から数えて800m地点のここからが本線。
そこにあったのは、やはり一般道路化されているとは言っても、そこら辺の山中にありそうなバイパスとは、一線を画する道だった!

約300m先にある草木トンネルの坑口が、ほぼ真っ正面に見えていた。
その黒い少し大きめの“点”に向けて、今は6車線分もあろうかという幅員が、2車線まで狭まっていく。




が、そちらへ行く前に、

どうしても気になる場所があるじゃないか?





↓ここだよ!↓

ランプウェイが両側に分合流する、その中心にある本線。

本線終端部!

自専道だった時代には、自転車でここまで来ることはもちろん無理で、
車で来たとしても、このエリアに立ち入る事は不可能だった。

一般道になったから、ここを味わう事が出来たのだ。

このなんとも味わい深い、未来への架け橋を。



↓ ↓さらに前へ!↓ ↓




スビャ――ン!! 【←カーソル!】

足元の橋台より先には、ランプウェイと同時施工されたと思しき本線準備用の橋脚4本、および僅かな土工が存在するのみ。

しかも、この施設が将来有効に活用されるかどうかは、まだ未決定である。
一応、最新の計画通りに進展すれば、辛うじてこの橋脚までは活用される可能性が高い。
(既設区間のうち0.9kmは活用される予定であり、ここは起点から0.8km地点である)

なお、草木トンネルは、「暫定2車線の4車線道路」として整備された。
対して、現在計画されている青崩峠道路は、完成2車線道路である。

この巨大な橋桁は、4車線ある本線を乗せるために建設されているはずだが…。




この橋脚が、将来運良く“活躍”出来るとしても、

そこに乗せられるのは、たった2車線分の桁になるかもしれない…。




←空中写真を見ると、道幅と車線の関係がよく分かる。

現在地は青線のところだが、この場所の道幅は、空中写真上の測量で約14mであった。

また現在地から草木トンネルの方向へ進み、道幅が一定になった部分(赤線)の幅員は、約16mあった。

草木トンネル建設当時の設計では、暫定2車線完成4車線で、1車線あたりの幅員を3.5mと規定していた。
だから、4車線ならば14m以上が必要である。(ICの高架部のみ路肩を切り詰めているようだ)

対して、これから建設される青崩峠道路は、前述の通り規格が落ちており、設計速度が80km/h→60km/hに、車線幅が3.5m→3.25mに、全体幅員も14m以上→8.0m以上にと、それぞれ縮小されることが決まっている。

リアルだなぁ…。

寂しいなぁ…。





スッゲー広い!! まさに、“夢の道”!


ここからは「池島第二橋」という橋になるが、中央の4車線分の本線に、両側の入出路が摺り合されているところであり、

道路としての全幅は最大6車線分にもなっている!





52kmポスト地点。

入ってすぐのところに52.8kmポストがあった。
この数字の変化からも、やはり起点の飯田山本ICからの距離だろうと分かる。

両側入出路の摺り合せはここで完了し、完全に4車線分の道路幅となる。

だぶついた道幅の中、白線によってのみ明示された1車線ずつの上下線は、
間もなくはじまる対面通行へと、さらに収斂していく。




はい! 2車線化〜〜!(←昔の猫型の声で)


2車線化してみても、有り余っとる、右側に贅肉余地が。

対して、左側には余地はなく、代わりに歩道がある。
頑丈な縁石により画されたこの歩道は、当然、一般道化工事の際に追加されたものである。
さらに、向こうに見える制限速度50の標識や道路標示も、同様に一般道化に伴って登場した。

自専道時代、この道の制限速度は、法定速度である60km/hだったのだ。
また、追い越しは禁止で、センターライン上にポールが存在していた。
さすがにインター標識(こういうの) はなかったが、同じようなフォーマットで、
「天竜」という行き先が書かれた、緑色の出口案内標識も存在した。
また、トンネルに向かっては、電光式の道路情報板もあったが、

これらはいずれも何処かへと消えた。





草木トンネル西口



6:31 《現在地》 

本線合流から300m、入口だとちょうど1km地点。

池島第一橋」の向こうに草木トンネルが迫った。

この直前で道幅がさらに絞られ、最初は高速道路として作られたことが信じられないような、普通の2車線道路に変わってしまった。

“夢の道”は、ほんと一瞬だった。


なお、0.9km地点も過ぎたわけだが、ここで非常に気になる謎がある。
それは、現在の計画通り、青崩峠道路が0.9kmの既設部を活用するとしたら、その分岐の処理をどうするのかということだ。



0.9kmの既設部を活用するならば、おそらく青崩峠道路は、ライム色で示したようなルートになるのだろう。
まだ図面が公示されていないので、正確なところは分からぬが、大きく外れてはいないと思われる。

謎は、青い矢印で示した分岐地点がどうなるかである。

…夢のない話しになるが、コスト的に考えても、新たに立体交差が建造されることはないだろうと思う。
制限速度が60km/hであるならば、平面交差&信号機でも、実用上大きな問題がないだろう。
都市高速以外の自専道の本線信号機というのは、前代未聞になりそうだが…。

草木トンネル側からは右折禁止として、水窪側にしか行けないようにすれば、信号もいらなくなりそうだが、それでも本線側から草木トンネルへ入る方法をどうするかで悩む。また、隣接する国道152号と草木トンネルを直接させることも考え得る。
いずれ、平面交差を作ってしまうと、青崩峠道路が無料であるうちはまだいいが、有料になるとややこしくなりそうだ。
歩行者の扱いをどうするのかも、また悩ましい。





そもそも…


本当に既設部が活用されるかも、まだ怪しかったりする。
↓↓↓

上の図は、平成21年11月に飯田建設事務所が公表した、第3回中部地方事業評価監視委員会用の資料の一部で、「三遠南信自動車道青崩峠道路説明資料」(pdf)に含まれるものであるが、この図に赤色の破線で描かれている予定ルートは、全く既設部を活用していない。

なお、「既設部0.9km活用」の情報源はwikipedia(青崩峠道路の項目を参照)であり、ソースは不明である。


「既設部0.9km活用」という情報のソース(おそらくwikiの記述の元となった)の一端と思われるものが、その後の調査で判明した。

それは平成17年に飯田建設事務所が公表した、第2回事業評価用資料の一部「青崩峠道路事業説明」(pdf)である。


『一般国道474号三遠南信自動車道青崩峠道路説明資料
(平成17年11月25日・飯田建設事務所)』より転載。

この資料の中で「今回整備区間」として示されているルートを見て欲しい。
赤い破線で示されているのが、全線4995mの「県境トンネル」である。そして、その浜松側の現道分岐地点は、ちょうど草木トンネル直前のカーブである。

0.9kmという具体的数字まではこの資料に出ていないが、これも計算すれば、近い数字が導かれる。
つまり、今回整備区間の全長が6kmで(上の方に書いてある)、このうち新規に整備する県境トンネルが4995m(5km)であるから、残りは6−5=1kmとなるのである。

重要なことは、これが先ほど転載した「予定ルートが全く既設部を活用していない」ものよりも、4年も古い資料(しかも資料の目的は同じ「事業評価用」)だということである。
わざわざ新しい資料では、この部分のルートを書き換えている。
これは意味深だと言わざるを得ない。

どちらの資料も正式なルートを示したものでないが、4年の間でさらなる調査が進められ、現道の活用を行わない方針へとチェンジされた可能性が高いように思われるのだ。

そして、もしそうなれば、これまで見てきた部分は全て三遠南信道とは無関係の存在となり、特に“主なき橋脚群”などは、完全に“未成道化”することになる…。



2011/9/19 自主追記



本編に戻ろう。

池島第一橋は、ご覧のように翁川と一緒に国道152号も渡っている。
国道152号はついさっきまであんな下にあったのに、心臓破りの異常な急坂で上り詰めてきたのである。

なお、草木トンネルは暫定2車線開通であり2車線分1本しかないが、将来もう1本掘って複線化する用地は、この写真中央の余地であったと思う。
これから向かうが、そこには意味深な広場が存在する。

また、国道152号脇にある小さな建物は、草木トンネルの電気室である。






普通だー!

って、叫ぶような内容でもないな。

まあ、残念ながらこれは普通である。
特に外見的な特徴も見あたらないし、右の田楽のレリーフも嫌に目立っていない。

やはり、一般道化されたのが、効いている。
以前は歩道が無かった分だけ車線幅が広かったし、左にあるトンネル名の標識も、
それはそれは濃いぃ緑だった。



草木トンネル。

工事銘板によると、竣工は開通の2年前の1992(平成4)年。
全長は1311m、幅9.5m、高さ4.7mとあって、
幅員は平均的な一般道のトンネルより余裕がある。




今ひとつトンネルの入口が“来なかった”ので、イタズラ求めて寄り道をする。

坑口の左に車1台分の脇道があり、その先はご覧の広場になっている。
一般道化したせいか、ここも特に封鎖されてはいない。
そして広場を介して、その奥は国道152号に道が繋がっている。

この広場の幅は目測10mくらいあり、複線化時には、右の壁にトンネルが掘られる手筈だったと考えられる。




国道152号と広場(国道474号)を結ぶ狭いスロープまで来ると

トンネル!

を発見した!

な、な、な、な… なるほど。

高速道路の長大トンネル(1311m)ならば、こういうものがあっても不思議ではないわけだ…。

うふふふふふ。

うっふっふ。




避難坑ゲェ―ット!




初体験!来たか?!